悟空は緊張していた。

「こ・・・これ持ち上げるんだよな?」
「・・・ああ」
 三蔵は書類から目も上げず、悟空の問いに頷いた。
「・・えーと、それから耳にあてるんだよな?」
「・・・・ああ」
「・・・それだけでいいの?」
「・・・・ダイヤルをまわせ」
 三蔵の声に少しずつ苛立ちが混じってくる。短気なのだ。
「ダイヤルって?」
「・・・・・・・その目の前の丸い輪だ」
「まわしたらつながる?」
「・・・そのメモの番号どおりにまわせばな」

 ようやく静かになった悟空に、三蔵は書類に向けていた視線を動かし、サインする。

「三蔵〜〜・・っ」
「・・・今度は何だ」
「プープー、しか言わない!・・壊れたのかなぁ・・・」
「・・・・っかせっ!!!」

 我慢の限界がきた。
 三蔵は悟空の手から受話器を奪い取ると、メモに書かれている番号をダイヤルした。

「・・あとは向こうが勝手に出る」
 これで用は済んだとばかりに三蔵は悟空に受話器をつき返すと、再び書類に目を通しはじめた。
 常々思うが、律儀に書類整理するあたり、結構真面目君なのかもしれない・・・。

 そんな三蔵の苦労は知らず、悟空は受話器の片方を耳にあて、わくわくと、金色の目をキラキラ
 させて相手が出てくれるのを待つ。

 コールが3回した頃。



『はい、沙です』
 聞きなれた声が悟空の耳に響いた。

「八戒!」
『ああ!悟空ですか。電話かけてきてくれたんですね♪』
 電話の相手は八戒だった。
 最近電話をひいたのだ、と三蔵と悟空に知らせに来た八戒はちゃっかり電話番号もメモって
 置いてきていたのだ。もちろん寺院に少々古びているが電話があることを承知して。

「八戒だぁ・・・えへへっ」
 何だかわけもなく嬉しくて、悟空は満面に笑顔を浮かべる。
『ええ、僕です。悟空は何しているんですか?』
「えっとね、八戒に電話してる」
 当たり前。
 だが、八戒は悟空には甘い。
『頑張ったんですね。悟空の声が聞けて嬉しいですよ』
「俺も!俺も八戒に電話できて嬉しい!」

 悟空の背後の三蔵の眉間にぴきぴきと血管が浮かび上がる。
 聞いてないふりして、ちゃんと聞いているらしい。

『悟空の声を独り占めですね。もっと何かしゃべってみてくれます?』
「えーと・・えーと、八戒・・・大好きっ!

『僕もで・・・』



 ブツッッッ!!



 プープー・・・プー・・


「は・・・八戒!?もしもしっ!?もしもしっ!?・・・どうしたんだろう・・・??」
 悟空は受話器を持って頭を左右へ交互に傾げる。
「壊れたんだろ。捨てとけ」
「えー、でもぉ・・・」
 せっかく初めて電話したのに・・と未練たらたらの悟空だったが壊れたものはどうしようもない。
 あーあ、と肩を大きく落とした悟空は受話器を元に戻した。



 そして、密かに。





 電話機に繋がっているコードを三蔵の足が踏んでいたのだった。









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御華門の夢ネタです(笑)
久々に最遊記の夢みたら悟空が受話器を抱えて
それはそれは楽しそうに笑っていたので
短編にしてみました♪

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