@ 壱 @
深夜2時過ぎ。 俗に言う、”丑三つ時”にナルトは任務帰りに声を掛けられた。 もちろんこんな時間であるから通常の下忍の任務では無い。 「よぅ、久しぶりじゃの〜」 そんな声にナルトはぴたりと足音も立てずその場で止まった。 夜目がきくナルトの目が木を背にしている人影に無言で突き刺さる。 「・・・・・・・」 (・・・・誰、だ?) ナルトは逡巡した。 自分にこんな親しげに声をかけてくる相手は・・・そうは居ない。 上忍連中はこんな話し方はしないだろうし、人違いか・・・? いや、それにしても真っ黒な暗部の装束に身を包んでいる人間にそうそう勘違い で声をかけてくるとは思えない。 相手は自分がナルトであることをきちんとわかっている。 ・・・どこかで、聞き覚えのある口調では、ある。 「冷たいの〜、オレのこと忘れたんかぁ?」 このしゃべり方。 ・・・だが、記憶にあるその存在とは全く別の姿形・・・・。 「・・・・ガマ吉?」 「当たりじゃ〜」 「・・・・・・何だよ、その格好は・・・・」 そう、その心当たりとは。 ナルトが口寄せの術で召還するガマブン太、の息子ガマ吉だった。 だが、ガマブン太はカエル。当然その息子もカエル、のはず・・・。 だが、目の前の人物は・・・そう、間違いなく”人”だった。 「オレが人間になってんのがそんなに不思議かぁ?オレはただのカエルじゃねぇ。 オヤジの息子じゃけぇの〜、変化くれぇおてのもんよ」 まぁ、確かに普通のカエルはそれ以前にしゃべりもしないだろう。 「ふぅん・・・・・で、それが何の用?」 相手の正体がわかってしまえばナルトにはもう用は無い。 明日・・ではなくもう今日だが、表の任務が待っている。 早く帰って眠りたい。 「あーいやー、その、な・・・・」 「だから?」 「ちょっと・・・泊めてくれんかのぉ?」 「・・・・・・・。・・・・・・・はぁぁ?」 ナルトのドスのきいた声が据わりきった目と共にガマ吉に向けられた。 「何じゃ、しけた朝飯じゃの〜」 「なら、喰うな」 無言のナルトプレッシャーにもくじけることなく、まんまとナルトの家にあがりこんだ ガマ吉は牛乳とパン、というおよそ彩りのない朝食に文句をつけていた。 「腹が減っては戦はできぬ、じゃ」 そのくせ用意もしていないのに予備のパンを取り出して食っている。 ガマ吉でなければ即殺ものだ。 「ところで今日は何をするんじゃ。オレも暇じゃけぇついて行ってやるぞ」 「・・・・・・」 ナルトは頭をかかえた。 「きゃ〜、誰?誰?」 そして更に不幸なことに本日は下忍合同任務だった。 イノとサクラが黄色い叫び声をあげる。 向かう先はいつものサスケでは無い・・・もちろんナルトでも無い。 ということは・・・・。 (・・・・ガマ吉!?) まぁ、確かにしゃべり方さえ無視すれば顔は結構いいランクに位置するかも しれない。 ちょっと癖のある黒髪に緑色の目、すらりとした体型からはおよそ”元”があの カエルであることはわからない・・・あたり前だが。 「ちょっと、ナルト!誰よ・・そ、その人!」 イノがナルトに体当たりする。 ドベのナルトとしては受身を取りきれず転がりそうになる、しかない。 「イノブタ!うちの班に口出さないでよっ!」 「何よ、デコっ!」 「何っ!」 いつもの言い合いを開始した二人は放っておいて、とりあえずナルトは他の連中 に朝の挨拶を元気いっぱいにする。 「今日もいい天気だってば!」 「・・ていうか、誰だ、そいつは・・・」 まずはサスケが不審げな眼差しを向ける。 「こいつ?こいつってばガマ・・・・っんぐっ!」 「オレは吉次郎じゃ。よろしくのぉ」 紹介しようとしたナルトを遮ってガマ吉が前に出る。 (・・吉次郎?・・・誰だよ、それ・・・) ナルトは心の中で突っ込んだ。 「ふーん、でナルトの何なわけ・・?・・・めんどくせー」 と言いつつ気になるシカマル。 「昨日からナルトのところに世話になっとるんじゃ」 「「「「・・・・っ!!!」」」」 ガマ吉の言葉に男性陣が目を向いて殺気だった。 いったい何事かと思わずナルトも驚いてしまう。 「・・・・つまり、ナルトと・・・一夜を・・・共にした・・・」 とてつもなく誤解をうみそうなセリフを吐いたのはシノで、一見するとわからないが 相当に動揺しているらしい。 「おいっナルト!どういうことか説明しろ!」 いつもなら、ふん・・と鼻で笑ってすませるサスケまで喧嘩腰とは珍しい。 しかし、説明しろと言われてもナルトも今いち状況を把握していないので説明し にくい。 (・・・・どうするかな・・・) 「オレとナルトは心の友じゃけ〜のぉ」 ナルトが逡巡している間にガマ吉は好き勝手にほざいている。 いったいいつそんなものになったのやら、とナルトは心の中で呆れつつも表面は 笑って、『そうなんだってばよ〜』と調子よく頷いている。 が、それが大きな間違いのもとだった。 「ナルトっ!!」 疾風のごとく目の前に現れたのはナルトの上司であるカカシ。よくつけられる 形容詞は”変態”である。 「ナルトには俺がいるでしょ!浮気するなんて酷いよ〜」 「な、何言ってるんだってば???」 もし周りに下忍たちが居なければナルトは容赦なくカカシを張り倒していたこと だろう・・・・とりあえず後で制裁決定。 「まぁカカシの奴は放っておいて、マジにそいつ誰なんだ?ナルト」 アスマも首をかしげている。少しばかり警戒の色も見える。 それはそうだろう。 ナルトたちと同年代で、これほど親しげな奴は居ないはず、なのである。 「だから俺の友達だってば!」 と叫ぶ影でナルトは口だけ動かしガマ吉の正体を告げる。 それでアスマは納得したらしい。 「だけど、どうするの?この子も参加?」 紅も先ほどのナルトの口の動きを読んでいるのかそれ以上は言わなかったが 任務については判断できないでいる。 「ドベだけでも手一杯なのにこれ以上の足でまといはいらん」 サスケがここぞとばかりに皮肉な笑いを浮かべる。 「足でまといってのはオレのことかぁ?はん、それはオレの実力を見てから言って もらいてぇもんじゃのぉ」 バシバシっ!とサスケとガマ吉の視線がぶつかった。 (・・・・もう、どうにでもしてくれ・・・) 任務前からナルトは疲れきっていた。 さてどうなるっ!? |