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「さんぞうーっ!三蔵っ!!」 バタバタバタ・・・ッ! ドカンッ!! 三蔵に部屋の扉が荒々しく開け放たれ、台風が飛び込んできた。 「遊びに行こうっ!!」 先日もそう言って三蔵に仕事だと叱られ、だったらいつならいいのだと尋ねた悟空に 今日ならば休みがとれると、約束してくれたのだ。 だが・・・・・・。 「・・・・・駄目だ、急な仕事が入った。悪いが・・・」 「約束したのにっ!!」 悟空がががーんっとショックの斜線を背負った。 「仕方ないだろうが、一人で遊んでろ」 そう言って三蔵は悟空がつかんでいた袖を振り払った。 「・・・か・・・・・・・・だ」 「あん?」 「三蔵なんか、大っ嫌いだぁっっ!!!!」 ドガッ!! 悟空は叫ぶと窓を突き破って外に飛び出して行った。 部屋には、『大っ嫌い』という言葉が脳裏にエコーする三蔵が呆然と突っ立っていた。 「はっかいーっっ!!!!」 さて、三蔵に約束を反故にされた悟空がやって来たのは街はずれの森の中。 こじんまりとした一軒家。 そこには最近、知り合った二人の妖怪が住んでいた。 「何だぁ、小猿ちゃんじゃねーか。八戒なら買出しに行っていないぞ」 Σ( ̄ ロ ̄|||)☆★ガビーン!!!! 再びショックを受ける悟空。 八戒ならば、この悟空の怒れる気持ちを優しく受け止めてくれると思っていたのに。 「ふ・・・・う・・・・・ぅええーんっっ」 行き場を失った感情は外へと噴出した。 「お、おい・・?!ど・・・・・?!」 突然に泣き出した悟空に咥えていた煙草をぽろりと落としあわわとあたふたする 悟浄。 まだまだ子どもの扱いには慣れていない。 「三蔵がっ・・・さんぞうがっ・・・くっ・・・はっかいも・・・・えぐっ・・・・ぐ・・・」 何が何だか全然わからない。 「ちょ・・・・ったく・・・しょうがねーなぁ・・・・」 悟浄は、がしがしと深紅の髪を掻き毟ると、大粒の涙を流す悟空を抱き上げた。 「ご・・・ごじょう?」 「何で泣いてんだか知らねーけど・・・・泣くな。お前が泣くなんてキャラじゃねーだろ。 笑ってろ。そのほうがずっとお前にあってるぜ、悟空」 「・・・・悟浄・・・」 悟浄の言葉に悟空の涙はゆっくりとひいていった。 「・・・・で、何で泣いてたんだ?」 腕の中でうずくまる悟空に尋ねる。 「・・・さんぞうが・・・・・三蔵が、遊んでくれるって言ったのに・・・・仕事が入った、て 約束したのに・・・・オレ・・・・っく・・・・ひっ・・・・・」 「ああ、泣くな、泣くな」 ふたたび思い出して泣き始めた悟空を慌ててなだめる悟浄。 ポスト八戒も近いかもしれない。(つまり保父代理・笑) 「そうだ、街に何か美味いもんでも食いに行くか?」 食欲にうったえる悟浄。 「・・・・行くっ!!!」 そして、まんまんとそれは悟空にヒットした。 「あ、あれっ!!シューマイっ!!」 「あっ、肉まんっvvv」 「フライドポテトだっ!!!」 エンドレス。 この後も、片っ端から悟空は食べ物屋をはしごしていく。 もちろん御代は悟浄持ち。 ・・・・・・ちょっとは遠慮してくれ ・・・・・・あの坊さん、ちゃんと猿にエサやってんだろうな? どんどん軽くなっていく財布に涙をのみながらここにはいない三蔵にちょっと文句を 言いたくなる今日このごろ。 「おい・・・悟空・・・・」 「ん?」 「・・・・・・・・」 さすがにもう駄目だと言いたくなった悟浄だったが、振り向いた悟空の幸せです!! といった表情に何も言えなくなってしまった。 「いや、・・・何でもねー・・・」 ・・・・・参ったな・・・・自分で思ってる以上にこいつに甘くなってるらしい・・・・・ 普段、八戒に甘やかしすぎだと言っていたが悟浄もどうやら悟空に相当甘くなって いるらしいと自覚する。 「・・・・悟浄?」 先に歩いていた悟空が立ち止まってしまった悟浄を振り返る。 その表情。 まるで飼い主がきちんとついて来てくれているか確認する小型犬のようで・・・・・・ 「・・・・・・ぷ」 悟浄は思わず吹き出してしまった。 