** スレナルVer. **
弐
ナルトが別の任務を片付けて、飛行忍術で木の葉を出発した船に追いついたとき、彼等は 氷山で三人衆と戦闘の最中だった。 (早速面倒なことになってやがる・・・) 胸中で呟いたナルトは、影分身と交替し、ミゾレの拳を受け止めた。 「な・・っ!?」 ナルトに難なく受け止められた相手が驚きの声を洩らす。 ナルトにとってはこれでも下忍レベルの能力でしかないのに、この程度で驚かれていては鎧 もそう期待できない代物だとがっかりする。 ちょっとナルトが本気になれば、こんなもの粉々に砕けてしまうだろう。 ただこの鎧はもう自分のもので回収することにしているので、やめておく。サスケと対戦している忍とは型が違うようなので、あちらも回収対象リストに上げた。 雪姫の叫びを聞きながら、わざと隙を作って放り投げられると、ナダレと戦っていたカカシの 視線がこちらを向いた。『引き揚げるぞ』というナルトの視線に、カカシが動き出す。 カカシによってコピーされた術は、ナダレの術とぶかりあい相殺される。 過去をフラッシュバックさせて気を失った雪姫を担ぎあげ、ナルトたちは船に戻った。 「ナルト、お帰り〜vv」 上機嫌なカカシの顔に、ナルトは大きな溜息をついた。 「え、何何?」 「・・・金輪際、お前の言うことは信用しないことにする」 「えぇ!?どうして!?俺、ナルトに嘘ついたことなんて無いよっ!?」 「チャクラの鎧、全然役に立ってなさそうだろうが。チャクラを増幅するって言ってたわりにお前の 術とどっこいどっこいじゃ・・・たかが知れてる」 「いや、それはきっと俺の能力が元々あっちより優れてるってことで」 「・・・10年前、尻尾巻いて逃げたくせに」 「ぐふぅっ」 強烈なカウンターパンチが決まった。 「とりあえず、あいつらの狙いはこの六角水晶だからな、本物と摩り替えておけ。そういうの得意 だろ、お前?」 「・・・・・ナルト、俺をいったい何だと・・・・」 「変態」 「・・・・・・・。・・・・・・・」 「それじゃ俺は不審がられないうちにサスケたちのところに戻るからうまくやっとけよ」 打ちひしがれ、膝をついたカカシをよそにナルトはすっと足音も無く甲板から姿を消した。 風花小雪は確かに一流の女優だろう。 関係ない、と叫ぶ姿は真に迫っていて誰もが本気で小雪がそう考えているのだと信じてしまう に違いない。だが、ダメだ。 小雪の目が自分自身を裏切っている。 帰りたくない、行きたくない、関係ない・・・そんな台詞を連発するわりには、小雪の目は罪悪感 でいっぱいだ。本当のクズはそんな目はしない。 「ハッピーエンドなんてこの世のどこにも無いのっ!!」 ああ。その通りだろうさ。それは正しい。 正しいが、わかっているのか? その叫ぶ言葉は、同時にハッピーエンドを願っているのだと証明していることに。 ナルトはカカシを見た。 このスリーマンセルの事実上のチームリーダーはカカシだ。 「これだけの任務だと一度里に戻ってもっと人数を集めるべきなんだが・・・」 その必要が無いことはカカシとナルトは承知している。ナルトが1人居れば、こんな小国その気になれば三日も必要とせずに制圧できる。 「時間の無駄だ、こんな任務俺たちだけで十分だ」 サスケが大口を叩く。叩くほどの実力を持っていないのに、口だけは一人前だ。 一瞬ナルトの口元に浮んだ冷笑を、カカシだけが気づいていた。 「決まりだな、撮影は続行だ」 監督の力強い言葉に、それぞれ胸中にある思いを押し込め頷いた。 |