〜第三幕〜








 天竺高校、3年A組の新学期第1時間目の授業は朝から体育だった。

 運動場に桜吹雪。

 それはそれは美しい光景だった・・・・・・・・・・・・・・・・が。

 何が悲しくて朝から肉体労働をしなくてはならない?
 それが三蔵の隠さざる本音だった。
 それでもこうして授業に顔を出しているのは・・・・・・・担当の教師ゆえ。

「今年も1年よろしくなーっ!!」
 整列した生徒たちに悟空が元気よく挨拶している。
 それにつられるように生徒たちも”はーいっ!”なんて返事をかえしている・・・・・
 高校生にもなった男どもにそれをされるとかなりさむいものがあったが。
「それじゃあ準備体操からなっ!二人一組で・・・て三蔵は余るからオレとな♪」
 てめーとじゃぁ身長があわないだろうがっ!と思ったがだったら・・・と別の人間と
 悟空が一緒にやるのもまた業腹なので黙って三蔵は悟空の手をとった。
 
 悟空の号令のもと、各々動きはじめる。

「・・・・・どう考えてもてめーは俺にぶらさがってるだけだろうが」
 三蔵と悟空では20センチ近い身長差があるのだ。
「えーっ、そっかぁ?んじゃ今度はオレが三蔵の背中押してやるよ♪」
 そして悟空は思いっきり、容赦なく三蔵の背中を押した。


 べきっぼぎっぃぃっっ!!


「「「・・・・・・・・」」」
 あたりに響きわたった凄まじい音に生徒たちは発信源に顔を向け、凍りついた。

「ぁ・・・・さ、三蔵・・・?」
 悟空の額からたら〜んと汗が流れ落ちる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・悟空」
 三蔵の地を這うような低い声。

「・・・・・・・・コロス」









「・・・・っ痛〜っ!!もうっ、三蔵ひでーよっ!!ちょっとオレが力入れすぎただけで
ぼこぼこにすることねーじゃんっ!!」
「・・・・ちょっと?」
 ふざけたことぬかしてんじゃねーぞ、と三蔵は悟空を睨みつけた。
「う゛・・・・い・・・・・え〜と・・・・・」
「まぁまぁ、そこまでにしておいたらどうです、三蔵くん」
 保健医のニィが手当てをしながら険悪になってきた二人に口をはさんだ。
「ちっ」
「〜〜〜〜っっしみるぅぅっっ!!」
 頬に消毒液をあたられて悟空が悲鳴をあげる。
「我慢ですよ。我慢。これでも1番しみないやつを選んでいるんですからね」
 まるで子供に解説するかのようなニィ先生。
 このままいくと飴玉でもやりそうな・・・・・・
「はい、我慢できたご褒美です」
 ・・・・・・やってるし・・・・・・・・。
「わーいっ!!」
 素直に喜ぶ悟空。
 本当にこいつは教師なのか・・・・・三蔵の頭に再び疑問が浮かんだ。

 絶対に違う。

「それじゃあ俺たちは次の授業があるから行きます」
 不機嫌そうに悟空とニィのやりとりを見ていた三蔵が悟空の手をひくと荒々しく
保健室を出て行った。
「またおいでね〜〜」
 そんな二人をうさぎのぬいぐるみ片手に手を振って見送るニィだった。







 キーンコーンカーンコーン・・・ッ!!

 午前授業終了の鐘の音が天竺高校に鳴り響いた。

「やったーっ!!昼メシ♪昼メシ♪」
 それを誰よりも喜んでいるのはやはり悟空だった。
 そんな悟空のもとに光速の速さで集結する一同。
「悟空、忘れずに弁当もってきたか?」
 と金蝉。
「あ、それならここに一緒に持ってきてます」
 横から天蓬が特大重箱を指し示す。
「わーいっ♪天ちゃん大好きーっvv」
 どこまでも本能に忠実な悟空である。
 そこへ割り込む黒い影。
「悟空先生、お約束のケーキをお持ちしました」
 普通にしているのに何故か怪しさ漂う清一色君。
 やはり顔色が悪いせいだろうか・・・・。
「ケーキっ!!」
 だが悟空にとって清一色の顔色などどうでもいいらしい。
 差し出された箱にとびつく。
 が・・・その前に形のいい手が伸びてきた。
「清一色くん、悟空先生にそんなあやしげなものを食べさせないでくれませんか?」
 八戒だった。
「あやしげとは失敬な」
「どうせ生物室の冷蔵庫においてあったものでしょう?中に何も入ってないのに
ぐちゅぐちゅと不気味な音が響くような冷蔵庫に入れられたものを悟空先生の口に
入れるわけにはいきません」
「ふっ、根も葉もない噂を鵜呑みにするとは八戒君も暇人ですねぇ」
「僕は園芸部と家庭科部の部長をかけもちでやっていますからあなたほど暇人では
ありませんけどね」
「どうせ、部員はあなた一人じゃありませんか」
「とんでもない。悟浄がいますよ」
 どんな手段で入部させたのやら。
「あなたのほうこそ、部員は自分ひとりどころか顧問さえ居ないじゃないですか。
そんなことで部として存続できるとでも思っているんですか?」
「顧問の席は悟空先生のためにわざわざあけているんですよ。ねぇ悟空・・・・・」
 先生、と振り向けばすでにそこには悟空一行の姿は無かった。



