−前編−
里の責任者として火影であるナルトは通常の任務で出かけることは無い。 しかし、年に一度開催される『全隠れ里会議』にだけは出席しなければならない。 今回の会議の開催地は・・・・・。 「今年は砂の国なんだってば。去年は火影になってすぐで始めてだったからすっげー 緊張したけど今年は大丈夫だってば!」 砂の国が開催地ということで、会議の進行役を務める風影からの書簡に目を 通しつつナルトが目の前に並んだ、顔なじみの忍たちに笑いかけた。 ナルトの一番傍に立っているのは、上忍で火影補佐のサスケ。 その右に順にサクラ、カカシ、イルカ、ネジ、シノ、キバ、ヒナタ、と錚々たる 顔ぶれが並んでいる。 木の葉隠れの里でも実力伯仲の上忍たちで、これだけが揃うのも稀なことだろう。 「だが、護衛は必要だろう?」 サスケが何人ほどつけるか、と首をひねる。 「やっぱ箔をつけるためにも2ケタはいるな」 好戦的なキバらしい意見だ。 「え?護衛なんて必要無いってば!会議中はどこの里も中立も守らなくちゃ いけないんだってば!」 「会議中は、な。終われば問題無い」 冷静な意見はネジだ。 「でもっ、風影がそういう警護は責任持ってさせて貰うって言ってたし・・」 「『言って』た・・・・?いつ?」 サスケの目がきらりと光る。 「え・・・この間の会議の時だけど?風影ってばすっげーいい人で時間があれば 砂隠れの里も案内してくれるって言ってたってば!」 『案内されてどうするっっ!!!』 一同は心の中で叫んだ。 各忍の里は”隠れ”と名称にあるように、他の里の忍が出入りすることなど 伝令と試験を除けば、在り得ようはずがない。 「ナルト、やはり護衛は必要だと思うな。一人だと俺は心配だよ」 どさくさ紛れに一人、好印象を与えようと姑息な手段を繰り出すカカシ。 「大丈夫だってば!俺は火影だってば!」 「で、でもナルト君。つ、強いけど・・あ、危ないってこともあるし・・・」 「ふえ?」 強いのに何故危ないのか?・・・ナルトは矛盾したヒナタの言葉に首を傾げた。 確かに、他の隠れ里の長に自分の里を案内してやると言われて疑いもなく 素直に喜ぶナルトはは色々な意味で危ないことこの上ない。 ・・・・自分たちにとって。 一同はヒナタのもっともな意見に大きく頷いた。 「とにかく、ナルト。一人では何かと不自由だし2ケタはちょっと多いが何人かは 連れて行って欲しい」 アカデミーからの恩師であるイルカにそう言われては、ナルトも考える。 「ん〜・・・だったら、サスケと行くってば!」 「「・・・・・・っ!!」」 そっと喜色を浮かべた者1名。落雷にも似た衝撃を受けた者6名。 「な、何でサスケなのかな〜」 にこやかに、しかし目はどこまでも真剣なカカシ。 「だって、サスケって留守してろって言ってもついてきそうだし・・・」 見事な洞察力。 「イルカ先生は授業があるし、ネジやキバやシノは任務が入ってるってば。 サクラちゃんとヒナタは女の子で危ないことはさせられないってば!」 「・・・・一応、あたしたちも忍なんだけど・・・」 「俺が嫌なんだってば!」 ナルトは女子供に対して、酷く優しい。 サクラやヒナタにとってそんなナルトの優しさは嬉しくもあり、悔しくもある。 「俺は?」 「カカシ先生には、俺の代理をしてもらわらないとダメだってばv」 「・・・・・・・・」 狙っているのか、天然なのか。そんな可愛らしい顔で言われては断れない。 カカシは心の中で涙を流しつつ、火影代理を引き受けることになった。 ある意味、ナルトは人使いが上手いのかもしれない。 「ふん、安心しろ。護衛は俺一人で十分だ」 偉そうに宣言したサスケに皆の殺意が高まったのは言うまでもない。 そして舞台は砂の国に移る。 木の葉の国の隣国、砂の国。 その名の通り、国土の半分以上を砂漠が占める。 それでもこの豊かさは、鉱山資源の豊富さと手工芸品の細工の見事さにある。 