脳裏を駆け巡る

思い出という名の








傷み















 二度と近寄ることはないと思ったこの場所に。
 
 知らず足が向いたのは”偶然”だったのか?


 それとも・・・・・・・・・・





 







 天界の変貌しない姿は、いつまでも己に”罪”を思わせ、どこまでも穏やかな場所は
己にとって苦しみの場所だった。
 ただ一つの己の安らぎは呆気ないほど容易く奪われ、残るのは中身のない骸。


 世界は灰色・・・・・・いや、闇だった。










 その闇に・・・・・・・色が浮かんだ。








 色の名は―――――――――――――『孫悟空』




























 鈴麗の面影を残す花畑で見つけたその色は、無邪気に笑い、己を見つめた。

 両目に持つのは己と同じ金リ眼。
 強烈な輝きを持つその瞳は己が失った”生命力”に溢れていた。

「誰だ、お前は?」
 全てのものに無関心だった自分が心動かされた。


「オレ?オレは悟空!!」

 何がそれほど嬉しいのか、悟空と名乗ったその生命は満面に笑顔を溢れさせた。
「アンタは?」
「オレか・・・・・オレは異端なるもの。禁忌たる存在」
「イタン?キンキ?・・・・それがアンタの名前なの?」
「・・・・・いや」
「違うの?じゃあ無いの?オレもちょっと前まで無かった。でも・・・でもね!!金蝉が
つけてくれたんだっ!!」
「金蝉?・・・お前は金蝉の縁のものなのか?」
「ゆかり?それ何?」
「親や兄弟・・・・そんなものなのか?」
「ううんっ!!オレは・・・え、と・・・大地の気があつまってうまれたっていってたから
金蝉は・・・・うーん、と・・・天ちゃんが”ほごしゃ”だって」
 己の質問に一生懸命に答える幼子。
 
 その姿は再び、己に”過去”を思い出させた。


「どうしたの?」
 脳裏に浮かぶ過去の残像にとらわれる己の服を幼子が引いた。
「・・・どこか痛いの?」
「・・・・・どこも」
 痛くはない・・・・・はずだったのに。
「あのね、痛いときは我慢せずにちゃんと言わないと駄目だよ!」
 
 ・・・・・・・・我慢?俺が?

「すっごく痛そうな顔してる」
 見つめる金色の瞳は己を案じて揺れていた。
「では・・・・・・」




「では、痛いと言えばお前が癒してくれるのか?」




「うんっ!」
 そして幼子は己に手をかざすと・・・・”痛いの痛いの飛んでいけ〜”と叫び、へへっと
笑った。
「あのねっ!痛いときはこうするといいんだって天ちゃんが言ってたの!!」
「・・・・・・・・」
「・・・・まだ痛い?」
「・・・・・・・・」
 返事をかえさない己に幼子が再び教えてもらったという呪文を唱えようとする。
 

 それを。

 イトオシイと思った。






「・・・・っ!!」
 気づけば、その小さな体を腕に閉じ込め大地の匂いのする髪に顔を埋めていた。
「え・・・と・・・・」
「・・・しばらくこのままでいさせてくれないか?」
 困惑する子供に請うた。
「・・・・・うん、いいよ」


 それは久しく感じていなかった”ぬくもり”だった。






『愛しているわ、焔』



 俺も愛していた・・・・・・・。








 凍結していた心が動き出す。









「・・う・・・・悟空ーっ!!」
「あ、金蝉だっ!」
 遠く幼子を探す声。
「帰らないとっ!!」
 腕の中から抜け出した子供が己を振り返る。
「・・・・名前、何ていうの?」


「焔、だ」


「ほむら・・・ほむら・・・うんっ覚えた♪また、オレと遊んでねっ!!」
「・・・・ああ」
「それじゃあ、約束!!」
 子供は焔の手をとると、小指をまきつけた。
「嘘ついたら針千本のーますっ!指切った!」







 視界に小さくなっていく姿。






「孫・・・・悟空」


 その名を深く刻みこむ。

 決して忘れないように。



















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