「やっぱり春は桜の下で食べないとなっ!」
 金蝉と天蓬、捲簾に囲まれた悟空は重箱の中身を次々に腹におさめていく。
「・・・・ていうかお前本当に花見てんのか?」
 花どころではない悟空の食いっぷりに捲簾のつっこみが入る。
「みひひるほんっ!!(見てるもんっ!!)」
 口いっぱいに頬張りながら捲簾に言い返す。
 そんな悟空を天蓬は微笑ましく見ている。
「おい、ぼろぼろこぼすんじゃない!!」
「んぁ?」
 めっきり保護者役が板についてしまっている金蝉である。
 
 そんな和やか〜に過ごす一同のもとに黒塗りのロールスロイスが突っ込んできた。

「何だぁ?」
 捲簾が目を丸くする。

 一同が見つめる中、扉が開き出てきたのは・・・・・・・・・・・・・・・・・焔。

「あれ〜焔?」
「・・・・ここは校内だぞ・・・・」
「ちょっと危ないですね〜」
 ちょっとどころではない。

 車から降りた焔は金蝉と天蓬の言葉など意にかいさず悟空に近づいてくる。
「悟空、お昼を差し入れに来た」
「本当っ!!」
 悟空は焔の言葉に狂喜乱舞する。
「・・・・・・・まだ食うつもりか・・・・・・」
 呆れる面々をしりめに焔は使用人にテーブルをセッティングさせる。
 校舎からは何事か?と生徒たちが窓からのぞいていた。

「さぁ、食べてくれ。悟空」
 わずか5分でセッティング完了し、悟空を椅子へと座らせる。
「うんっ!!いっただきま〜・・・・」


 キーンコーンカーンコーン・・・ッ


「おやおや、お昼が終わりましたねぇ〜」
「そうだな、授業に行かないといけないな」
「仕方ねーな、お仕事だからな〜」
 3人は立ち上がると椅子に座ってフォークとナイフを構えている悟空に近寄り、
がしっと腕を掴んだ。

「行くぞ」
「行きますよ」
「行こうな〜」

 そして引きずられる悟空の体。


「えぇ〜っ!!オレの昼めし〜〜っっ!!!!!」
 悟空は必死に手をのばすが、さすがの怪力も3人がかりにはかなわなかった。


「昼めし〜〜〜〜〜っっ!!!!!!!!」
 えぐっえぐっと滂沱の涙を流す悟空。
 かわいそうだがここは諦めてもらうしかなかった。








「くっくっくっ・・・・!!」
 そんな様子を少しはなれた場所で観賞する人影。
「・・・・・理事長」
 笑い転げる上司に部下の二郎神は苦い顔だ。
「最高だっ!!やっぱり悟空を先生にして正解だったなっ!!」
「・・・・・・・・」
「退屈しないな・・・当分楽しめそうだ」
 理事長、観世音菩薩は笑いすぎてにじんだ涙をぬぐいながらそう呟いた。









●あとがき●
無事に予定通り火曜日に第三幕UPです(^^ゞ
投票して下さった皆様ありがとうございました=っ!!
トップは三蔵と焔のデッドヒートですね!!
一応御華門が見たときは三蔵が僅差でトップだったので今回は最初に
でばってます♪そして意外な対抗馬な清一色くん。
何故か5位!!!!(笑)
どうした悟浄!!天蓬!!清一色なんかに負けていいのか!?(笑)
しかし・・・悟浄、葉にも抜かされそうな勢い(笑)
いい奴なのになぁ〜・・・・あ、そうか「いい人」で終るタイプ
なんですね悟浄は(笑)不幸な・・・・(爆笑)


それでは、第四幕でお会いしましょう(^^)/~~~

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