−後編−







「・・・何だと?」
 人が殺せない?
「馬鹿な・・」
 そんな人間が忍などになれるわけが無い。

「そんなこと言っても本当のことだし?だいたい人を殺せなくても忍の仕事は色々
 あるんだし・・・大丈夫でしょ?」
「そういうもんかね〜」
 タオ=ルンの言葉に皆、納得しかねる表情を浮かべた。
「とにかく、あたしの役目はあなた方を目的地まで案内することだから。その後は
 お好きにどうぞv」

 いや、どうぞ・・・て。
 そんなに明るく言われても・・・。
 これから生死をかけた任務にかかるというのに(もちろん死ぬつもりはこれっぽっちも
 無いのだが)そんなに明るくされると気抜けしてしまう。

「じゃ、あたしについて来てね♪遅れた人は落第〜ていうことでそこで任務は終了」
 つまり、自分について来ることも出来ない人間に任務は遂行できないと言うわけだ。

「「「「「「・・・了解」」」」」」
 内心疑問を抱きつつもサスケたちは頷いた。






















 目的地・・そこがどこなのかは全くわからないが、その道程において忍たちは
 一言の言葉を発することは無かった。
 何故ならば・・・・

 タオ=ルンの足は上忍でも追いきれるかというほどに速く、無駄口でも叩いたもの
 なら速攻置いてきぼりをくらいそうだったからである。
 
「さて、と・・・・結構みんな頑張ってるみたいねv脱落者は・・・3分の1くらいかな?」
 立ち止まったタオ=ルンは息を切らせることもなく、背後を振り帰って人数を数えて
 いる。もちろん上忍たちは遅れることなくついてきている。
 しかし・・・僅かだが息はあがっていた。

「おい、ここが目的地なのか?」
 サスケお得意の睨みつけるような視線がタオ=ルンに向けられる。
「ん〜やっと半分くらい♪あともう少し頑張ってねv」
「・・・・・。・・・・」
 あまりにも軽い口調。いったいここまでどれほどの距離を走らされたと思っている
 のだろうか・・・・?
 
「何かあんた・・・」
 その時、アスマがぼそりと呟く。








女版カカシ・・・みたいだな」




「「「「「「「・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・」」」」」」






「え?いや〜俺、こんなに美人かな〜vv」
 それは違う。
 皆、内心でカカシに突っ込みつつアスマの言葉になるほど、と納得した。
 だが、一人だけ。



「そんな・・・女版カカシ、だなんて・・・・」

 タオ=ルンが顔の前で組んだ手をふるふると振るわせる。





ショック〜〜〜っ!!!

 本気で衝撃を受けたらしいタオ=ルンは目元にうっすらと涙まで滲ませる。

女たらしで手が早くて変人で変態の遅刻魔、取りえと言ったら忍の腕だけ
 カカシ上忍の女版なんて嫌〜〜っ!!」
 頭を左右に強く振り、嘆くタオ=ルン。

「おい・・普通あそこまで言うか?」
「・・・というか言えるか?」
「あはははは・・・・」
 皆がそんなタオ=ルンに呆気にとられる中、さすがのカカシも顔をひきつらせた。
 ほんのちょっぴしだが、殺気が漏れだしていたりもする。

 ・・・・さすがにここで仲間割れはまずい。
 不本意ながらも言いだしっぺであるアスマは責任を感じ、フォローを入れた。

「ま・・まぁ、いいじゃねぇか。強いんだし」
「・・・ホント?ねぇ、本当にいいと思う?」
「あ・・ああ」
 ずずっと顔で迫られてつ〜と冷や汗が流れおちる。

「じゃ、アスマ上忍は・・・『お前ってカカシに似てるよな〜』て言われても
 平気なの?」
 一瞬沈黙が落ちる。




「・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・すまん」
 アスマは素直に誤った。
「わかってくれればいいのv」

「・・・なぁ、紅。俺って実は嫌われ者?」
 ちょっと哀愁漂わせて同僚に尋ねてみたり。
「何言ってんの。今更でしょ」
 けれど救われるどころか余計に辛辣な一言が返ってきたのだった。

「俺って・・・・・・」
 カカシはしゃがみこんで、地面にのの字を書き始める。
 典型的な”すねてる”ポーズだ。



「んじゃ、問題は解決したところで」
 何の問題だ?・・というよりカカシは無視か?


