−前編−








 木の葉の隠れ里。
 その中枢とも呼べるべき火影邸の執務室に。
 これまた上忍のうちでも選りすぐりが、火影たるナルトの前に揃って立っていた。

「今回の戦はここで止めないと世界中が巻き込まれる危険性がある。かなり広範囲に
 動かなければならないから戦を広げないためにであれば個々の判断に応じてあらゆる
 手段を認める。任務完了は戦の沈静化をもってする」

 誰も言葉を発しない。
 そして、ナルトは部屋に入ってきてからの厳しい表情を緩めた。


「だから、みんな頑張ってきてってば」
 にっこり笑って言えば、拒否できる者などこの里のどこを探してもいやしない。
 拒否なんてしようものなら村八分ならぬ、里八分。
 黒色の未来は確定したといってもいい。

 まぁ、とにかく今度の任務のメンバーといえば。
 カカシにはじまり、サスケ、アスマ、紅、、ネジ、キバ、シノ、シカマル、という実行部隊
 とそれを補佐する中忍部隊。
 総出で任務にあたることになる。
 長期になるか短期になるか・・果たして無事に戻って来られるか保障も何もないが
 誰も不満は言わなかった。

 ・・・・・・・いや、言う奴も居た。




「え〜、俺ナルトと会えなくなるのは寂しいな〜」
 場の雰囲気も考えず、ナルトと離れるのは嫌だとすねる、それでも上忍なのかと
 冷たい視線が突き刺さるカカシ。
「俺も寂しいってば。でも先生ならきっと大丈夫だってば
「・・・・・・・・・」
 カカシ、沈没。
「だが、ナルト。俺たちが皆出ていけば里の警備が薄くなる。せめて俺だけでも
 ここに残ったほうが・・・」
 理論派のサスケ。だが、ナルトの傍を離れたくないというのはカカシと五十歩百歩。
「大丈夫、サクラちゃんとヒナタが居るってば。ね?」
 ナルトの視線の先をサスケが辿れば、そこには・・・『何か文句ある?』と視線で
 語るサクラとヒナタが立っていた。
 情報部を牛耳っている二人に逆らってタダで済む筈がない。
 いつの世でも女性は男性より強いのだ。


「じゃ、任務の成功を祈ってる!皆、早く帰ってきてってばvv
 途端に上忍たちの姿は我先にと消えた。

「ナルト・・・あんたって結構策士よね・・・」
 サクラが呆れたような視線でナルトの傍に近寄ってくる。
「うーん・・・・気のせいだってば!」
 へへへと無邪気に笑うナルトの笑顔を、どう見ても策略を巡らせるどころかそんな
 考えにさえ及びそうもなく見える。
 けれど、侮ることなかれ。
 こう見えてもナルトは火影なのだ。
 名実ともにナンバーワンの忍。見たまんまなわけがない。

「ま、いいけどね。それより、本当にやるつもり?」
「うんっ!サクラちゃんとヒナタには迷惑かけるけどよろしくってばvv
「・・ま、まかせて、ナルト君・・じゃなくて火影様」
 ぽっと頬を染めて力弱く頷くヒナタは未だにナルトに憧れているらし。
「ナルトでいいってば!」
 さらにヒナタの顔が赤くなった。
「・・・・・」
 そんなヒナタにサクラはため息をつきつつも、結局同じようにナルトに甘くなって
 しまう自分なのだと諦めまじりに思うのだった。






























 上忍部隊と中忍部隊は何班かに分かれて砂の国に潜入した。
 砂の国の城下街のある屋敷が第一の合流地点になっており、徐々に忍たちが
 集まりはじめている。

「お、早かったな。サスケ」
「・・・あんたが遅いんだろ」
 相変わらず遅刻魔のカカシと時間厳守のサスケは互いの顔を見つけて声を
 かけあう。
「あとは来てないのは・・・」
「紅とキバのところだ」
 数年前から少しも変わらない髭面でアスマがひょっこりと現れる。
「紅なら途中で会ったからすぐじゃない?」
「キバは俺が見かけた。もう着くころだろう」
 その数分後。当人たちが到着した。

「・・・で、ここで何があるんだい?」
「火影は人を待てと言っていた」
「人、ねぇ・・・」
「地獄への水先案内人てわけだ〜」






「地獄でごめんなさいねv」






「「「「・・・・・・・・・っっ!!?」」」」
 上忍たちの背後からかかった声に、皆が驚いた。
 上忍ともなれば世間話をしていても回りに気を配ることを忘れない。
 それをかわして全ての上忍たちに少しも気づかせなかった。その当人。
 ただ者であるはずがない。

「はじめまして、かな?」
 肩のあたりでスッパリと切り落とされている黒髪が艶やかに揺れる。
 にっこりと笑った顔は大して美人だとも思えないが不思議と人を惹きつける
 魅力を持っていた。

「・・・・何者だ?」
 サスケが問う。
 他の上忍たちも隙無く相手に構えている。
「そんなに警戒しないで。あたしも木の葉の隠れ里の忍なのよ」
 女は木の葉のマークの額宛を取り出し、見せた。
「それから、これは火影さまから預かった書状」
 女が差し出すそれには、火影の側近であるサスケにしかわからない印がついていた。
 

「・・・・・で、あんたは何だ?」
 サスケが書状を開きつつ女に問うた。
「とりあえず、信用してもらえたみたいね」
「これは火影にしか作れない印だからな。額あてなどいくらでも偽造できるが・・・」
 サスケの嫌味もこたえないのか、女は明るく笑う。
「あたしは、そちらのお兄さんが言ったように現場への案内人。あなた方を送り届ける
 ことが任務なの。現場は結構わかりにくいところがあるし・・・不慣れな地だから」
「ふん」
「あー、俺はカカシ。あんたの名前を教えてほしいなぁ」
 普段、ナルト以外に興味も無い、視線も向けない男の意外な行動に皆が息をのむ。
「私は、木の葉の隠れ里の中忍。タオ=ルン」




「「「「「「・・・中忍っ!?」」」」」」




「んー、そんなに驚くことかなぁ?」
「おいおい、あんた実力は俺らとそう変わらねーだろう」
「そうよ!全然気配を感じなかったわ!」
「・・・・・虫も・・・」
 中忍に不覚をとったのか・・・。
 なかなかショッキングである。

「確かに、実力はあなた方と変わらないかもしれないけど・・・。あたしには致命的な
 弱点があってね・・・上忍にはなれないの」
「・・・・弱点?」
「あたしは・・・・・・・・・」











「人を殺せないの」
 タオ=ルンと名乗った女は初めてサスケたちから視線を逸らした。











後編
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ああ・・また続きものになってしまいました(涙)
しかもオリキャラ・・・。
次でまとめられるんだろうか・・・・。




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