うずまきナルトには、一部の人間だけが知っている中忍とは別のもう一つの顔がある。
 五歳の頃から従事している”暗部”としての顔である。
 その仕事の激しさから、もって三年といわれる暗部において、ナルトは十年以上在籍している。
 その間に任務の失敗は一度も無い。全て完璧に遂行している。
 任務成功率100%とは、忍の世界では冗談か嘘のような話だが、残された報告書がその真実を
 証明していた。
 ”うずまきナルト”という忍の存在は、木の葉の里だけによらず他の里においても、ほとんど伝説と
 化していた。だが、その正体がナルトであることは火影と一部の忍だけしから知らない。
 ナルトは自身の正体がバレないように最大限の注意を払い、任務時には常に変化で姿を偽っていた。





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「ツナデ、任務外で何の用だ?」
 ナルト専用の鷹で呼び出しを受け、火影の執務室に現れたナルトは妙齢の麗しい女性の姿だった。
「あたしより美人になって来るな」
 若返りの術で実際より云十年、年を誤魔化している火影は不機嫌にナルトを睨んでそういった。
 ナルトはそれを鼻で笑い飛ばし、用事を促した。
「じじぃどもが煩いのよ」
 お前も十分ばばぁだろ、とは言わない。
「棺桶に片足を突っ込んだ奴らなど、あんたには何の問題にもならないはずだ」
「・・・全く、誰のせいで厄介なことになっていると思ってるんだか」
「俺が元凶であることは確かだな」
「わかってんのなら、何とかしなさいよ」
 こっちだって、いちいち愚痴に付き合うのも嫌になってきているんだ、と火影は訴える。
「ああ、近々何とかするつもりでいる」
 火影の肩がぴくりと動いた。
「・・・そう、近々・・・ね。随分長くかかったものね」
「全ての不確定要素を排除して、計画の成功率を限りなく100にする必要があった」
「・・・なるほど、それであたしはいつ頃楽隠居させてもらえるのかしら?」
「1月・・・いや、半月以内に」
「それはそれは・・・・楽しみにしているわ」
 火影は・・ツナデは、含みある笑みを美しい顔に浮かべる。
「用事はそれだけか?」
「ああ、はい。これ」
 ツナデはひらひらと薄い紙を無造作にナルトへ渡す。
「・・・石頭どもが何も言わなかったのか?」
「言わせないようにお膳立てしてたくせに、よく言う」
 ツナデが言い、ナルトは含みある笑いを浮かべた。
 
 ナルトの手にある1枚の紙。
 それはナルトの上忍昇格を伝えるものだった。






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「ナルト〜vv」
 抱きつこうとした男を紙一重で避けたナルトは、冷たい視線を男=カカシにではなく、火影に向けた。
「まさかこいつとペアの任務か?」
 いかにも不服そうにナルトはカカシを指差す。
「そう。あんたは嫌がるけど二人ペアの任務の効率が一番いいからね。そいつもナルトと一緒ならマジメ
 に仕事してくるし」
「俺は疲れるから嫌だ」
「ナルト〜〜」
 薄情なナルトの言葉に、カカシが涙を拭くマネをする。
「もう決めたの。はい、頑張ってきてね」
 依頼書を手渡され、素早く目を通すとナルトは手の上で灰にした。
 極秘性の高い、暗部の任務は里内といえど油断はできない・・・もっともカカシにそれを診せなかったのは
 ただの嫌がらせだろうが・・・。
「ツナデ、わかってるだろうが・・・」
「はいはい、わかってるわよ。これが済んだらこっちは当分お休みね」
「ナルトっ!?」
 カカシがどういうことだと、詰め寄るのを鬱陶しげに避けながら、ナルトは姿を消した。
 カカシが慌ててその後を追う。
 まるで妻に見捨てられた夫のようなカカシの姿に、見送る火影は”あれのいったどこがエリート忍者?”
 と今さらながらに嘆息した。









「ナルトっ・・お休みって・・・っ」
「うるさい。お前には関係ない」
「ある!ナルトが何かするつもりなら、俺は何だって協力する、させて!」
「いらん。お前がいると手助けどころか邪魔になるだけだ」
「〜〜〜〜っ!!」
 あまりといえば、あまりの言葉。けれど二人の間ではよくある遣り取りにカカシは悲しくおもいつつも、
 それでもナルトから離れられない自分が不思議でならない。

 (あ〜俺ってホント・・・愛しちゃってるんだよねぇ・・・)

 たとえ報われなくても・・・いや、報われたいのは山々だが・・・ナルトの傍に居ることを許されているだけで
 幸せだと感じるのだ・・・この人を人とも思わぬ最低との評判高い自分が。

「おい、さっさと済ませるぞ」
「はいはい〜vv」

 はたけカカシ。まるで従順な飼い犬のごとくである。









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ゆるやかに展開中・・・