― 是音 ―
こういうのを「男気」というのかもしれない・・・・
「あぁ?何をぼーとしてやがる?口からメシがこぼれてるぞ」 「えっ!?」 是音の言葉にふと我にかえった悟空は慌ててこぼれそうになっている口元の 唐揚げを頬張った。 その拍子にテーブルの上のフォークがかちゃんっと床に落ちる。 「あ・・・・・」 ばつが悪くなって是音の顔を見上げた悟空の髪を是音はわしゃわしゃと掻き混ぜ、 「気にすんな」と告げた。 ・・・・・・違う。 しゃべり方はよく似ているけど・・・・・・。 包みこむような大人の優しさは是音だけのもの。 燃えるような赤の記憶には・・・・・・その優しさは・・・・・・不器用だった・・・・。 「どうした?悟空。今日は何だか妙だぞ」 「・・・・そっかな?」 「ああ、お前が食事中に他のこと考えるなんて天変地異の前触れかと思うくらいだ」 「・・・・・・・」 それは酷い、と言えないあたりちょっとは自覚が出てきたのかもしれない悟空。 「何か気に掛かることでもあるのか?」 その言葉に思わず悟空はぷっと吹き出した。 「何だぁ?」 「だって紫鴛と同じこと言ってんだもん」 「・・・・あいつと?」 何だか嫌そうな顔になる是音。 「どうしたの?」 「俺にあいつの慇懃無礼さが移ったかもしれねぇと思って、な」 「あ、ひっでー。紫鴛に言うよ」 「待て待て!!お前、あいつがどんなに陰険なのか知らないのかっ!?」 慌てて悟空を止める是音にますます、笑い声は大きくなる。 そして、ふと。 記憶のなかの『あの二人』もこんな風な関係だったと思い出す。 「おい、悟空・・・・・・・・・・・・お前にそんな顔は似合わねぇよ」 「え・・・?」 「そんな寂しそうな顔で笑うな」 「・・・・寂し、そう・・・・?」 「ああ、気づいてないのか?」 「・・・・・・・・」 どうやって言葉をかえせばいいのかわからない悟空は開いた口を・・・・閉じた。 かの人たちを思い出していた・・・とは言えなかった。 「まぁ、いいさ」 「・・・・・?」 「誰にだってしんみりする時てのはあるからな!」 そして再び「気にすんな」と悟空の背中を叩いた・・・・・元気づけるように。 「・・・・・・是音にも?」 「・・・それはあんまりな言葉じゃねぇか?」 情けなさそうにかえす是音。 二人は無言で見つめあい・・・・・・・・噴出した。 「「ははははっははっ!!」」 笑い声が食堂に響く。 「是音は優しいね」 「お、おいっ・・・突然どうした!?」 「突然じゃないって。ずっとそう思ってた」 「・・・・・・そう言うことは心の中だけで思っててくれ・・・・・・・照れる」 柄にもなく、確かに是音の頬はうっすらと赤くなっていた。 「それに・・・・・・・・・・・大将の嫉妬が恐い」 「・・・・な・・・!?」 是音の言葉に今度は悟空のほうが赤面した。 今は、ここには居ない自分と同じ金色の瞳を持つ・・・・・・・大切な人。 「・・・・・・・・・・・・・やっぱり紫鴛に言ってやる」 「お、おいっ!?」 悔し紛れに口にした言葉は予想以上に相手にきいたようで悟空の機嫌は一気に 上昇した。 「大丈夫だよ♪」 「何が・・・・?」 「だってオレが言わなくても・・・・・」 悟空が是音の背後を指差した。 そこには無表情で二人を見下ろす紫鴛の姿。 「・・・・っ!!!!!!」 是音の口から声にならない悲鳴があがった。 「何のお話でしょう、是音?」 冷静な声音がいっそう恐い。 「あのね、是音がねっ!!」 「あ、おいっ悟空!!!」 慌てて、悟空の口を是音の手がふさいだ。 「ふぐっんっ!!」 「な、何でもねぇよ。気にすんな」 同じセリフでも・・・・今回のは妙にしらじらしかった。 「まぁ・・・いいですけどね。貴方もかなり命知らずな方ですね」 「は?」 今度は紫鴛が二人の背後を指差した。 「・・・・・・っ!!!!」 そこには金と蒼の瞳を不機嫌そうにゆがめた是音言うところの「大将」が溢れん ばかりの殺気とともに立っていた。 「その手を離せ、悟空が苦しがっている」 是音は、自分の命はここで儚くなってしまうかもれない・・・・と思った。 「あ、焔♪お帰りっ!!」 慌てて是音が手をはなすと、悟空はその人物に嬉しそうにかけよった。 「ああ、変わりなかったか?」 「うんっ!!」 焔の手が悟空の髪をなで、悟空は気持ちよさそうに目をとじていた。 その相手から先ほどの殺気は微塵も感じられなかった。 「助かったようですね、是音」 「・・・・・やっぱお前、性格悪いな」 「ええ、何しろ『慇懃無礼』だそうですから」 「・・・っ!?」 どうやら悟空との会話を全て聞いていたらしい相手に是音はがくりと肩を落とした。 「まぁ、いいです。今回のことは」 「は?」 「沈んでいた悟空が元気になったようですから」 「・・・・・・そうだな」 自分たちと共にあることを決めた悟空。 捨てなければならなかったものは軽くはない。 時節、それを思い出す悟空に自分たちは、何の言葉もかけてはやれない。 けれど。 悟空には笑っていて欲しいのだ。 「ああ、そうだな」 もう一度、是音は噛み締めるように呟いた。 |
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† 中がき † キャラ変わってんじゃん・・・・と書きつつ思った御華門です(笑) ホント、誰だよ、この是音・・・・(ノT∧T)ノ┻━┻ この『今昔如何』、本当は紫鴛の話だけを書くつもりでした。 でも紫鴛を書いていたら是音も・・焔も書いたほうが すっきりするような気がしまして・・・(^^ゞ 書いてみたんですが・・・・・是音は一番難しいです(T×T) さて、つづいて焔様です♪(←結局これが書きたいらしい・笑) |