「・・・・・何だよ?」 その笑いに馬鹿にされたと思って不機嫌になる悟空。 「いや〜・・・・・お前て可愛いよな〜」 「な・・・・可愛いってっ!!」 「ん〜可愛い、カワイイ」 悟浄は調子にのって悟空のやわらかふさふさ髪の毛をくしゃくしゃとかき混ぜた。 「やめろよっ!!もうっ!子ども扱いすんなよなっ!!」 「ぶっ!!」 そのセリフに再び吹きだす悟浄。 約束を破ったと泣きついてきて、それで子どもじゃないと言い張るか、このお子様は。 「笑うなってばっ!!」 「く・・・くっくっくっ・・・!!」 それに刺激されてますます悟浄は笑い出す。 我慢できなくなってとうとう腹を抱えて。 「っ!!もう、悟浄なんて知らないからなっ!!!」 ぷっくりと頬をふくらませて、肩をいからせて歩いて行こうすする悟空を捕まえる。 「いいじゃねーか、子どもだってよ。そのおかげで今日ここに居るんだから、な♪」 「・・・・・・・」 「楽しかっただろ?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」 しぶしぶとだが、悟空が素直に肯く。 「ほら、まだ見るんだろ」 「うんっ!!」 途端に駆け出す悟空。 それを愛おしさをこめた眼差しで悟浄はみつめる。 ・・・・・・が次の瞬間その顔は凍りついた。 「点数稼ぎましたね、悟浄♪」 ・・・・・どこから涌いた猪八戒? 全く気配を感じなかったぞ。 振り向けばいつものように穏やかな笑顔を浮かべた八戒がいた。 「競馬なら一馬身リードてところですね♪」 とってもにこやかなのに漂ってくるこの冷気は何なのだろう・・・・? 「でも、まだまだ勝負はこれからですよ」 「・・・・・・・・・・・・はい」 腕に大きな買い物ぶくろをさげていては様にならないこと限りないが、八戒は どこまでも本気だった。 「あっ、八戒!!!」 そんな八戒を見つけた悟空が飛びついてくる。 「今日も元気ですね、悟空」 「うん!!・・・・・あ、でも・・・・・」 元気よく肯いたと思ったら途端にしゅんとうな垂れてしまった悟空。 もちろん、悟空専属保父さんの八戒が見逃すはずもなく・・・・。 「どうしたんです、悟空?悟浄に何かされましたか?」 「・・・・おい」 「ううん・・・悟浄はいっぱい食べ物買ってくれて・・・・・嬉しかった」 「・・・・・悟浄」 にっこりと笑う八戒の顔がとても恐い・・・・悟浄は思った。 「だったらどうしました?」 「あの、ね・・・・・三蔵が・・・・・約束したのに・・・・遊んでくれないって・・・・・・」 再び、金の瞳をうるうるとさせる悟空。 「ああ、わかりましたから泣かないで下さい、悟空。あなたに泣かれると僕はどうして いいかわからなくなります」 「う・・・ごめん、八戒」 「いいんですよ、謝らなくても。あなたを泣かした三蔵が悪いんですから。そうです! 三蔵のかわりと言っては何ですが今から遊びに行きましょうか?」 「ホント?!」 「僕は悟空には嘘をつきません」 ・・・・・・嘘付け。 「・・・悟浄、何か?」 「・・・・何でもありませ〜ん」 どうして考えていることが筒抜けなのか・・・・・。 自分の思考回路がかなり単純に出来ていることに気づかない悟浄である。 「どこに遊びに行きましょうか?」 「んとね、川!!」 「・・・川?」 「泳ぐんだっ!!」 「そうですか、今日は暑いからちょうどいいかもしれませんね。それじゃあ行きましょう。 すっごくいい穴場を知っているんです♪」 「さすが八戒〜っ!!」 そして、悟浄を置いてすたすた歩き出す二人。 「・・・・・・・俺は無視かい?」 「悟浄も来たかったら来てもいいですよ〜」 「悟浄も来いよ〜」 二人とも悟浄に誘いの言葉をかけるが明らかにうち一人の言葉の裏には来るなよ、 というメッセージがこめられている。 だが。 そんなものに負けていてはプレイボーイの名がすたるというものだ。 「よしっ、競争しようぜ、悟空!!」 「悟浄なんかには負けないもんなっ!!!」 あっかんべーと舌を出す様子が、それはもうぎゅっとしたくなるほどカワイイ。 ・・・・・・・・俺、もうダメかも・・・・・・・・・ あっけなく理性の崩壊を向かえた悟浄は、衝動のままに悟空を抱きしめた。 ほのかな体温と子ども特有のやわらかさ・・・そして太陽の匂いに悟浄はうっとり する。 「・・・・何するんだよ」 「いや〜何となく、なぁ」 お前が愛しすぎて腕の中に閉じ込めたくなったんだ、なんてことは背後の保父さんの 放つ殺気に胸の中に呑み込む。 「悟空、お前って人の10倍は食ってるくせに重くならないよな〜」 「余計なお世話だっ!!」 「悟浄・・・いい加減その手をはなしてくれませんか?」 にこにこにこにこにこ〜〜〜。 「・・・・・・・・はい」 「また、変な気をおこしても困りますからこれでも持っててください。もちろん落したり したら今夜の夕食どころか永遠に食事にはありつけないと思ってくださいね」 「・・・・・謹んで持たせていただきます」 そして八戒から大きな買い物袋を受け取った。 「なぁなぁ、それ何が入ってんのっ!!」 食い物?ときらーん★と悟空の眼が光る。 「ええ、今日の夕食の材料です」 「なになに〜??」 「今日は山菜の炊き込み御飯に、水餃子・・・・そうですね川に行くんなら魚もとって きましょうか」 「なぁなぁ、オレも食べていいのっ?」 きらきらお目目で見つめられて八戒、ノックアウト。 「もちろんですよ、悟空。僕はあなたのために作ってるんですから」 「俺は?」 「ああ、ついでです」 さようですか。 そんなことをしゃべりながら3人は八戒に連れられ、森の中の湖にやって来た。 「川じゃないですけど・・・これなら泳ぎやすいでしょう?」 「うんっ!!すっげー気持ちよさそうっ!!」 「その言葉はベッドの上で聞きたいぜ」 「悟浄、知ってますか?水死体がどんなに凄いことになるか?」 「・・・・・・・・・・・・すいませんでした」 先ほどから失言の多い、悟浄。 学習能力が欠片もないかもしれない。 「悟浄っ!!競争するんだろうっ、早く来いよっ!!」 「お〜、小猿ちゃんのご指名だぜ」 「いい遊び相手ですからね〜」 同レベルで。 「・・・・何か含みがあるような・・・」 「そうですか?ほら、早く行かないと負戦敗ですよ」 見れば悟空はすでに服をあたりに脱ぎ散らかし泳ぎだしている。 「おいっ!!こら待てっ悟空!!」 「待たないよーだっ!!」 バシャバシャバシャッ!!! 「そっちがその気ならな〜っ!!!!」 悟浄は上半身だけ裸になると猛スピードで悟空を追いかけた。 かなりの速度だ・・・・・さすが河童。 そんな二人の様子を見守りながら悟空の脱いだ服を拾って整えておく八戒。 もちろん、悟浄のは無視である。 「悟空ーっ、悟浄、そろそろあがって来て下さいよ〜っ!!」 湖に飛び込み、約1時間・・・無邪気に(悟空は)遊ぶ二人に八戒の呼ぶ声がした。 「ええ〜、もう少し泳ぎたいのに〜」 「ずっと水の中に居たら体が冷えるからな、心配してんだよ」 「そっか・・・じゃあ戻んないとな」 「陸まで競争だっ!!」 「あ、ずりーっ!!」 慌てて悟浄を追いかける悟空。 ちらりと後ろを振り向き、必死になって追いかけてくる悟空の姿に悟浄は気分が 昂揚する。 いつもはこちらが、悟空を追いかけてばかりなのだ。 たまには逆もいいものだ。 「ほい、俺の勝ちね♪」 「うぅ〜」 タッチの差で岸へとたどり着いた悟浄に悟空は悔しがる。 八戒はそんな悟空を水の中から抱き上げると、いつのまに用意したのか大きな バスタオルで包み込む。 「たくさん遊びましたね、悟空」 「うん!!すっげー楽しかったっ♪」 「体が冷えてるでしょう。よく拭いて火に当たってください」 「ありがとう、八戒!!」 何でこの小猿ちゃんってば八戒の言うことには素直に従うんだろうね〜。 深紅の髪からぽたぽたと水滴を滴らせながら悟浄は二人の仲睦まじげな様子を 見つめる。 「はい、悟浄もちゃんと拭いてくださいよ」 と、同じようなバスタオルを渡される。 「・・・・サンキュー」 パチパチ。 火のはぜる音が響く。 「・・・・悟空?」 