−赦免−
人間、暇すぎると駄目になる。 神とてそれは同じ。 あまりに暇すぎるとろくなことを思いつかない。 ・・・というわけで。(どういうわけだ) 悟空を含めた、焔一行はなつかしの里帰り(天界へ)を果たしていた。 まぁ、なつかしいはなつかしいが、互いにいい思い出のある場所ではない。 悟空に至っては記憶すらない。 そして地上に飛び出す前にしでかしたことを鑑みれば歓迎されるべくもない。 それでも帰って来た理由は至って簡単だ。 焔、曰く。 『地上に居てもすることが無い』 ・・・ということだ。 今や地上に降りた理由の99パーセントを占めるであろう、望みのもの=悟空を ゲットした焔にとって地上に居る意味は皆無といっていい。 逆に天界に居る必要も無いのだが、天界ならば焔には闘神としての仕事がある。 本来なら反逆者の烙印を押された焔が今更闘神など名乗れるわけも無いのだが、 観世音菩薩のとりなしと、甚だ悲しく情けないことながら他に適任が居なかった。 焔は晴れて闘神に返り咲いたのだ。 「愛している」 「・・・・・・」 「誰よりも何よりもお前が一番大切だ」 「・・・・・・・・・・。・・・・・・・」 「お前が望むならば何でも叶えてみせよう」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・焔」 次々と繰り出される焔の言葉に悟空は顔を真っ赤にして・・・・・は、いなかった。 「あのな、焔・・・・・そんな毎日言ってて飽きない?」 そう、焔は暇さえあれば、こうして悟空を捕まえて愛の言葉をささやいている。 最初の頃こそ恥ずかしさに頬を真っ赤に染めていた悟空もいい加減に慣れてくる。 だいたい、そういうセリフはたまに言うから効き目があるのであって、しょっちゅう 言っていては意味がない・・・・と悟空は思う・・・・・。 だが、そんな悟空の思いも焔には通用しないらしい。 「飽きない」 あっさりと否定された。 「・・・・・・・・・。」 「飽きるわけが無いだろう。初めて出会ってから五百年。積もり積もった想いは毎日、 いや、毎分毎秒囁いたとて満たされるものではない。それとも悟空は俺にそんな風 に言われるのは嫌なのか?」 「う・・・・」 嫌だったらこうしてわざわざ焔につかまるわけが無い。 「嫌、じゃないけど・・・・でも」 「でも?」 「・・・・・もっと他のことも話したい」 悟空はまだまだ焔について知らないことがたくさんある。 「他のことを?・・・では例えばどんなことがある?」 「え・・と・・・」 何から聞いたらいいだろうか。 「えーと、オレは肉まんが大好きだけど焔は何が好き?」 「もちろん、悟空だ」 「・・・・・・・。えーと・・・・趣味とか・・」 「悟空と一緒に居ることだ」 「・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・。えーと、得意なこととか」 「悟空のスリーサイズから毎日髪の毛が何ミリずつ成長するか全て把握している」 「・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・ごめん、元のままでいいや・・」 悟空は負けた。 「おい大将、悟空が泣いてたぜ?」 廊下ですれ違いざま、是音が焔に訴えた。 「何?なぜ悟空が泣く?」 「・・・・自分の行動を省みろって」 「・・・・・・・・」 無表情のまま沈黙する焔。 「・・・何も無いな」 「・・・・・。・・・・・・まぁ、いいけどよ。ほどほどにしとかねーと逃げられるぞ?」 「まさか。逃がすわけが無かろう。例え出ていきたいと言っても手放しはしないさ」 「・・・・左様で」 「俺は金蝉と違って素直だからな」 「・・・・・・・・・。・・・・・・そりゃぁな。牛魔王の影響で仕事が忙しくてろくに悟空の相手 も出来ないもんでいらいらが積もりつっもってんのもわかるが・・」 「なら、黙っておけ。俺と悟空の問題だ」 「・・・・・・・・。・・・・・」 放っておきたいのは山々だが、悟空の機嫌の浮沈は焔の仕事にもそれは大きく 関わってくる。 まして、悟空に頼られて(・・訴えられて)嫌と言えるわけも無い。 「焔、これは部下としてでなく、結婚経験者としての忠告だ。伴侶の言葉は身に 染みて聞いておけ。でないと・・・」 「でないと?」 「・・・・・実家に帰られるぞ」 「・・・・・・・」 しみじみと言われた是音の言葉は焔を黙らせるに足る説得力に溢れていた。 それから焔が自分の行動を見直したかどうかは知らないが・・・相変わらず悟空に 『愛している』という姿が各所で目撃されているのであった。 |
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サブタイトルは『壊れた焔さま』(笑)
しかし、この話。よく考えると原作版、『桃花歴乱』みたいな
気がしてきましたね・・・新婚な焔空(笑)
でもこれから先はあれと違ってちょ〜とシリアス入って
きそうなんですよね・・・ニヤリ★