匂い立つ高雅なる華
六
力づくでナーガを大人しくさせると宣言したナルトは、下忍たちを安全圏まで下がらせた。 彼等が居ては、はっきり言って邪魔でしかない。 ちなみに捕まえた霧忍は転がしたままだ。 「用意はいいか?」 背後で結界を張らせた中忍二人から、応との返事が返る。 彼等も最早『監視』という役目を忘れ、ナルトが命じるままに動いていた。 彼等にまかせずとも、ナルトには二つや三つ余裕で同時に術を発動することが可能だったが、そこまで見せてやることは無い。 畏怖ではなく、適度に敬意を抱かせるのが目的だ。 ナルトは片手にチャクラを集中させる。 『 螺旋丸! 』 ナルトの腕から放たれた光弾が、肉眼ではわからない透明な壁と衝突し火花を散らす。 「!!」 その様子を中忍と霧忍が息を呑んで見る中、ナルトの口元に笑みが浮ぶ。 そして、もう一発。 『螺旋丸!』 先ほどと重なる場所にもう一発の螺旋丸がぶつかり…硝子の割れるような音がしたと同時に周囲が閃光に包まれた。 「あ・・・あぁ・・・結界が・・・・」 霧忍が呆然と呟く。 そこには、30メートルほどの高さから落ちる滝が姿を見せていた。 ナルトの螺旋丸は、結界はもちろんのこと周辺を覆っていた木々まで吹っ飛ばしていたのだ。 「隊長」 「結界を維持しろ。これから出てくるナーガとやらを絶対に外に出すな」 「しかし・・・っ」 背後から掛けられた声に、振りむいたナルト。 その顔に浮んでいたのは、絶対的な自信に満ちた笑顔。 中忍二人の胸に、安堵と不思議な昂揚が満ちる。 彼は、『ドベ』で『悪戯小僧』の『うずまきナルト』では無い。 空に立ち込めていた暗雲から、稲妻が落ちる。 煌々と照らされた、立ち姿。 何者も、侵すことの出来ない強さと美しさを感じさせる金色の華のように・・・ 彼は。 彼の人は。 「ナーガはオレが相手をする。しっかり結界を維持しろ」 再度繰り返された命令。 「「はっ!!」」 彼等には、もう二言は無かった。 彼等の目の前で、滝壷から何かがゆらりと姿を現す。 鎌首を擡げたそれは、まさに『巨大な蛇』。 「上等」 ナルトは笑みを刻んだ。 |