八戒の呼びかけに答えはかえらない。 タオルに包まれた悟空をのぞきこめば、そこはもう夢の中。 「もう、おねむかよ。やっぱお子様だなぁ〜」 「今日は色々あって疲れたんでしょう」 八戒は荷物をまとめて、ジープにのせる。 「悟浄、悟空をお願いしますよ。僕は運転しないといけませんから」 優しく抱き上げた悟空を壊れものを扱うように八戒は悟浄の腕に預けた。 「・・・・役得、てやつですか?」 くーくーと寝息をたてる悟空の寝顔をのぞきこんで不埒な笑みを浮かべる。 「くれぐれも起こしたりしないで下さいね、可哀相ですから」 しっかりと釘はさされた。 「起きるわけね〜よ、こんなに熟睡してたらな」 だが、そんなことを言いつつも悟浄は出来るだけ振動を与えないようにジープへ 乗り込むのだった。 「おや、誰かいますね」 こんな所までやって来る物好きなどそうは居ないくせに、八戒はにこやかに言う。 「約束破りの玄奘三蔵さまじゃね〜か♪」 悟空を腕に抱いたままの悟浄が面白げにつぶやく。 向こうもこちらに気づいたようで、鋭い視線が悟浄に投げかけられる。 「・・・悟空が世話になったな」 「いえいえ、とても楽しく過ごさせていただきましたよ。おかげさまで」 「・・・・・・・」 さりがない嫌味がこれほどうまい奴も居ないだろうと眺める悟浄。 そんな八戒を相手にするのはさすがに嫌だったか視線が悟浄に移る。 その視線が”さっさとその手を放せ”と悟浄に無言の圧力をかけていた。 「小猿ちゃんてば、今日は本当にカワイかったぜ?このまま、ここに置いておいたほう がいいんじゃねーの?どうせ三蔵さまは忙しいんだろうし?なぁ、八戒?」 お前もそう思うだろ?とふられて八戒が微笑む。 「そうですね〜、悟空がそれでいいと言うんだったら僕はそれで全然まったくこれっぽっ ちも構わないんですが・・・・」 「ん・・・・・・さん、ぞう・・?」 悟浄の腕の中でもぞもぞと動き出した悟空が、目の前に立つ人物を目に入れて 無意識に手をのばす。 「悟空はあなたの傍がいいようですから」 「本当、あんなにイジメられててな〜」 悟浄は腕の中の重みを静かに三蔵に預ける。 ・・・・・・・本当はこのまま放したくはねーんだけど、な。 「今はまだ親の庇護が必要な時ですから」 「お子様には親が必要だからな」 だが、その庇護の手が必要なくなった時には。 八戒と悟浄の宣戦布告。 「・・・・・・・馬鹿どもが。ガキはいつまでたってもガキなんだよ」 三蔵は悟空を抱き上げながら、その挑戦を軽く流した。 「悟空、また遊びに来てくださいね」 「また来いよ、悟空」 二人の言葉を聞きながら寝ぼけた頭で悟空は嬉しくて今日一番の笑顔をみせた。 そんな笑顔に見惚れる一同。 やはり、悟空は笑顔が一番似合う。 「夕飯・・・・結局食べずに帰っちゃいましたね」 「いいんじゃねーの。明日俺たちが届ければいいんだし」 「それもそうですね。たまには悟浄もいいこと言いますね♪」 「たまには、て・・・・」 八戒てば日増しにハイパーになってねぇ?その性格? 「悟空のためですから」 あの子に負けないように強く、支えられるように。 「・・・・・・・・・なるほど」 だったら俺も負けらんねーよな。 「でも、まずは」 「三蔵を蹴落とさないとな」 「三蔵を蹴落とさないといけませんね」 「「・・・・・・・・」」 考えることは同じ、てか〜? 「それでは、そうするためにも今日は英気を養いましょう」 「・・・異議な〜し」 二人は太陽のような笑顔を夢見ながら我が家に入る。 そして、ゆっくりと扉は閉じられた。 |
| Fin |
★あとがき★
おかしいな〜、悟浄×悟空のつもりが八戒の乱入で八戒×悟空風味(笑)
やっぱり八戒は御華門のお気に入りですからね〜・・というか実は一番
書きやすかったりするんですよね(笑)
何だか御華門と相通じるものがあって・・・・(何だ、それは・笑)
そして一番書きにくいのが悟浄・・と三蔵。
悟浄の遊び人風、ていうのが御華門には難しいんですよね〜。
まだまだ修行がたりません!!
それでは・・・
ご拝読ありがとうございましたm(__)m