憂愁のセレナーデ 7
すぐさま病院へ運び込まれた秋生は精密検査を受ける。
その間に、四聖獣たちも集まってきた。
「どういうこと!?」
セシリアがビンセントに詰め寄る。
「今精密検査を受けられているところだ」
「ああ、そう!だから私がっ」
「朱雀、ここは病院だ。静かにしろ」
「……っ!!!」
無言で怒りを発したセシリアは、それでも立ち去ることなく廊下をいったりきたりする。
VIP専用のこの階には精密検査のために必要な機材が全て揃えられているが、外側からはどうなっている
のか全くわからない。
「状況を説明しろ、ビンセント」
ヘンリーが唸るように問う。いきなり連絡が入ったかと思ったら、『ミスター・工藤が入院された。すぐ来い』と
だけ告げて何があったか聞くまもなくきられたのだ。
「午後に、ミスター・工藤のマンションに訪れたときにはすでに寝室に眠るように横たわれていた。声をお掛け
したがいっこうに反応されず、こちらへお運びした」
普段ならば青龍の力で多少のことは治癒できただろうが、今の黄龍の気が全く感じられないという異常事態
ではそれがどんな影響を及ぼすかわからない。
「黄龍殿が戻られたぞ」
玄冥の言葉に、残る三人がすぐさま反応し慎重に運ばれるベッドの傍に侍った。
そのまま部屋まで同道し、担当医師を取り囲んだ。
全く年も職業も身分もばらばらな四人に、息を呑みつつ、とりあえずビンセントに向けて説明を始めた。
「原因は不明ですが、工藤さんはいわゆる仮死状態にあるときと同じような状態にあります」
「具体的には?」
「呼吸が一分間に3,4回、脈拍も三、四十回と極端に少なくなっています。これは中心体温が、32度以下に
なると稀に現れる反応なのですが……工藤さんの体温は36.2分と平常の体温です。呼吸と脈拍以外には、
他の臓器も全く問題なく動いています、脳も……まさに驚異的というしかありません。これまで多くの患者を診て
きましたが……こんな状態は初めてです」
「だーっ、もうまどろっこしいわね!そんなことどうでもいいのよ!秋生は治るの、治らないのっ!?」
治らない、と言おうものなら取って食われかねない勢いで迫られた医師は、脂汗をにじませて後ずさる。
「原因がわからないことには、治療方法の選択も難しく……」
医者は匙を投げた。
重苦しい沈黙が病室にたちこめる。
白いベッドに横たわる秋生の枕元には、ビンセントが立ち、セシリアは部屋の中を歩き回っている。
ヘンリーも落ち着かない様子で時折懐に手をしのばせるが、禁煙であることを思い出し舌打ちする。飄々と
している玄冥でさえも、ちらちらと秋生に視線を走らせては溜息をつく始末。
「……少しは落ち着け」
「これが、落ち着けるわけないでしょっ!!」
「どうするんだ、ビンセント?」
問われたビンセントは、静かに眠る秋生の顔を見ながら目を閉じた。
もう、どうすればいいのかはわかっている。
原因と元凶は同じもの、解決方法もそこに帰る。
「 黄龍殿」
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