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第二幕
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空に花が舞い、祝福の声が大地からあがる。 天界は誰もが記憶にある限りはじめての活気に満ち溢れていた。 新たなる天帝の即位式。 地の果てから、冥界から・・・あらゆる場所から慶賀の使者が訪れていた。 もちろん、その祝いを受け取るべき天帝は・・・・・悟空である。 「もう嫌だよぉ〜っ!!」 霊霄殿の奥宮から悟空の叫び声が響いた。 「なりませんっ!本日は二度とないめでたき席でございます。天帝にはきちんとした 装いをしていただきます」 女官頭の言葉に背後に続く女官たちも一斉に深く頷く。 悟空は各界からの祝辞にこたえるために、身だしなみを整えさせられていた。 何しろ普段は全く服装に頓着しない悟空である。 それを苦々しく思っていた女官たちはここぞとばかりに悟空を飾りたてるつもりだった。 悟空は最初こそ甘くみて我慢していたものの、それもそろそろ尽きそうだった。 「悟空」 「あ、金蝉!」 そこへ金蝉童子が現れた。 女官たちは頭を下げる。 「何を我侭を言っている?」 「我侭じゃないもん!・・なんでこんな格好しなくちゃいけないんだよ!普通の服でいいじゃんっ!」 「普段の格好などしていたらそのへんの野サルが紛れこんだと思われて追い出されるのが おちだ。我慢しろ」 「ひっでーっ!何だよ・・・金蝉は普段の格好してるくせに・・・ずりー・・」 「俺も今から着替えるんだよ」 「どんなっ!?どんな!見たい〜っ!!」 悟空の興味津々な様子に金蝉は眉をしかめた。 「俺のことなんかいいからさっさと大人しく着替えろ。使者たちはもう待っているんだからな」 「「「「おまかせ下さい!」」」」」 金蝉のありがた〜い言葉に女官たちは満面の笑顔で請け負った。 ・・・・悟空の不幸は続く。 「う゛・・・・む〜」 「ああ、そのように頭を掻いてはなりません」 「もう少々歩幅は小さくして下さいませ」 「そのように元気よく跳ねられましては冠が落ちてしまいますわ」 etc...etc.... 女官たちにびしばし立居振舞を叩き込まれた悟空は玉座に辿りつく前にすでに 疲労困憊していた。 それでも脱走せずに我慢しているのは・・・・祝賀の席で焔に会うことが出来るから。 突然、天帝だと言われた悟空は聊か混乱したものの焔と共に過ごすことが出来るならば 何だっていい・・・そう思い、天帝となることに頷いた。 しかし、焔とずっと一緒に居られると思ったのも束の間。 焔は悟空と離され、自分の宮へ幽閉状態となった。 もちろん、悟空が文句を言わなかったはずが無い。 それでも観世音や如来に焔がしたことの後始末はきちんとしなければならないと言われ、 ・・・・焔に奪われた・・・自分のために・・・・命のことを考えると拳を握りしめるしかなかった。 その焔が、自分の即位を祝うために闘神としてこの霊霄殿へ姿をあらわすのだ。 沈みこんでいた悟空は女官たちのその言葉に笑顔を浮かべた。 ++++++++++++++++++++++ 天帝が広間に姿を現すのを並み居る神々は平伏して待つ。 静謐として場には衣擦れの音さえ響かない。 「天帝陛下のおなり〜〜」 先触れの声が広間に響く。 それが人々に伝わり、ぴんっと空気が張り詰めた。 新たなる天帝・・・・皆、その存在を知りたくて仕方が無いのだ。 突然の代替わり。 何者かの陰謀でもあったのでは無いかと影で噂は飛んでいる。 玉座に軽やかな足音が響く。 そして、一瞬後。 「面をあげよ。天帝陛下の特別なるご配慮によりご尊顔を拝すことを許す」 それは金蝉童子の声だった。 朗々と響く声は耳に心地よく、その姿は目に心地いい。 きちんとした礼装に身を包んだ金蝉は神であるということを改めて納得させるほど 威厳に満ちていた。 しかし、そんな金蝉の姿に一同が気をとられたのも束の間。 初めて見る天帝の姿に呆然と目と口を見開いた。 「「「「「(・・・・・子供かっ!?)」」」」」」」 まさか天帝がこれほど幼いとは思ってもいなかった一同は内心で叫び声をあげた。 姿形にもあどけなさが残り、あつらえたように悟空にあわせて作られた天帝の礼装が よく似合って・・・・・可愛らしい。 これが新たな天帝か。 何ほどのものでもない・・・・そう思った。 けれど、真っ直ぐに見つめる金色の瞳に圧される。 それは一切の嘘偽りを許さぬ眼差し。 純粋で強い力を宿していることは一目で知れた。 「ようこそ、皆様。わざわざ私の即位の祝いに来ていただきありがとうございます」 悟空がゆっくりと口を開き、その口から出てきたのはいつもの悟空の口調が信じられないほど 丁寧で雅な言葉だった。 ・・・・女官たちの奮闘が目に浮かぶ。 それに祝いの使者たちはころりと騙された。 尊大で無い言い方も好感を与えた。 そして、永遠に続くとも思われる祝辞がはじまった。 金蝉が名前を読み上げると、使者は祝賀の品を持ち悟空の前に進む。 「天帝陛下、ご即位おめでとうございます。陛下の御世が永久に続きますことを」 「ありがとう」 悟空は焔の番はまだかという内心の焦りを隠して、自分のために来てくれた使者たち 一人一人にお礼を述べる。 しかも極上の笑顔つき。 ほや〜んとなる使者を金蝉は咳払いで我に帰らせ作業をすすめた。 そしてついに、その時はやってきた。 「次は闘神・・・・・」 (焔だっ!) 悟空はやっと会うことの出来る焔の登場に胸を躍らせる。 しかし・・・。 「ナタク太子」 「・・・・え」 (ナ・タ・ク・・・???) 闘神は焔のはず。 けれど金蝉の口から出たのは悟空の知らない名前だった。 悟空の頭の中は真っ白になった。 (どうして、どうして・・・・どうして????) 式典の場であることも忘れて悟空は脇に立つ金蝉を見あげた。 金蝉も悟空を見つめ、言い聞かせるように小さく、『悟空』と囁いた。 そして金蝉の視線が・・・・進み出たナタク太子に流れる。 年の頃は悟空と同じかやや上。 武人の礼装に身を包み、深く頭をたれている。 「ご尊顔、拝し奉り恐悦至極にございます。闘神としは陛下と同じく新任ではありますが 陛下の御世をお守りできる光栄を自重し、お心騒がせること無きよう誠心誠意励ませて いただく所存でございます。・・・・陛下に生涯の忠誠を」 宝刀を掲げたナタク太子がもう一度悟空の前に平伏した。 だが、ナタク太子の口上は悟空の意識を上滑る。 (焔は・・・・どこ!?) 悟空の体がゆっくりと傾ぐ。 「悟空っ!!」 誰かが遠くそう叫ぶのを最後に悟空の意識は闇に沈んだ。 |
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† あとがき †
第二部ですv
・・危うくギャグ調になりそうなところを何とか押しとどめました。
比翼連理はシリアスがモットーですから!(・・慣れないことを・・・)
久々に悟空のイラスト描いておりましたら少々UPが
遅れましたが・・予想以上に早く第二部に突入できて
自分で安心している御華門です(おいっ)
一部ほど長くはならないと思うのですが(・・・ホントか?)
どうぞよろしくお付き合いくださいませv