血盟 1


 憎み 恨み 殺せ


 そして


 愛せ


 
 
 
 
 
 
 
 
 
  「うずまき隊長、隊員全員無事に帰還致しました」
「ご苦労」
 無表情ではあったが、美しい顔にのせられた労いの言葉に報告の忍は僅かに頬を染めた。





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 うずまきナルト。17歳。
 中忍に昇格してから5年が経つ。その歳月を長いとみるか短いとみるか、人それぞれだ。
 実力ある者は中忍はただの足掛けにして、すぐに上忍へあがっていく。
 また、中忍以上の実力を持っていても、甘んじて中忍のままでいる忍も存在する。
 前者からすればナルトは無能と呼ばれ、後者には仲間と呼ばれるものだろう。
 しかし、それをすぐに是、とするには疑問となるものがナルトにはあった。

 中忍に昇格した忍には、その最初の任務において本当に『隊長』としての能力があるかどうか判断する ための任務が与えられる。Cランクでも下のほうの任務で、チームの中忍には忍歴の長い者達が補佐に つき、その新中忍に助言や忠言を与え、また中忍としてやっていけるか評価を下す。
 多くの下忍あがりたての中忍は初めて与えられた『隊長』という役に、右往左往するのが常で、補佐たち のフォローがあってその役を何とか遂行することが出来る。
 うずまきナルトの場合も同じように『隊長』としての任務が与えられた。
 中忍たちの前評判では、アカデミーの頃の”落ちこぼれ”というレッテルと、下忍の頃の落ち着きの無さ からまずもって『まともに』任務を遂行することは出来ないだろうというのが優勢だった。
 しかし。
 蓋を開けてみれば、ナルトは補佐の中忍たちの助言も忠言も必要とせず、隊長としてなすべきことを 綿密に計画し、チームの中忍に的確な指示を与え、いとも容易くその任務を遂行してみせた。
 その有能さは中忍たちを感嘆させるに十分で、これはすぐにも上忍にあがっていくものと誰もが思った。
 事実、ナルトもすぐに上忍昇格試験を受けることになった。
 だが、ナルトはその試験に落ちた。
 さすがに上忍へのハードルは高いのか、と一度目はナルトをなぐさめた仲間たちも、それが二度目、 三度目・・・幾度も重なり、同期の仲間たちが上忍へ昇格していく中、うずまきナルトだけが中忍のまま 上忍とはなれないことに、周囲の誰もが『何か』を感じとっていた。

 うずまきナルトが上忍にはなれない、その『理由』に。


 





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「では、これより里へ帰還する」
「はっ」
 うずまきナルトの噂を思い出していた中忍は、僅かに応えが遅れる。
「どうかしたか?」
「いえ・・・何でもありません」
「それならばいい」
 微笑を浮かべたナルトの蒼眼に、中忍は見惚れた。

 美しく、有能な忍。
 今や、うずまきナルトに心酔しない中忍は皆無だ。
 上忍の中でもナルトを特別視する者があるという。
 今回の任務も隊長がナルトだと決まり、周りの者で羨ましがらないものは無かった。

 だからこそ、うずまきナルトに関する噂は中忍たちの間で燻っていた。
 うずまきナルトが上忍になれない理由。その『噂』、それは。







 里の上層部がわざと、そうしているのでは無いか・・・・というものだった。



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