ー後ー
チャンス到来とはこのことだ。 寝所で標的を殺せば、すぐさまナルトが犯人だとばれるが、気づいたときには後の 祭り。ナルトはさっさと逃げ出している。 「ねぇ、ナルト・・・殺していい?」 湯を使っていたナルトに天井から声がかかる。 「・・・出てくんな。てめぇは風の動きに気をつけてればいいんだよ」 「だって・・あいつ、ナルトのお尻に触ったでしょっ!?俺だってまだ触ったことないのにっ!」 「・・・・ぐだぐだ言ってるとお前を先に殺すぞ?」 低い声で脅されて、カカシはわざとらしく聞こえるようにため息をついて、姿を消した。 「・・・ったく、手のかかる・・・俺は子守か・・・」 疲れたようなナルトの声が、ちゃぷんと湯に消えていった。 「おおっ、待ちかねたぞ!」 侍女たちに案内されて姿を現したナルトに、ターゲットが涎を垂らさんばかりに口をゆるめ、もみ手を して出迎えた。 ねっとりとした粘着質な感触の手に触れられて、嫌悪感が一気に膨れ上がる。 「おお、可愛いのぅ」 「・・・どうか、お許し下さい・・・」 前戯も何もなく抱え込まれたナルトは初心な娘を装って、わずかばかりの抵抗を試みる。 「よいよい、何も怖いことは無いからのぅ。全て儂にまかしておれ」 好色爺はその余計に膨れまくった体でナルトを組み敷く。 「いや・・・っ」 「くふふ、嫌がる声もカワイイのぅ・・・・何も怖いことはない。優しくしてやるからの」 (・・・調子に乗ってんじゃねぇぞ、爺・・・) ナルトの身体を不穏に這い回る爺の手に、吐き気がこみあげるのを必死で耐える。 今まで仕事で”色”もあったが、これほど手が早い奴も初めてだ。 だが、かえって好都合。 速攻で殺して、任務を短期で引き上げられる。 「・・・・御前さま・・っ・・・お願いが、ございますっ・・・」 「んん〜何じゃ、カワイイお前の言うことならば何でも聞いてやろうほどに。何が欲しい?何が望みじゃ?」 「御前さま・・・・・」 「・・・・・死んでくれよ」 1オクターブは低くなった声に驚いた瞬間、爺の首に何かが突き刺さった。 「・・・・・カカシ」 ナルトは自分の上にのしかかる爺・・すでに死体を、鬱陶しげに押しのけて天井に潜んでいるはずのカカシを 呼んだ。 「護衛が動く・・・わかってるだろうな?」 「もちろん。ナルトは休んでてv」 「ふん」 動き出した気配はカカシにまかせ、ナルトは一瞬のうちに暗部の装束に着替える。 「もうお帰りですか?」 「用は済んだ」 隣室から掛けられた声に驚くこともなく、ナルトは応えた。 どこか聞き覚えのある落ち着いた女性の声は、侍女頭のもの。 「・・・・ただで帰すわけには・・・・・いかないんですがね」 それが、落ち着きはそのまま、低く男の声にとって変わる。 「傍観していた癖に、今さらなことを言うな」 くすり。 「・・・あなたに手を出すなら、相応の報いでしょう・・・・ですが、私も使われる身・・・・ご覚悟を」 「誰がそんなものをするかっ!」 風で吹き飛ばされた障子の向こうに、ナルトと同じ暗部装束に身を包み、風の額あてをした男が立っていた。 きんっという音が響き、互いが放ったクナイがぶつかり床に落ちる。 ナルトは中庭に出ると、そのまま屋根へと飛び上がり走り出す。 城内で戦えば余計な目撃者を出すことになる。・・・・殺す手間は少ないほうが楽だ。 相手の影もナルトに一瞬送れて、後を追う。 どちらの動きも常人には捉えることのできない素早さだった。 互いの力が拮抗し、術を出す暇を与えることなく接近戦で刀を交える。 甲高い刃音が響く中、数合して、間近にあった男の目が笑みに歪んだ。 「・・・ふふ、強くなった・・だが、まだ強くなるんでしょうね」 「当然だ」 ナルトは大きく後方に飛び、油断なく構えた。 「あなたは脅威だ。敵であるというのに・・・震えるほどに惹かれてしまう」 「耄碌したか?・・・・迅(シン)」 くつくつと愉快そうに男は笑う。 「・・・私はただの『影』・・・名も無き男・・・その名を知るのは僅か・・・あなたに名を呼ばれるのは心地いい」 「そっちが教えたんだろうが」 「そう・・・そうなのです・・・不思議なことだ」 「・・・・・・・・」 優しげな笑いはどこかイルカを彷彿とさせるが、纏う空気が違いすぎる。 しかし、ナルトが警戒するほどに強い。 「ナルトッ!!」 雑魚を片付けたカカシがナルトに追いついた。 ナルトを庇うように、背中へ隠し、目の前の男・・・『迅』を睨みつける。 「・・こいつがナルトが言ってた知り合い?」 「まぁ、そんなところだ」 カカシが来る前にさっさとけりをつけるつもりだったが、出会ってしまっては仕方ない。 「初めまして、写輪眼のカカシさん。お噂はかねがね聞いてますよ」 「・・・・・・お前、何?」 「くすくす、失礼。・・・・私は”影”・・・・それ以上でも以下でもありません」 「ナルト」 「言ってるだろ。そのまんま・・風影の『影』さ」 「・・・・・へぇ、なるほど」 『影』・・・つまりは、影武者。 「2対1では、少々きついですね・・・どうやら部下たちもカカシさんにやられてしまったようですし」 「どうでもいいような奴らを引き連れてきたくせによく言う・・・今回の任務、本気で果たすつもりがあったのか?」 迅は笑みを崩さないまま、頷く。 「ええ、受けた当初は・・・・・・ただ」 「ただ?」 「あなたがいらっしゃると聞き、やる気が失せました」 里の威信に関わるというのに、いとも簡単に言ってのける。 ナルトはカカシを押しのけると、素早く印を組み、迅に向かって手のひらを返した。 『散華ッ!!』 迅の周りに無数に出現した炎が繋がり、大輪の牡丹のように燃え上がる。 『滅風ッ!!』 迅を中心に強い風が渦巻き、炎を天へと還す。 ナルトと迅は視線を交わし、一瞬、笑いあった。 そして、背を向ける。 「ナルトっ!」 一人、事態についていけないカカシが、背後を警戒しながらナルトを追いかける。 「あいつは・・・」 「もう終わった。任務完了だ」 それ以上は、何も話すつもりは無いらしい。 「・・・全く・・・いーけどね。浮気は駄目だよっ!浮気は!!」 「・・・・・・・」 「ナールートッ!!」 「うざい・・・やっぱりお前と組むのは考えものだな・・・・」 「!?」 カカシの口がぴたりと閉じる。 「・・・・ぷっ」 「ナルトぉっ!!」 カカシの情けなさすぎる顔に、思わずナルトが噴出した。 「ばーか。さっさと帰るぞ」 「!・・そうだねっ!」 |
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・・間が空きまくったせいで当初の内容と大幅に変更。
タイトルと内容の違いすぎさに・・・あいたたた・・(涙)
オリキャラ登場・・何と無く色々なところで使えそうです(おい)