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 天の龍族の国。
 一際強靭な肉体を誇り、天地を貫く強大な神通力を持つ彼等は一族の長を筆頭に完全な縦社会を構成
 していた。長は血筋には寄らず、力によって選ばれる。
 当代龍王は、御名を『光明』と仰せられた。
 穏やかな気質ながら、並外れた神通力を有し、皆の信頼も篤い優れた龍王であった。

 その龍王には、二人の皇子があった。
 一人は、焔という名を冠せられ、長の右腕としてよく支えた。
 今一人は、未だ成人には至らぬ幼な龍。名を江流といい、すくすくとお育ちであった。


 さて、このたび国は慶事に沸き立っていた。
 待ちに待っていた焔皇子の妃が決まったのだ。長の地位は世襲というわけではないが、焔皇子はすでに次期
 龍王と目されており、一族の者は総出でこの吉事を祝った。
 見目麗しい焔皇子は女性にはよくもてたが、彼自身なかなか本気で惚れる相手には巡りあうことができず
 500年の長き月日、独り身で過ごしてきた。
 だが、ある日気まぐれに降りたちた地上にて、運命の出会いを果たす。
 彼は己の龍玉を見つけ出した。
 地母神が産みだした精霊に彼は一目ぼれし、瞬く間に精霊を天へと迎え入れる準備を整えた。
 そして、輿入れは明日に迫っていた。

 






「嬉しいですね〜vやっとお嫁さんが見られるんですから♪」
 浮かれているのは、焔皇子の父親である・・・龍王光明。彼は息子の結婚を誰よりも喜び、浮かれていた。
「江流も早くいいお嫁さんを見つけてきてくださいねv」
「・・・父上、俺には少しばかり早すぎますよ・・・まだ成人もしてないんですから」
「そんなのすぐですよ、すぐ」
「・・・・・。・・・・・」
 生意気、仏頂面、傲岸不遜・・・そんな形容詞に彩られる江流ではあったが、父親である光明だけは尊敬
 していて、対しても礼儀正しかった。
「しかし・・同じ龍族じゃなくてもいいんですか?」
「いいんじゃないですか?好きだって言うんですから♪」
 同族の結婚でなければ許されないというわけではないが、やはり異種族間では身体能力から慣習まで
 異なることは山ほどあって、どちらかといえば悲劇的な結末を迎える夫婦が多い。
「やはり江流もお兄さんのことは心配ですか?」
「いえ、全く」
 江流は兄である焔に全く興味がない。家族愛も無い。あれは自分とは他人であると認識している。
 江流が心配しているのは、兄夫婦が離婚となって一番に騒いで泣き出しそうなのが、誰あろう目の前の
 父親である、ということなのだ。いくら尊敬している相手でも、泣かれると扱いに困る。
「大丈夫ですよvお嫁さんは凄く可愛らしい人でしたけど・・・・焔より強い力を感じましたから」
「・・・・・・・・・」
 それもどうなんだ・・・・龍族、しかも次期龍王と目される人物より強い嫁。
 江流の頭の中では筋骨隆々とした想像図が描かれる・・・・焔がそれほどゲテモノ好きであったとは・・・。
「でも何かとわからないことは多いでしょうし、江流も仲良くしてあげて下さいね」
「・・・・・・はい」
 とりあえず、ここは素直に頷く江流だった。













 輿入れは華やかに行われた。
 薄絹で幾重にも隠された花嫁の輿は外からでは影しか見て取ることは出来なかったが、焔が住む宮までの
 道中、祝辞と祝いの花が幾度となくかけられ、輿が通り過ぎた後は色とりどりの花で埋め尽くされた。
 そして、宮の前には待ちきれないとばかりに花婿である焔が最前でその輿を迎えた。
 その顔には隠しきれない喜びが広がり、およそ誰にも見せたことが無い優しさがにじみ出ていた。
 焔は輿が下ろされると、一歩踏み出し、自ら幕をあげる。

「・・・・・悟空?」

 焔の呼びかけに、しかし返事はかえらない。
 膝をつけた焔は、輿を覗きこみ、破顔した。
 花嫁は輿のなかで、すやすやと健やかな寝息をたて、眠りについていた。

「焔、どうしました?」
 側近の紫鴛が背後から声をかける。
「いや、何でもない」
 焔はそう言うと、輿の中に腕を差し入れ、愛しい花嫁をその腕に抱き上げた。
 寝顔は焔の胸に隠れてわからないが、茶色の長い髪には白い花が惜しげもなく飾られている。
「・・・・待っていた、悟空」
 万感の思いをこめて呟いた焔は、そのまま花嫁を抱き、宮の奥へと消えていった。


 







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めちゃめちゃ幸せそうだなぁ、焔(笑)
本当はもう一つ予定していた連載のほうを早くUPしようと
思っていたんですが急に思いついてしまったので(苦笑)