ただ・・・



















 結局、ナルトとサスケは二人ともイルカに一楽で奢ってもらった。
 昔のサスケならばうちはのプライドがどうのこうのと、イルカの好意など跳ねつけただろうに、成長
 して図々しくなったらしい。
 ナルトはサスケとサスケ(仮)の違いを喧嘩をしながら観察し、イルカに仲良くするんだぞと忠告され
 見送られた。


「・・・わざわざ俺を探しに来るなんて何かあったのか?」
 人目につかない場所まで来ると、サスケはナルトに話しかけた。
「お前に用なんか無いってばよ!偶々だってば!(もう少し待て、ここはまだ火影のじっちゃんの
 千里眼が届く範囲だ)

「・・・・・・。・・・・・・」
「だいたい一楽に一人で食べに行くなんて生意気だってば!!」
「・・・他に誰と行けと?」
「そ、そんなの知るかってば!」
 痛いところを突かれたと後先考えずに発言するナルトらしい”ナルト”。
 サスケの顔が僅かに悲しそうにゆがんだ。
「じゃぁなってば!」
 分かれ道でサスケに手を振り・・・例の森に来いと、声なく告げて別れた。















「・・・・・ったく」
 サスケ(仮)のことがバレないようにナルトはかなり慎重に事を進めている。
 何でサスケなどのためにここまで用意周到に準備しなければらないのかとうんざりする。
「シカマルじゃねぇけど・・・・めんどくせー・・・」

「ナルト」
 元の姿に戻ったサスケがナルトの背後に現れる。
 気配を完全に殺すことが出来るようになったらしいが、ここは”ナルトの”森だ。誰であろうと
 ナルトに知られることなく入ることは出来ない。
 振り返ったナルトはサスケが話し出す前に告げた。

「お前を元の世界に戻す」

「・・・!?」
 今更ながら、このサスケ(仮)は感情が顔に出すぎる、とナルトは呆れる。
 こんなのを本当に元の世界の”自分”は便りにしていたのだろうか?・・・不思議だ。
「馬鹿なっ!そんなことが出来るわけが無いっ!お前は俺と初めて会ったときに禁術だと言った
 だろう!・・・使えば死ぬとも!」
「ああ。まだ術は完成してなかったし、予測では”死ぬ”に9割の確立が出てたからな。・・・最も
 その可能性はまだ皆無では無いが」
「それならっ俺は無理に戻ろうなんて思わない!お前が・・・死ぬなど・・・っそこまでして俺は・・・
 元の世界に戻りたくなどないっ!」



「お前の気持ちなど、どうでもいい」


「!?」
 激昂するサスケとは反対にどこまでも静かでナルトは容赦ない。

「俺は、あんたが邪魔だ。監視など、カカシ一人で十分なんだよ」
「カカシ・・・?俺は監視など・・・・っ」
「あんたがその気じゃなくても、俺には同じことだ。お前には、力ずくでも元の世界に戻ってもらう」
 小さなナルトの体から、驚くほどの殺気がたちのぼる。
 サスケの筋肉が硬直し、背中に冷たい汗が流れた。


「何故・・・・何故だっナルト!お前は・・・”俺など”と言いながら、どうして自分自身の命を賭ける
 ようなことをするっ!死ぬということがどういうことかわかっているのかっ!?」


 ナルトが目を見開き・・・・声をたてて笑い出した。


「くっくっく・・はっはっは・・・っ!この里でこの俺にそんな馬鹿なことを言う奴が居るとはなっ!
 しかもお前が・・・っ!」
「ナルトっ!」

「黙れ」

 ナルトは口元に冷笑を湛え、目は怒りに鋭さを増す。

「・・・・俺は九尾の器として、物心つく前から里人に命を狙われ続けてきた。・・・死ぬということが
 どういうことか、だと?この里の誰よりも嫌になるほど知っているさ。死ぬというのはな・・・全て、
 その存在ごとこの世界から消滅するということだ。何も残らず、何も思わず、何も願わない。息を
 することも心臓を打つことも・・・・・偽ることもない。――――『無』になることだ」

「・・・・・。・・・・・・」


「お前なんかに・・・・わざわざ言われるまでもないっ!!


 激しいナルトの怒気に、呆然とするサスケの頬が切り裂かれた。



「・・・・ナルト」













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