後編−






「・・・・っ!?ナルトっ!!」
「心配する必要は無い」
 慌てるサスケに淡々と告げたのは、我愛羅。
「どういうことだ・・?」
 サスケはぎりりっと殺気を漲らせて我愛羅と距離をとる。
「全隠れ里会議の場に出席できるのは五影と各里の長のみ。それ以外の者の
 入室は一切許されない。その場に術で案内しただけだ。会議が終われば帰って
 来るだろう」
「・・・それを信じて待っていろと?」
「別にお前が信じようと信じまいと俺には関係ない」
 そのまま我愛羅は口を閉じた。
「・・・・・」
 サスケはちっと舌打ちする。
 我愛羅の無表情の仮面の下には幾多もの血を求める好戦的なもう一つの顔が
 ある。それこそがこいつの本性。

「・・・・それならここで待たせて貰う」
 宣言したサスケを我愛羅はちらりと見、何も言わずに視線を戻した。
 是、ということなのだろう。


























 その頃、ナルトは会議の部屋に移動した途端に・・・・・・・

「火影〜〜っ!!」
 風影の熱烈な歓迎を受けていた。
「な・・・なな、何だってば!!」
 状況を把握する間もなく風影に抱きつかれ、締め付けられてナルトは目を
 白黒させている。
「おい!年甲斐もなく火影にくっついてんじゃねぇぞ!」
 ナルトにしがみつく風影を引き離したのは水影だった。
「貴様こそ私とそう変わらないでしょう・・・若作りが激しいだけで・・・」
「何を!」
 風影と水影の間に何とも言えないオドロオドロシイ念が漂いはじめる。

「火影、お久しぶり」
 呆然とその様子を見守っていたナルトに五影や他の隠れ里の長たちが話しかける。
「久しぶりですってば〜」
 その各々にナルトはにこやかに挨拶をかえしながら・・・最後に視界に入った
 一人は露骨に無視する。
「ナルト君〜、随分な態度ねぇ?」
 その人を不快にさせずにはいられないねっとりしたしゃべり方と声音。
 
 ・・・音の隠れ里長。『大蛇丸』

「ふーんだっ!傍に寄るなってば!」
 そのすねた子供のような言い分に長たちは苦笑する。
 前回の時と同様の反応なのだ。
 どうやらこの二人の間には埋め切れない深い溝があるらしい。

 というわけで、友好のために集うこの場所でもナルトの反応は黙認されている。

 
 さて、大蛇丸から露骨に距離を取り、最も離れた席へとついたナルトは
 ”さぁ、はじめるってば!”と議長でないにも関わらず会議を進行していく。
 その掛け声を合図に睨みあっていた風影も水影も不承不承席についた。

「では・・・今回の会議の議題だが」
 改めて、議長である風影が口を開く。
「ん?何??」
 ナルトが興味津々と相槌を打つ。
 その首を傾げてぱちくり、と瞬きする様子は風影に議題を忘れさせてしまうほどに
 愛らしい。

 何で、男なのにこんなに上目遣いが得意なんだ!とか。
 こんなに可愛くて里の長が本当に務まるのか!?なんてことは、『普通』に非ずの
 忍・・しかも長にまでなる・・には全く問題にはされない。

 良くも悪くもナルトが火影となり、会議に出席するようになったおかげでそれまでは
 恐ろしく暗澹たる空気が立ち込めていた全隠れ里会議も明るくお気楽になった。
 もちろん、誰もそれを咎めようとはせず。それどころかそんなナルトを眼福とばかりに
 観覧するばかり。
 今や、全隠れ里会議は『うずまきナルト鑑賞会』と化していた。
 こんなことサスケやカカシにでも知られればたちどころにナルトは外出禁止と
 なるところだが、如何せん肝心の情報源であるナルトが無自覚なので・・・。
 

「前回、火影殿が提案した『全隠れ里対抗、世界横断ウルトラ忍術バトル』の開催に
 ついてだが・・・」 
 ナルトよ・・お前はいったい何を提案しているんだ・・・・?
 しかも、そんなとんでもない企画について真面目に話し合う長たちって・・・・。

「え!?本当にやってもいいのかってば!?」
 ぱぁぁ、とナルトの顔が輝く。

 ああ、可愛い。本当に可愛い。
 薄暗く、じめじめして、陰湿で、殺伐とした忍の世界に咲いた一輪の花。
 その満点の笑顔を見れるだけで、この会議に出席した甲斐があるというもの。
 ああ、隠れ里の長になって本当に良かった。
 俺よ、努力と自分の才能に心から感謝します。

