v おまけ v







「・・・・・焔のばかぁぁっっ!!!」
「ご、悟空っ!!!!??」
 突然、涙まじりの目で叫んだ悟空は扉を突き破って外に駆け出して行った。
 広間に残されたのは何が何だかわからず呆然と突っ立つ焔だけ・・・・。










「・・・でいったい何をしたんですか?」
 おだやか〜な表情でいながら厳しいものを言葉に含ませて紫鴛が焔に尋ねた。
「・・・・それは俺が聞きたい」
「またまた〜ナニでもしたんじゃねぇの?」
 軽い口調の是音に二人の殺気のこもった視線が突き刺さる。
 たら〜と是音の顔に冷や汗が流れた。
「・・・とにかく順を追って説明していただけませんか?」
「・・・わかった。まずいつものように悟空が「腹減った」と言い出したのがはじまり
だった・・・・・」
 そして焔の回想がはじまった。








「なぁなぁ、焔ぁ!腹減った〜っ!!」
「ではどこかに食べに行くか?」
 甘い声でねだる悟空に焔はとろけそうになる顔をなんとかひきしめて悟空をさりげ
なく外食に誘った。
「やった〜っ!!すっげー久しぶりっ!!肉まんとか中華まんとかちまきとか・・・・
他にもたくさん食っていいっ!?」
「ああ。好きなだけ食べるといいだろう」
 その言葉に悟空は嬉しさのあまりぎゅっぅぅと焔に抱きついた。
「焔大好きっ!!三蔵だったら絶対駄目って言うもんな!」

 ”三蔵”そのセリフに焔は氷ついた。



「・・・・・・まだ金蝉のことを忘れられないのだな・・・・悟空」
「え・・・・?」
 大した意味もなく言ったセリフにそう返されて悟空は首をかしげる。
「いつになればお前は俺のことだけを見、俺のことだけを考えるようになるのだろう・・」
「ほむら・・??」
「いったいいつになれば・・・・・」
 囁くように繰り返した焔は悟空の返答を恐れるかのようにその体を己の胸に
抱いた・・・・強くしっかりと。
「ちょ・・・っほむ・・・っ・・っ!?」
 突然の事態に驚き慌てた悟空は腕の中でじたばたと暴れたがやがて大人しくなり
ふいに焔を見上げた。
 そして・・・・・。


「・・・・・焔のばかぁぁぁっっ!!!」

 最初のセリフに続くのであった。









「・・・・というわけなのだ」
「「・・・・・・・・・・・はぁぁぁぁ」」
 話し終えた焔に是音と紫鴛は二人そろって深い深いため息をついた。
「あのなぁ、大将・・・」
「焔・・・いい加減にしないと本当に悟空はどこかへ行ってしまいますよ」
 せっかく手に入れた唯一の存在を失ってもいいのかと無言のプレッシャーをかける
紫鴛である。
「早く追いかけてってやれよ・・・・待ってるぜ?」
「・・・・・・・わかった」
 そして焔は是音に促されるかのように駆け去った悟空を探しに塔を出たのだった。





 幸いにも悟空はすぐに見つかった。
 最近、散歩のときに見つけた緑しげる大木が木陰をつくる丘。
 そこに悟空はいた。




「・・・・悟空」
 おそらく自分の気配に気づいているであろうことを思いながらも焔は悟空の背に声を
かけた。
 だが今いち何故悟空があれほどまでに怒ったのか理解していない焔はその後が続かず、
場には沈黙が満ちる。
 どうしたものか・・・と悩む焔に悟空が口を開いた。



「オレ・・・焔のこと考えてるよ・・・・いっぱいいっぱい・・・・焔のこと見てるよ・・・・・。焔の
こと考えるだけで・・・ここんとこ」
 悟空が自分の胸をぎゅっと押さえる。
「すっごく焔でいっぱいになって・・・・どうしたらいいのかわかんないほど・・・・」
「悟空・・・」
「・・・・それなのに焔はオレのこと・・・・・信じてくれないの・・・・?」
 小さく震える悟空の体を焔は抱きしめた。
 自分の埒もない嫉妬でここまで悟空を悲しませてしまったことが悔やまれて仕方がなかっ
た。悟空はこれほどまでに自分のことを想っていてくれるというのに・・・・。

「すまない・・・悟空。俺が悪かった」
 背後から抱きしめていた体を正面に向かせると涙が滲んでいた悟空の眦に口付けを
落とす。
「絶対にお前を泣かせたりはしない・・・・そう思っていたのに泣かせてしまったな。俺を
選んでくれたときに・・・お前は俺のことだけを考えると約してくれたも同じだったのに。
・・・・俺を許してくれるか?悟空」
「・・・・・・・・・うん」
 こくり、と小さく頷いた悟空に焔はもう一度口づけをし、大地色をした髪を優しく梳いた。

「愛してる・・・悟空」
「・・・・・愛してる・・・焔」














「・・・・・でこれで通算何度目だ?」
「えー・・・2,3・・・5回目ですねぇ」
「本当に毎回毎回同じことよくやるよなぁ・・・」
「まぁ、あれも二人にとっては一種のスキンシップなんでしょう」
「とは言ってもそのたびに巻き込まれる俺たちにはいい迷惑だぜ」
「まぁ、仕方ありませんね・・・・焔と悟空ですから」
「・・・・・・それで納得してしまう俺たちも俺たちだぜ・・・・・」
「平和でいいではありませんか」
「・・・・・まぁな」
 そして二人は紫鴛のいれた茶をずずずっとすすりながら焔と悟空の帰宅を待つのだった。













† あとがき †

だんだん書いてると焔さま、キャラ変わってるんじゃ・・・と思いつつ
悟空にめろめろだからいいか・・・と思うあたり末期です(笑)
それにしても犬も食わない何とやら・・とは申しますが
この二人の痴話喧嘩はまさにそんな感じ(笑)
もう、勝手にやっててくれ・・・てなものでしょう(笑)





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