ダナ=坊ちゃん
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「もうちょっと付き合ってね、テッド」 村を出たダナはそのまま北に向かって歩いていく。 「どこに行くんだ?」 「父上に会いに」 「テオ様?・・・グレッグミンスターに居るんじゃないのか?」 ダナにお願い(脅)されて城に居るはずでは無かったのか。 「少し前から同盟が色々ちょっかいかけてきて煩かったから退治お願いしてたんだよ」 「退治・・な」 ダナが行こうとしているのは戦場だ。 だがその歩調はハイキングに行くような軽快さだった。隣を歩くテッドも同様に。 「お前、同盟を潰すつもりなのか?」 「そんなつもりは無いけど相手の出方次第かな。今はまだ表には出てきていないだろうけれど、同盟に加盟している都市同士は利害関係が一致して纏まっているにすぎない。それも徐々に崩れつつある」 自分たちの愚かしさでね・・・。 「同じ”人”だというのに」 「人だからこそだろ。競争心があるからこそ色々なものが生まれる」 「マイナスだけでなく、プラスもあるってことだね」 全く子供らしく無い会話を続けながら二人は戦場が見下ろすことが出来る丘に立っていた。 「鉄甲騎馬兵もお揃いで。相変わらず迫力あるよな〜」 「普通の馬なら紋章の力ですぐに倒れてしまうけれど、あれなら丈夫だからね。そのぶん体格も良いし、餌も通常の馬の1、5倍。長期戦には向かないかな」 冷静に分析する姿は将というより軍師のようだ。 「あそこが父上たちの天幕みたい。小休止しているみたいだし丁度良かった」 丘を下りて近づいてくるダナたちの姿に気づいた兵士が、不審そうな表情を浮かべるが暢気に手を振るダナの姿に兵士は何かに気づき慌てて伝令に走っていく。 「さすが有名人は違うな」 「馬たちが可愛くてよく出入りしていたから、顔を覚えてくれていたんじゃない?」 一度見れば二度と忘れられないことは確かだろう。それのくらいダナの容貌は圧倒的だ。 「ダナ様っ!!!!!」 鉄甲騎馬もかくやという勢いで駆け寄って来るのは見慣れた相手だった。 「・・・グレンのほうが良かったんだけど」 「アレンさん泣くぞ」 テオの副将の一人、アレンはダナに心酔しきっている。それはもう信仰の域に近い。 まあ珍しいことでも無いのでテッドは驚かないが、初めてダナと一緒に居るところを見つかった時は本気で殺されるかと思った。主に嫉妬で。 「ダナ様っ!本当にダナ様ですね!」 「偽者じゃないよ」 「こんなところでお会いできるとはっ!まさに運命!!」 「用があったただけなんだけど」 ダナは華麗にスルーする。 「父上はどこ?」 「はっ!こちらです!テオ様もきっとお喜びになりますよ!!」 テオ将軍も跡取りとしてダナを厳しく育てていた。 それでも息子を深く愛しているのだろうということはわかったものだったが何処で方向を間違えたのか最近は『溺愛』に近い。 むしろダナの尻に敷かれている。 「戦況はどう?」 「同盟の奴らなど物の数ではありませんっ!」 確かにちょっと見回しただけでも負傷兵もほとんど見かけない。 時節ダナと目があった兵士が微笑みかけられ、雄たけびを上げるのが鬱陶しいだけだ。 その兵士をアレンの目が鋭くチェックしている。ご愁傷様だ。 「こちらの天幕です。ダナさ・・・」 「ダナっ!!」 天幕の入口の幕がばさぁっと舞い上がり、テオが雄牛のように突っ込んできた。 軌道上に居たアレンが憐れにも吹っ飛ばされる。 もちろんダナもテッドも両脇によけて難を逃れた。 「ダナっ!我が息子よっ!!」 「お元気そうですね、父上」 抱きついてこようとするテオを最小限の動きで捌きながら言葉をかわす。 「ダナ様。中へどうぞお入り下さい」 終わりの見えない二人のやりとりに救いの手を差し伸べたのはもう一人の副将グレンシールだった。 遠慮したほうが良いかと躊躇っていたテッドをダナが促すので仕方なく後に続く。 「どうぞこちらへお掛け下さい。わざわざお越しになるとは何かありましたか?」 「ありがとう、グレン。どうなってるか、様子を見にきただけだから心配はいらないよ」 グレンシールに笑顔で答えるダナの背後でテオが涙を流している。 息子に無視されて辛いらしい。・・・本当にいつからこんな状態に・・・。 「こっちで何か変わったことはあった?」 「変わったことと言えば・・・同盟の動きというよりは、ハイランドの動きに不審な点が」 「へえ。ハイランドか。それで?」 何も知らない風を装ってダナはグレンシールの話の続きを促す。 「我々と争っていた同盟の軍をどうもハイランドが背後から狙ったようで、急いで退却していったのです。単純に考えればハイランドが漁夫の利を得ようとしたと考えられるのですが・・・」 「グレンは納得しないんだ?」 「ダナ様にわざわざ申し上げるまでもありませんが、今ハイランドが同盟を狙っても他の同盟都市の助力がありますから無駄に終わる可能性が高いと思われます」 「それじゃ、どうしてハイランドは動いたんだろう?」 「それが・・・私ではわかりかねます。ダナ様でしたらご存知なのでは?」 グレンシールはそれを確信しているようだった。 ダナはじっとグレンシールを見、くすりと笑った。 「いくらなんでもハイランドのことまで僕にはわからないよ。でも」 そこでダナは一旦切り、テーブルに頬杖をつき天を仰ぎ、目を閉じた。 そして次に目を開き、グレンシールを見たその視線にグレンシールだけでなく、空気が止まった。 「今が絶好のチャンスだってことはわかる」 負けることは許さないと、そこには絶対支配者が居た。 はっと我に返ったグレンシールが膝をつき、頭を垂れる。 「父上。不敗神話を築いて下さるでしょう?」 「無論」 背後に立ったテオの返事に、ダナは女神のように微笑んだ。 |
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テオ様居るのに存在感まるでなし(笑)