「大きくなりましたねぇ・・・」 ずずず・・・とお茶の音が聞こえそうにのんびりとしゃべるのは天蓬である。 「あの頃はこ〜んなに小さかったのに・・・」 それでも僕より頭一つぶんは小さいですけどね、ふふ・・。 「・・・・で、いったいお前は何をしに来たんだ」 わざわざ金蝉の執務室を訪れ一人何やら回想にふけっている天蓬に金蝉は酷く 迷惑そうな顔で問いただした。 「そんなの決まってるじゃありませんか。僕の愛しい悟空の顔を見にですよ♪」 「・・・・・・・・・・・」 昨日もおとといも・・その前も・・・・・・来ただろうがっ!! ・・・と言うのすら馬鹿らしかった。 「はいっ!金蝉、出来た!」 たたたっと金蝉の座る執務机に悟空が駆け寄り、緊張の面持ちで書類の束を差し出した。 それを黙って金蝉は受け取ると、一枚一枚目を通していく。 固唾を飲んで見守る悟空。 「・・・まぁ、いいだろう」 途端ににぱぁっと笑顔に崩れる悟空の顔。 「はぁぁぁ・・・悟空ももう一人前ですねぇ」 天蓬は窓から晴れ渡る外の景色を見て、一人黄昏ていた。 悟空が金蝉に引き取られ、10年の歳月が流れていた。 天界では、目を瞑るかのように一瞬の時の流れだったが、悟空が成長するには 十分な月日だった。 10年の間に、緩慢に時が流れる天界とは信じられないほどに様々なことが起こった。 悟空も傷つき、大切な友を無くしかけた。 闘神太子も代替わりした。 そして、金蝉の手伝いを見よう見真似でするようになった悟空は、今では 一人前・・・とはいかないが半人前程度には仕事をこなせるようになっていた。 「もう、遊びに行ってもいいぞ」 「やったぁっ!」 金蝉に言われ、無邪気に喜ぶところはまだまだ子供である。 「あ、それでは僕と・・・」 遊びに行きましょう・・・と言いかけた天蓬のセリフは悟空に遮られた。 「それじゃぁ焔のところに行ってくるっ♪」 ああ、僕の悟空が・・・と天蓬が泣く。 そんな天蓬など目に入っていないのか、元気に手を振ると悟空は金蝉の執務室を後にした。 「・・・・金蝉」 「何だ?」 「・・・悟空を焔のところへ行かせてもいいんですか?」 「・・・行きたいというものを止めることなどできんだろう」 「・・・甘いですね、いつになっても」 「・・・うるさい」 ちょっと寂しい保護者’sであった。 「ほーむらーっ!遊びに来たよーっ!」 元気よく叫べば、一瞬もせずに焔が現れる。 「よく来たな、悟空」 「今日は仕事無いんだろ?」 「ああ、丁度暇をしていたところだ。是音の焼いた菓子がある、食べるか?」 「食うーっ!」 現闘神太子、焔は鷹揚に頷くと悟空の背に手をまわし、屋敷の中へ促した。 「うわーっ、これチョコ?・・んでこれがバニラで・・・これが抹茶!!色々あってどれから 喰おうっ!?」 「ああ、どれでも好きなだけ食べるといい、どうせ悟空しか食べないのだからな」 「焔は?」 「俺はいい」 「でも美味しいよ?」 悟空があーんと焼き菓子を差し出す。 そのまま焔の口へぽいっ。 「・・・甘い、な」 「そうかなぁ??」 ??としきるに首を傾げる悟空を、焔は愛しげに眺める。 こんな時間を悟空と共に過ごせるときが来るなんて思っていなかった。 自分たちの道はどこまでも平行線で、決して交差することはない。 そう思っていた、出会ったころは。 だから、今この時。 共に在ることのできる幸福に。 柄にもなく感謝したくなる。 「悟空」 「ん?」 菓子を口に頬張ったまま、悟空が焔を見上げる。 もぐもぐと動く口元についているクッキーのかすを焔は指でぬぐってやり、そのまま・・・・・ 悟空に口づけた。 「結婚しよう、悟空」 「こーんぜーんっ!!」 どかっ、と執務室の扉が勢いよく開け放たれる。 「何度言ったらわかるっ!ノックくらいしろっ!!」 「いいんですよ、悟空♪早いお帰りでしたね?焔は留守でしたか?」 「居たよっ!でねっ!金蝉に言うことがあって帰って来た!!」 ばんばんっと机を叩いて、凄まじい勢いの悟空だ。 