「この先はちょっとトラップ多めだから気をつけてついて来てね〜〜v」
 再びタオ=ルンは明るく言い放った。






 最初の水攻めのトラップで何とかついて来ていた中忍たちが脱落した。
 そして、火攻め。
 矢攻めに幻影。
 

 一つ一つのトラップは大したレベルのものでは無かったがそれに対処している隙に
 立ち止まらず先を進むタオ=ルンの姿を見失った。



















 結局、最後までタオ=ルンについて来たのは・・・・・

「二人だけ、ねv」
 サスケとカカシの二人だけだった。
 サスケはかなりげんなりした顔をさらし、カカシは目元をひきつらせていた。

「・・・・いったいどういうつもりだ?」
 サスケは低くうなるような声でタオ=ルンを問い詰める。
 自分とカカシの二人だけでは当初、ナルトに告げられた任務を遂行できるわけ
 など無い。
「俺も君が一緒だというのならともかく、サスケと二人っきりで任務はね〜」
「それは俺のセリフだ」
「まぁまぁ、そのことなんだけどね」
 タオ=ルンは懐を探ると何やら紙を二枚取り出した。
 それを二人に渡す。



「・・・・・・『木の葉温泉』・・・」
「『一泊二日の旅♪』・・・・・・?」
 サスケとカカシがその紙に書かれている文字を棒読みした。

「いいでしょ〜v」
 何が?
 口にはしなかったがサスケとカカシの二人は思ったことだろう。

「ほら、さすがに木の葉の忍みんなに休暇あげるわけにはいかないでしょ?だから
 この試験に最後までついて来れた人だけに特別休暇をあげるということで・・・」





「「・・・・・・・・・試験っっ!?」」

 いつも仲の悪い二人が意気投合するなんて百年に一度あるかという椿事だろう。

「ちょっと待て!これは・・・任務じゃ無かったのか!?」
「・・・・・・試験てどういうことかな〜〜?」
 タオ=ルンに詰め寄る二人。

「え〜だって、試験だなんて言ったらさぼる人が居るかもしれないでしょ?だからv」
 そんな可愛らしく言われても誤魔化されるわけにはいかない。
「・・・・ナルトは・・・・当然、知っていたわけだよな?」
「もちろん、ご存知ですわv」






「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やられた」」
 がっくりと座り込んだサスケとカカシだった。
 その二人の様子にタオ=ルンが笑う・・・・・・『してやったり』と。

 その笑みに・・・・何かがひっかかった。
 サスケとカカシは互いに目で合図するとタオ=ルンの正面と背後にまわる。

「どうしたの〜??」
 




「・・・見事なばけっぷりだよな」
「本当〜ぜんっぜん、気づかなかったよ〜〜」

「な・・何のこと?」
 タオ=ルンに始めて動揺が見える。
「あ、これであたしの任務終わりだから〜〜」
 逃げようとしたタオ=ルンを背後からがしっとカカシが羽交い絞めにした。
「・・・・・っ!」
 その正面から企み顔のサスケが迫る。













「「逃げ場は無いぞ、ナルト」」




 じたばたとカカシから逃れようとしていたタオ=ルンは、やがて諦めたように力を
 抜いた。

「・・・・・・バレちゃったか〜〜」
 ぼんっと音がして、木の葉の隠れ里、火影の執務室に居るはずのナルトの姿が
 現れる。

「あははは・・・ということで!」
 笑って誤魔化し、その場を去ろう!


「・・・・なんてこと出来ねーんだよ」
「ダメだよ〜ナルト♪」
「う゛・・・・」
 二人とも顔は笑っているが全身から出ているチャクラが黒い。

「さて、悪いことした子にはお仕置きしないとね〜v」
「俺たちで遊んだ代償は大きいと思えよ?」

「か・・カカシ先生・・・サスケ・・・・」
 絶体絶命のナルト。













 その後、火影がどうなったのか。
 一泊二日の温泉旅行がどうなったのか。
 知る者は居ない。
 (・・・・怖くて聞けないとも言う)











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ナルトとなら温泉一緒に行ってもいいよね〜(Byカカシ)




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