簪でも織物でも砂の国産であれば、桁が一つは違う。 石造りの家々、商家が立ち並ぶ都は、木の葉の国とはまた違った趣ながら 老若男女、さまざまな人間が入り混じり賑わっていた。 「うわーっ!これってば旨そうだってば!あっ!これもっ!・・・あぁっこれも!!」 大通りの両端にずらりと並んだ屋台をはしごしていくナルト。 誰がどう見ても田舎からぽっと出の『おのぼりさん』以外の何者でもない。 これが狙ってやっているのならたいしたものだと感心できるところだが・・・・ おそらく、目の前のナルトは99パーセントの確立で「地」であることは間違いない。 「・・・・・・いい加減にしろっ!」 しばらくは、滅多に里の外に出ることもないナルトに大目に見ていたサスケだったが さすがに、それが1時間になろうとすれば我慢も限界を迎える。 「いったい何しに来てるかわかってんのか!?」 「・・・わかってるってば!ったく、サスケは固いんだから。ほらリンゴ飴旨いってば」 にゅっと差し出されたそれを反射的に受け取る。 思わず受け取ってしまったそれをサスケは憎憎しげに睨みつけた。 「またそんな怖い顔してー、眉間に皺が出来てるってば」 誰のせいだ、誰の! 内心で叫び出したいのを何とか押さえる。 『・・ここは砂の国。自分たちの正体をばらすわけにはいかない』 そう念じて。 「・・・会議の場所に行くぞ」 「えーっまだ時間あるってば・・・・て、わかりました!行けばいいんだろ!行けば!」 サスケの鬼気迫る顔に鈍いナルトもさすがに何かを感じたらしい。 ぶつぶつ文句を言いながらも記憶しているその場所へと歩き始めた。 「えーと、二つ目の角を曲がって・・・赤レンガの家を右・・・それからまっすぐ歩いて 突き当たりを右・・・・て、あれ?」 「・・・行き止まりじゃねーかよ」 記憶した通りに歩いてたどり着いた先は見事に左右壁に挟まれた袋小路。 「え、でも間違ってないってば・・??」 他国で迷子になってはいけないと、これでもナルトは何度も確認したのだ。 サスケとナルトは顔を見合わせ、したり顔で頷きあった。 「・・ということは」 「・・ということだってば」 ナルトとサスケは右の壁に向かってチャクラを放出した。 途端に消えうせる壁。 チャクラで壊したわけではない、そこには元から壁など無かったのだ。 あるように見せていただけ。 「・・・・名前を」 その壁の向こうには見知った顔が立っていた。 「我愛羅っ!?」 「我愛羅だっ!久しぶりだってば!」 それはかつて、中忍試験で戦ったことのある我愛羅だった。 背も伸び、細身ながらしっかりとした体つき。 しかしながら無愛想さは昔通り。 ・・・・どうやら昔と同じく砂を纏っているらしい。 「名を言え」 「言わなくても見ればわかるってば」 けれど我愛羅は納得しない。 「木の葉の国火影、その補佐サスケ」 サスケはナルトを背後にかばいつつ名乗りをあげた。 「・・・・・久しぶりだな、うずまきナルト。うちはサスケ」 「我愛羅も久しぶりだってば!元気にしてたか?」 「してなければここには居ない」 もっともだ。 「しかし、まさか本当にお前が火影になるとはな」 「へへっ!頑張ったんだってば!」 満面に笑みをたたえて喜ぶナルトに、我愛羅の表情が僅かに緩んだような 気がしたのは・・・・・気のせいだろうか。 「うちはサスケ。お前は手配帳の一番最初に名が挙がっているぞ」 「・・・・どうも」 サスケの気の無い返事に構うことなく、我愛羅はナルトに手を差し出した。 「風影が待っている。案内しよう」 「ありがとうってば!」 ナルトが我愛羅の手を取った。 その途端、砂嵐に包まれる。 「・・・・っ!?」 反射的に腕で顔をかばったサスケ。 その一瞬の間にナルトの姿は消えていた。 |
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どうしてこう・・長くなるんでしょうねぇ・・・