匂い立つ高雅なる華
二
今回、中忍に昇進したナルトに与えられた任務はBランク。 小隊の隊長としての能力を試験されるため、任務遂行に宛がわれた人数はナルトを入れて9人。 下忍が6人、中忍が3人。ナルトを除く二人の中忍は試験官というわけだ。下忍たちもナルトがミスしたときに緊急対処できるようにとそこそこに忍歴の長い者を選んでくれたらしい。 至れり尽くせりな状況に思わず笑ってしまった。いったい誰がナルトにこの任務を選んだのか知らないが、余程信用が無いらしい。 「ナーガていう島の場所の確認は大丈夫かってばよ?」 ナルトに与えられる任務は、暗部の時も下忍の時も変わりなくいつも突然で緊急を要するものばかり。事前に打ち合わせもあったものじゃないが、普通はこうして任務の確認をするものだ。 ナルトの問いかけに集まっていた隊員たちが無言で頷く。 今回の任務の依頼人は火の国の大名の一人。水の国にある無数の島の一つ、ナーガ島から水を持って帰ること。ただの水では無い。島にある地下水脈から湧き出るその水には特別な効能があり、 水の国ではその成分を利用して色々製品を作っているらしい。その製品が結構いい値で売れるらしく、水の国が独占しているその水を忍に盗ませて成分を研究して、同じ製品を作り出してやろうと考えているらしい。殺伐とはしていないが、どろどろした任務である。 この程度の任務に小隊を派遣する必要は全く無く、人件費の無駄使いだとナルトは思うのだが試験に自分が文句を言うわけにもいかない。全く面倒極まりない。 「場所は大丈夫ですが、島までどうやって行くつもりですか?」 中忍の一人が問いかける。試験はすでに始まっているというわけだ。 「国が独占してるんなら、当然見張りとか護衛とかも居るってばよ。そんなところへ船なんて乗ってけ無いし、水面歩いても目立つ・・・だったら、泳いで行くしか無いってば」 「島民に扮して漁船で乗り込むというのは駄目でしょうか?」 「地図で確認する限り小さな島だし、元々無人島で島民は居ない。漁師の格好なんかして近づいたらそれこそ怪しまれるってばよ」 なるほど、と尋ねた下忍が頷いた。 中忍二人が意外そうな表情を浮かべている。彼等はドタバタしているナルトしか知らず、どうせまた何も下調べせずにやってくるのだろうと思っていた。だがその予想ははずれ、ナルトは中忍たちさえ把握していないような事実を指摘し、最善策を提案した。 伊達に中忍に昇格した訳では無いということか・・・そんな風に考えているだろうことが手に取るように感じられて、ナルトは僅かに口角を上げた。それだけで、繊細な容貌がどこか艶めき、忍たちは僅かに頬を染めた。 彼等はナルトが九尾の器であることを知っている。アカデミーでは落ち零れで、下忍になってもドタバタと騒ぎばかり起こしていた印象が残っている。だが、実際に顔を合わせたナルトは容貌も言動も昔とは何もかも一変していた。話し方はそのままでも、纏う雰囲気が全く違う。あの騒々しさが嘘のように落ち着き、余裕さえ漂う。悪戯小僧で生傷が絶えずいつもボロボロになっていた姿は、正規の忍服をまとい、白い肌と金髪が映えて、子供から青年へと変わる微妙な年齢の不安定ではあるが、繊細な美しさを知らしめている。 本当にこれはあの『うずまきナルト』なのだろうか。 彼等は任務所の打ち合わせをする部屋へと現れた彼を目にして、同じような思いを抱いた。 「それじゃ出発するってばよ」 ナーガ島にほど近い、他国からの観光も受け入れている島まで船で渡り、そこから泳いでナーガ島へ渡る。島につていからは臨機応変。見張りの人員把握、配置確認。捕虜を捕まえて水源の正確な場所を吐かせて、水を確保。速やかに撤収。 何事も起きなければ、呆気なく終わりそうな任務だった。 |