-第十一幕-
【その3】









「鏡よ、鏡。この世で一番美しいのは誰だ?」
『お后さま、確かにあなたは美しい。しかし森で小人たちと暮らす白雪姫はもっと
 美しい』
 がしゃんっ!!ばきっ!!
 鏡の精その2は短い命を終えた。

「木こりめ、俺の命令に違反しやがったなっ!!こうなったら俺さま自ら白雪姫を
殺してくれるっ!!」
 お后は手にあてて高笑いをするとフードを着て、その身を物売りの婆やに変えた
のだった。




「らん♪らん♪ら〜ん♪」
 そんなことが起こっていることなど知らない白雪姫はいつものように上機嫌で
お掃除をしていました。
 がしゃんっ!!
「あ、金蝉のお気に入りの花瓶割っちゃった!!どうしよ〜・・・・そうだっ!!!
隠しちゃえばわかんないよなっ!!」
 ・・・・・相変わらずでした。

 トントン。
 
「あっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ許して、金蝉っ!!!」
 ノックの音に小人たちが帰ってきたと勘違いした白雪姫は一生懸命に頭を
さげます。
「・・・・・何をやっている?」
「・・・あれ?」
 聞きなれない言葉に顔をあげると、そこには小人たちではなく物売りのお婆さんが
立っていました。
「良かった〜〜・・・金蝉たちかと思った」
 その白雪姫の言葉にお婆さんの目がきらん☆と光りました。
「お嬢さん、今お一人かい?」
「うんっ!!皆、仕事に行ってる」
「そうかい、そうかい。わたしはりんご売りなんだがお一ついかがかね?」
 お婆さんは赤く艶々したりんごを白雪姫に差し出しました。
「りんごっ!!」
「美味しいよ」
「ほんと、美味そうっ!!」
 白雪姫はよだれを垂らさんばかりにそれを見つめました。
「うー、でもオレ・・・金持ってないし・・・・」
「味見だからタダだよ」
「ホント!?・・・・あ、でも金蝉とかから知らない人には物貰ったらいけないて言わ
れてるしな・・・・」
「あいつらめ・・・・・・・つべこべ言わずにお食べっ!!」
 業を煮やしたお婆さんは白雪姫の口にりんごを無理やりつっこみました。
「んぐっ・・$○×☆!!!」
 白雪姫は突然の出来事に目を白黒させ・・・・・・・・きゅ〜バタンッ!とその場に
倒れてしまいました。

「・・・ふ、ふふふふっ!!!これで私が世界一美しいっ!!!」
 老婆はお后の姿に戻ると高らかと宣言したのでした。






 驚いたのは小人たち。
 いつもならば笑顔で迎えてくれる白雪姫が蒼白な顔で倒れているのです。
「「「「「白雪姫っ!!!」」」」」
 皆で呼びかけても白雪姫の固く閉じられた瞳はぴくりともしません。
 小人(天蓬)が白雪姫で腕をとり脈をしらべます。
「・・・・・・・・・どうなんだ?」
 小人(金蝉)の問いに天蓬は首をふります。

 そう、すでに白雪姫の鼓動は止まっていたのでした。






 その日、森は静かでした。
 全ての生物、動物が白雪姫の死を悼み、悲しみに沈んでいました。

 小人たちは悲しみに暮れながら、美しい白雪姫をそのまま土にかえすのは忍び
なく、皆でガラス製の棺を作ってその中に花をつめて白雪姫をおさめました。
 ちょっと見た目には、今にでも生き返りそうに美しい白雪姫。

「このまま飾っておきましょうか?」
 小人(天蓬)が笑いながらそういいました。
 しかし目がマジです。
「いいかもね〜♪」
 それに賛同する小人(捲簾)。
 良い遊び相手がいなくなり、寂しさは隠し切れません。
「・・・・そういうわけにもいかんだろうが」
 素っ気無い態度ながらも、白雪姫のことを自分のことより大切に思っていた
小人(金蝉)は白雪姫の棺を見ました。
「静かに眠らせてやれ」
「・・・・そうですね」
「寂しくはないよな、俺たちはずっと傍に居るんだし」
「ああ」
 小人たちはもう一度白雪姫をみつめると、用意していた穴におさめはじめした。


