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天界で暮らす限り、季節の移ろいに心を奪われることはない。 そこは常春の世界なのだから。 しかし、どこにでも酔狂・・・天邪鬼・・・・いやいや物好きな者はいるもので・・・・・・ 「今夜の下界は冷えますよ〜」 遊びにやって来た悟空に天蓬がそんな言葉を告げた。 「・・・ひえる?どうして?」 「今日はね、とっても寒い日なんです。だからね雪が降るかもしれないんですよ」 「・・・・・・ゆき?」 それなに?美味しい??と好奇心旺盛な悟空は目をきらきらさせて聞いてくる。 「ん〜、口に入れても大丈夫ですけど・・・味はないと思いますよ」 すぐに溶けちゃいますからね。 「えーそうなんだ〜、ね、ここは?ここはふらないの?」 「残念ですが、ここは降らないんですよ」 天蓬の言葉に悟空はしゅん・・・と肩を落とした。 そんな悟空が可哀相でついつい天蓬は言ってしまったのだ。 『金蝉に言ってみたらどうですか?』・・・・と。 「ねーねーっ・・・こんぜんっ!!金蝉ってばっ!!」 「・・・・・・・・・」 天蓬のところから帰ってくるやいなや金蝉の傍に駆け寄り話かける悟空を無視する こと30分。 よく我慢した・・・・・・・金蝉は己で己を褒めてやりたくなった。 「うるさい、悟空っ!俺はまだ仕事が残ってるんだっ大人しくしていろっ!!」 「だってっ!!早くしないと無くなっちゃうかもしれないんだもんっ!!」 「・・・・・・何が?」 「ゆきっ!!」 「・・・・・・・・・・・・・ゆき?」 ゆき・・・・とは何だ。 人の名前か? 金蝉は「悟空」と「ゆき」との関係が不可解で「ゆき」=「雪」とただちに頭の中で 変換されなかった。 「溶けちゃうんだけど味が無いの〜っ!!」 「・・・・・・・食い物か?」 だが、そんな名前の食べ物は今まで聞いたことがない。 「天ちゃんがねー”今日はゆきがふる”てっ♪」 「・・・・・・・・・・・・・・もしかして”雪”のことか?」 「うん、ゆきっ!!」 やっと合点がいった金蝉である。 悟空と話しているとこのようなことがままあるので、短気な金蝉も耐性がついてきた。 「で、何で雪が無くなるなんて話になるんだ?」 「溶けちゃうのっ!!」 「ここには雪なんてもの無いだろうが」 「んーと・・・げかいっ!!」 「下界・・・ああ、確かに今あたりは寒いかもしれないな・・・・」 「だからねっ!!!」 金蝉は嫌な予感がした。 「下界に行く―――っ!!!」 「この馬鹿がっ!!そんなほいほい行けるわけが無いだろうがっ!!」 「でもっ・・・行くっ!!行くのっ!!金蝉、行こうっ!!」 「そんなに行きたければ勝手に行けっ!」 「オレ、行きかたわかんないもんっ!!だからこんぜん〜っ」 悟空が金蝉の腕にすがりついてくる。 「知るかっ!!」 まだまだ書類は山のように残っているのだ。 「こんぜん〜っこんぜん〜っ」 だが、諦めきれない悟空は振り払われても振り払われてもすがりついていく。 「悟空っ!いい加減に・・・・・・・っ」 一発殴って大人しくさせようと思った金蝉は、悟空の顔を見て動きを凍らせた。 金色の大きな瞳から大粒の涙が次から次へと溢れていたのだ。 「・・・・ちっ・・・・・・・・・・・・いいか、悟空。長くは居れないぞ」 「え・・・・・・・・うんっ!!金蝉、ありがとっ!!!」 悟空が抱きついてくる。 甘いものだと自分でも思ったが・・・・・悟空の涙には勝てない金蝉だった。 「う"〜〜〜さむいぃぃ〜〜っっ」 体を抱えて震えている。 「馬鹿が、だから出る時に服を着ろと言っただろうが」 悟空はいつもの腕・足剥き出しの軽装である。 ここは下界。 天界にほど近い、山の中腹である。 「さむいっさむいっさむい〜〜っ」 「ったく・・・・世話のやける・・・・」 歯の根もあわなくなってきた悟空を金蝉はそう言うと自分の腕の中へ包み込んだ。 「あったかい・・・金蝉vv」 「ふん」 「ねぇねぇ、金蝉!ゆきは??」 「まだ降らないようだな・・・・もしかすると今日は降らないかもしれないな」 「ええっ!!」 せっかく来たのに・・・。 「あと少しして降らなければ、帰るぞ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」 不承不承ながらも約束したことなので素直に肯く。 出来ることなら金蝉としても悟空に雪を見せてやりたいのだ。 地上に生を受けながら、天界へと連れて来られたせいで見ることが叶わなくなった もの全てを・・・・・・・・・。 待つことしばし。 「どうやら、降らないようだな」 「・・・・・・・・うん」 「仕方が無い」 「・・・・・・・・うん」 「帰るぞ、悟空」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」 約束だから・・・・きゅっと金蝉の胸に顔をうずめた。
その悟空の頬に―――――――――――――― 冷たいものが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・落ちた。 「・・・・・あっ!!」 驚いた悟空が天を仰ぐ。 |
「雪だな、悟空」 「これが・・・・・・・・・・ゆき・・・・・・・?」 「そうだ、雪、だ」 悟空がそろそろと手をのばす。 「ほんとだ・・・・冷たい・・・・・・・・・・・あ、溶けちゃった・・・・・・」 もぞもぞと金蝉の腕から抜け出した悟空が次から次へと降ってくる雪を追いかけはじ めた。 そのうち、雪はどんどん多くなり・・・・・・・・・・・・あたり一面・・・・・・・・・・・ 雪・・・・・・・雪・・・・・・・・・・雪・・・・・・・・・・・・・ 「うわーっ!!すごいっ!!!すごいねっ♪金蝉っ!!」 悟空は『寒い』という感覚を忘れたかのように跳ね回る。 大地色の髪が雪とともに舞い上がる。 そんな悟空を見つめながら金蝉は満足だった。 思う存分に雪と戯れた悟空は、静かにそれを見守っていた金蝉のもとへ駆け寄った。 「良かったな、悟空」 「うん♪」 再び金蝉の懐にもぐりこんだ悟空はそこから天を見上げる。 「・・・・・・きれいだね、こんぜん・・・・・・・」 「・・・・・・・・ああ」 |
冷たいけれど ほんのり優しい 天からの 贈り物 |
† あとがき † 雪が書きたかったんですっ!!(笑) 小説では一番凝ったページになったかも・・・(笑) 御華門は四季の中でも冬が一番好きです♪ 澄み渡る大気や清浄な冷風・・・・・そして真っ白な雪vv 心が洗われる・・・そんな気がします(^^) これから本格的な冬到来!ですが 皆様お体には気をつけて下さいませ☆ミ では ご拝読ありがとうございましたm(__)m |