従いし もの



















 激昂したナルトを、サスケは呆然と眺めた。
 成長したナルトは、飄々として補佐官であるサスケにさえ本心をなかなかうかがわせない。
 記憶にある子供時代でさえ、騒々しい思い出さえあるが・・ここまでの絶望を見たこともないし、
 見せたことも無かった。いつでも前向きで、およそ諦めるということを知らぬ雑草のごとき強さの
 『うずまきナルト』。そんなものしか見たことが無かった。

 その強さの中に、これほどの絶望を押し込めていた。
 


「・・・・ともかく、その円陣の中に入れ」
 一息ついたナルトは、先ほどの圧縮した殺気を霧散させ、サスケに命じた。
「ナルト」
「入れ」
「出来ない。・・・俺は、お前を守ると誓い、お前はそれを受け入れたはずだ」
「・・・勘違いするな。許したわけじゃない。放置しただけだ」
「ならば、これからも放置しておいてくれればいい。出来るだけナルトの視界に入らないように努力
 する。任務の邪魔もしないと誓う」
 サスケは健気なほどに言い募る。
 あのプライドばかりが高かったサスケの変わりように、ナルトは少し驚く。
 それほどまでに、このサスケと共にあった『ナルト』は・・・命をかけるに値する存在だったのか。

 
 (・・・重ねてんのは、俺のほうなのかもな・・・こいつは、俺の知っている『サスケ』とは違う)

 
 ふぅ、とナルトは息を吐いた。

「サスケ」
 びくりと震える。
「もし、お前が・・・・俺を、お前の知っている俺を信じるならば・・・」
「・・・・・」
「・・・『俺』は、責任を放棄して――― 死ぬような奴だったか?」
「!?」
 目を見開いたサスケが、ナルトを見つめる。
「未来の俺がどんな危機に遭い、どうしてお前に禁術を使ったのかは俺にはわからない。・・だけど
 それは・・『俺』がお前を必要だと思ったからなんだろう。禁術を使ってまで、お前を・・・サスケを助け
 たいと判断したから・・・そのためには、自分の命は惜しくない・・・そう思ったのかもしれない」
「・・・っ」
「だけど、俺は・・そう簡単に死ぬほど、・・・死ねるほど楽な生き方はしていない」
「・・・・・」
 ナルトは全ての表情をおさめ、どこまでも透明な蒼色の瞳でサスケを見返した。
「未来の俺は・・」






 ―――― 待っているんじゃないか?






「・・・ナルト」

 何かを思い切るように目を閉じたサスケは、円陣を睨み・・・・一歩踏み出した。











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・・・短いです