 
「・・・何をしている?」
 そこへ、馬に乗った王子が通りかかりました。


「げ。悪趣味な服」
「三蔵だったらぜってー着なかったな」
「さすが焔ですね」
「俺たちの大将だな」


「・・・うるさい」
 焔王子は口々に勝手なことを言い始めた小人たちの口を封じると先を促した。

「僕たちの愛する白雪姫が死んだんです・・・・そのお葬式をしてました」
「白雪姫?」
 王子は小人たちに囲まれた棺に近寄り、その中にいた白雪姫をのぞきました。

「・・・可愛らしいな」
「・・・お前が言うと妙に卑猥だ」
「・・・嫉妬か、金蝉?」
「・・・・(怒)」


「まるで生きているようだな・・・・・残念だ、生きていればぜひとも我が后に迎えた
というのに」
 王子は棺の蓋をあけると、白雪姫の頬にふれました。
「白雪姫か・・・・いい名だ」
 その時、棺ががくんっと揺れました。

「・・・・・んっ・・・」


「「「「「「白雪姫っ!!??」」」」」
 白雪姫の口から漏れた声に小人たちが色めきます。

「白雪姫?」
「・・・ん・・・ん・・・?」
 王子の呼びかけに固く閉じられていた白雪姫の瞼がゆっくりとあがっていきます。
 そして現れたのは太陽の光のように美しい金色の瞳。


「・・・・・ふぁ〜〜よく寝た・・・・・て焔?」
 どうやら白雪姫は気持ちよく熟睡していたようです。
「悟空、今は劇の最中だ」
「・・え?・・・・あ、そっか・・・・忘れてた」
 忘れるなっ!!一同は叫びたいのを必死に耐えた。


「白雪姫、生き返ったんですね!」
「・・・・オレ、死んでたのか?」
「ああ、ばっちり心臓止まってたぜ」
「・・・・さすが猿は生命力が強い」
「またまた、一番悲しんでたくせして」
「・・・・うるさい」

「白雪姫」
 まだ棺に伏せたままだった白雪姫を王子が抱き起こしました。
「あ、サンキュ」
 あとは自分でできるから・・・と離れようとした白雪姫を王子は抱きしめました。
「・・・っ!?」
「白雪姫、お前が生きていて良かった」
「王子、さま・・・・・」
 自分と同じ色の瞳に見つめられて、白雪姫はぽっと頬を染めました。
 

「・・・・貴様」
 後ろから穴掘り用のスコップで攻撃しようとした金蝉を慌てて天蓬がおさえる。
「金蝉、ここは我慢です!」
「そうそう、しょせんは劇なんだからさ〜」
「・・・・でもむかつきますけどね」
「いやいや、焔幸せそうですね」
「だな」
「・・・・ふん」



「美しい白雪姫、どうか私の妻になって下さい」
 焔は自分の真実の気持ちもこめて悟空(白雪姫)に訴えた。
 その瞳は真剣そのもので、悟空は逸らしたくなるのは必死で耐えていた。

「・・・・・・・・・・・・はい」
 Yes、の返事に王子はますます強く白雪姫を抱きしめました。
 そして、馬上へと横抱きにて抱えあげると手をとり、口づけます。
「愛している・・・白雪姫」
「オレ、も・・・・王子様」
 見つめあう二人。
 まるで一幅の絵画のようだ。


 再び客席がざわめく。
 クライマックスのラブシーンである。

 本来、台本では”マネ”だけと指示されていた箇所。


 焔は悟空の顎をとらえる・・・・・・・・・・


「悟空・・・」
「・・・え・・・」
 


 ピンク色のルージュのひかれた唇に焔のものが重なった。
 悟空の目が驚きに真ん丸になる。


「「「「「「「「っっっっ!!!????」」」」」」」


「・・・・許さんっ!!」
「・・・・卑怯ですね」
「飛び入り参加のくせして」
「・・・・悟空先生っ!!」
 小人たちは一斉に穴掘りスコップを抱えると、王子へと容赦なく投げた。


