Never Ending Story 4.出会い



「これは世界の大事だ。ワシが間に合わなかったときのために、ホビットたちを裂け谷に導いてくれ」
「わかりました。しかし……私は彼らを知らない。見分けることが出来るでしょうか?」
「心配は無用だ。外界には彼らしかホビットはおらぬ。会えばすぐにわかろう」
「名前は、フロド、でしたね」
「その名は名乗らぬようにと言っておる。聡明な子だ、慎重に振舞っておるだろう……頼んだぞ」
「はい」






 ひょんなことから、二人旅であったものが四人に増えたホビット一行は黒の騎手たちの追跡を受けながらも ガンダルフとの約束の場所である『踊る子馬亭』へと無事にたどり着いた。
 冷たい雨がふりしきる中、辿り着いた宿屋兼酒場。小さなホビットたちは大きな人の中に紛れ込む。
 約束したはずのガンダルフは現れず、フロドは食事をとりながら途方にくれていた。
 いったいこの先、どこへ行けば良いのか検討がつかないのだ。

「フロド様」
「ん?」
 隣に座るサムがひそやかに問い掛ける。
「気づいていましたか?……あそこの、ずっとフロド様を見てます」
「……。……」
 黒いローブを目深にかぶり、顔を伺うことは出来ないが……ずっとこちらを向いている。
 店主に聞くと、『さすらい人』と言うらしい。得体の知れない連中だと教えてくれた。
 フロドの心に不安が宿る。
 頼れる人も不在で、災いある品は胸元にゆれている。
「……ド……フロド様っ」
「!?」
「大丈夫ですか?お顔色があまりよろしくないですが」
「ああ、大丈・……っ」


「フロド・バギンズ。ああ。知ってるさ!俺の従兄弟さ!ほら、あそこに居るだろ?」


 遠くで大きい人たちに囲まれたピピンがフロドを指差した。
 視線が集まる。
「!?」
 一気に体温が下がった気がした。
「っピピンっ!」
 これ以上余計なことを話させないうちに、とフロドはピピンのもとへと駆け寄る。
「あ……」
 足が滑った。
 胸のポケットにあった指輪が……フロドの目の前に踊る。
 そして指に……

「ああ……っ」


 姿が、消えた。










 アラゴルンは、ホビットが姿を消すのを目にして慌てて立ち上がった。
 ガンダルフは慎重に振舞っていると言ったがとんでもない。いや、確かに指輪所持者のホビットは慎重に 行動していた……しかし、聞いていた以上にホビットの連れが増えている。
 アラゴルンは急いでホビットの消えたテーブルに近づくと、居るらしいあたりに手を伸ばし部屋へと引きずり 込んだ。

「アレの扱いには気をつけることだ」
「……あれって、何」
「指輪だ」
 指輪保持者の顔が緊張に固まった。
「あなたは、誰?」
「私が怖いか?」
「……」
 青色の瞳が不思議そうにアラゴルンを見つめる。
 その瞳の色……アラゴルンの記憶を呼び覚ます。それは……いつだったか、ホビットの里で見た、あの 美しい青、その色だった。
 
 (――― 彼が、指輪保持者)

「君を追っている奴らはもっと怖いぞ」
 内心の驚きを封じ、アラゴルンは彼に告げた。
「……」
 とまどう彼をよそに、扉の外に気配を感じたアラゴルンは剣を引き抜いた。

「!!」
「フロド様を離せっ!」
 飛び込んできたのは、彼の連れのホビットたちだった。
「さもないと痛い目にあうぞっ!」
 ――― うかつではあるが、彼らは仲間思いであるらしい。

 アラゴルンは剣を引き、彼等を黒の騎手から匿うために、宿を出た。



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