 ・・・・・と各々心の中で、涙を流す。

「さすがに我々は長の任務を放ってそれにばかり関わってはいられない。ということで
 各里で何名か実行委員を選出し、彼らに具体的な進行はまかせるというのは?」
「「「「「・・・・・・・・」」」」
 不平の言葉が漏れないのは異議なし、といったところか。
「委員たちが集まるのは中立地帯が良いでしょう。ああ、波の国ではどうでしょう?」
「さんせーいっ!波の国ってばいいところだって!」
「火影の賛成も得られたということで、では決定と致します。えーと、集合時間は・・」
「半月後でいいんじゃねぇの?」
「では、そのように」

 とんとん拍子に話は進む。
 ・・・・・進んでいいのだろうか?


「それでは、今回の『全隠れ里会議』は閉会と致します。皆様遠路わざわざごくろう
 さまでした。なお次回の開催地は雲の国となっております。雷影殿、引継ぎを
 お願いいたします」
「了解」
「んーっ!終わったぁ!みんなご苦労さま〜!!」
 背伸びをして立ち上がる、ナルト。
 うーんと腕を伸ばしたはずみに、ちらりと露になった腹部に視線が集中する。
 ・・・・が、すぐに隠れてしまったが。
「んじゃ、俺は人待たせてるから〜!また次回によろしく!」
「「「「あ・・・・」」」」
 そんなナルトの無意識の誘いに目を奪われていた一同はナルトに声をかけそびれ、
 気づけばナルトの姿は消えていた。































 そんな和気藹々とした会議が開かれている中、その正反対の雰囲気に包まれて
 サスケと我愛羅は黙々と会議が終わるのをひたすら待つ。
 待って、待って・・・・待ち続け。
 そろそろサスケがキレるか?という頃。

 我愛羅が立ち上がった。
 思わず身構えるサスケ。

「来る・・・」
 何が、とは問うまでも無いだろう。
 ひゅーっと一陣の風が吹いたかと思うと何かがすとーんと上から落ちてくる。
 ・・・・・・・ナルト、だ。

「ナルト!!」
「あーサスケ!ただいまーっ!!」
 急降下しつつも、それをいっこうに感じさせない笑顔で手を振るナルト。
「・・・ナルト!!」
 たった一時間弱とは言え、ナルトと離れていた時間の何と虚しかったこと。
 サスケはナルトの姿を視界に入れて感極まった。
 ・・・・・すでに『ナルト中毒』。しかも末期症状まで進攻している。

 そんなサスケが落ちてくるナルトを受け止めようと手を広げた先で、ぶわりと
 砂が舞う。とたんに落下速度が落ちて、サスケの計算した落下地点とは
 数メートル離れてしまう。
 そして、そこには狙い違わず我愛羅がいたりするのだ。

 我愛羅は無表情なまま、腕の中に落ちてきた・・・かなりの速度でGもとんでもなく
 かかっていたはず・・・を軽く受け止めた。

「あ・・ありがと!我愛羅っていい奴だな!」
「だ・・騙されるんじゃねぇっ!ナルト!!このボケっ!!」
 悔し紛れに放ったサスケの言葉にナルトはあっかんべーと返事をかえす。

 なんて可愛いすぎる反応。
 ナルト、お前は絶対忍じゃない。

「サスケのばーかっ!せっかく早く帰って来たのに!もういいってば!我愛羅。
 風の国を観光案内して欲しいんだけど・・・いい?」
 必殺、ナルトのおねだりポーズに勝てる者はいない。
 無言で無表情で頷く我愛羅は内心、かなり焦っているに違いない。
「やった!俺!お腹減って死にそうなんだってば〜っ!美味しいラーメン食いに
 行きたいな!我愛羅・・・知ってる?」
 もちろんだ、と頷く我愛羅。
 いつもより更に無口なあたり、我愛羅の動揺ぶりがわかるというもの。
 だが、久しぶりに里から出て上機嫌のナルトにはそんなこと目に入らない。
 頭の中では「えーと、イルカ先生のお土産は〜・・でサクラちゃんは・・・・」と
 お買い物モードに突入。


「おいっ!こら!俺を無視するな!!」
 慌てて二人の後を追うサスケ。
 そして三人の姿は雑踏に消えた。










 結局、ナルトが木の葉隠れの里に帰還したのはそれから一週間後のことだった。
 










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途中から自分でも何を書いているのか・・
とにかくナルトはアイドルなんだよ〜と
お知らせしたかったと(笑)

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