 カキンっコキンッ!!☆☆
 
 しかし敵もさるもの。
 腰の剣でそれらをいとも容易く打ち落とすと、ますます口づけを深くした。


「ん・・・・っ・・・・ん〜〜っ・・・っっ!!!」
 悟空は苦しくて、はなしてくれるように焔の背をたたいていたが、やがて酸欠で
ぐったりと焔の腕の中に身を横たえた。


「そのあたりでやめておいてくださいね。いくら悟空先生の従兄であろうと容赦しま
せんよ」
 いつの間にか傍に居た八戒が極太針を焔に向けていた。
 にこにこ顔なままなのが恐ろしい。
 焔はしぶしぶ悟空からはなれると、そのまま舞台から立ち去った。


 舞台は暗転。
 ナレーションが入る。



――――そして、王子に迎え入れられた白雪姫は城へ小人たちも呼び、末永く
幸せに暮しました―――――












 ウワァァァァァァッッッッ!!!!!!


 一瞬シーンとした体育館に拍手の嵐が起こった。


「色々アクシデントもありましたが劇は成功したようですね」
 監督兼衣装担当の八戒は今年もトップはいただきだ、と確信した。
「焔、マジにキスするんだもん!すっげーびっくりした!!」
「悪かったな、ああしたほうが劇がしまると思ったんだ」
 嘘をつけ嘘を。
「ま、いっか。焔とキスするのはじめてじゃないし」

「「「っっ!!?」」」
 とんでもない悟空の爆弾発言に一同は固まった。

「そうだな、悟空が小さいころにはよくしてやった」
「うん!」
「・・・・この犯罪者が・・・っ!」
「金蝉、お前に言われる筋合いはないな」
「・・・・ロリコンだったんですね〜」
「どっちもな」
「・・・・まぁ、小さいころの悟空はヤバイくらい可愛かったけどな♪」
「そうなんですか?ぜひ今度写真を持ってきてください」
「あ、俺も見た〜い」
 悟空の幼少時代を知らない八戒と悟浄が捲簾に頼む。
「いいぜ。確か・・・・天蓬のやつが何やかやとたくさん撮ってたからな」
 そんなにたくさんあるなら・・と八戒は何やら捲簾と1枚500円で・・・とか何とか
やりはじめた。

「あ〜もう腹減ったっ!!劇の間何も食えなかったもんなっ!!」
「それじゃあ、皆で何か美味しいものでも食べに行きましょうか?」

「「「「「「「「賛成っ!!!!」」」」」」」











 結局。
 今年の文化祭、売上トップは八戒属する園芸部が獲得したのだった。
 その額は前年度の売上記録を更新し、不動の記録として後世まで残る。
 ちなみに悟空のクラスは1年というハンデも何のその、しっかりと10位以内に
入っていた。
 しかし、その稼ぎはクラスの打ち上げ会の時にほとんど悟空の胃袋におさまって
しまったという。









† あとがき †

はぁ・・・長かった。
すべてご拝読くださいました皆様、ありがとうございましたm(__)m
予想以上に長くなり・・・御華門もどうしようかと思いながら
何とか終りました。
やはり今回一番得したのは出番少なかったわりに
最後で美味しいとこ持っていった焔様でしょう(笑)

さて、投票。
トップは三蔵さまっ!!何と焔に100票差以上をつけて
突っ走っていらっしゃいますっ!!
亭主(笑)の意地をみせるかっ!?
焔さま頑張るんだっ!!アニメではいよいよ
天界での出会い編が描かれるんだしっ!!ここで脱落しては
おもしろくないぞっ!!(そういう問題じゃない)
そして3,4,5位はもう金蝉、八戒、天蓬とがっちり
固めている感じですっ!!
というかトップ争いが熾烈すぎて割り込めないか!?
これから後半の追い込みっ!!
頑張れ白竜!(・・・?)
頑張れ独角児!!(・・・笑)





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