いったい何を言い出すのか、と天蓬も興味津々で黄昏ていた窓から離れる。 「・・・・いった何だ?」 どんなバカらしいことを言い出すのかと、金蝉は眉間の皺も深く問いただした。 それに悟空はにっこりと輝くばかりの笑顔を浮かべると・・・・・・ 「オレ・・・・・・・・・・・焔と、結婚するーーーっ!!!」 「・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・」 結婚するーするーーするーーーーー・・・・るー・・・・・・・・ 金蝉と天蓬の頭の中、そんな言葉が木霊する。 「・・・・・・・・・・・・・・・・本気か?」 いち早く立ち直った金蝉が擦れた声で悟空に問いただす。 ちなみに天蓬はいまだ、頭に声を響かせたまま意識を虚空に飛ばしていた。 「うんっ!それで焔が金蝉に許しをもらって来いって」 「・・・・・・・許し?」 「うんっ♪」 (誰が・・・・・・・・・そんなものするかぁぁぁぁっっっ!!!!) 思わず机の上の処理した書類をびりびりに破いて投げ飛ばしたい欲求にかられた金蝉。 「・・・・許してくれる?」 そんな内面はともかく外面上は普段と少しも変わりのない金蝉を悟空は上目遣いで ながめると首を傾げた。 その様はもうすぐ成人を迎えるというのに、感涙ものに可愛らしく・・・頷いてしまいそうになる。 ・・・・・・・・・が。 それを必死で留まり、金蝉は悟空に問うた。 「お前、結婚の意味がわかって言ってんだろうな?」 「うんっ!ずっと一緒に居るってことだろ?」 即座にかえされる。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかった」 「金蝉っ!!」 その肯定するような金蝉のセリフに天蓬が復活し、慌てて名を叫んだ。 「ちょっと物分りが良すぎますよっ!!」 少しくらい反対しても・・・と天蓬は不満たらたらである。 本心は少しどころか大いに反対したいのだが。 「いや、それで悟空がいいというなら俺は何も言うことはない」 そして、金蝉はじっと悟空を見つめる。 10年という歳月。 この手で育ててきた子供。 始まりは、強引に観世音によって引き渡されたとはいえ・・・・本当に。 本当に・・・・・・・。 愛していた。 あの鎖に繋がれ、自分の目の前に引きずられてきた頃を思い出す。 ・・・・・・・・・・・・・・・・大きくなった。 「・・・・・悟空」 「ん?」 「幸せにな」 「!?うんっ!」 まさか金蝉からそんなストレートな言葉を聞けるとは思いもしなかった悟空は 予想外の喜びに金蝉い抱きついた。 そして。 「金蝉も結婚しようねっ!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」 金蝉と天蓬。 二人の時がしばし止まった。 ・・・・・・・・結局。 結局は、だ。 「悟空・・・・お前・・・・」 「ん?」 金蝉の手が机の上でふるふると震えている。 「何にもわかってねぇじゃねーかっ!!!!」 「え・・・え?え?え?」 金蝉に怒鳴られ、意味のわからない悟空はしきりと首を傾げる。 「ああ・・・良かった。悟空はまだまだ子供ですねぇ」 よしよし、と悟空の髪を天蓬は撫でる。 「それじゃ、僕とも結婚してくれますか?」 「うん、いいよ!」 どさくさにまぎれて約束をとりつける天蓬。 「そうじゃないだろうがっ!てめぇらっっっっ!!!!!!」 どうやら、当分天界は静寂や安穏と言った言葉とは縁遠いままらしい。 少々喧騒に満ちた、幸せ(?)な日常(?)。 それもまた良いではないだろうか。 「いいわけあるかっ!!!」 ・・・・多少、異論はあるようだが。 |
| Fin..... |
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+あとがき+
観葉人形の金蝉編があまりに***だったため
自分のなぐさめに書いた小説です(笑)
普通の天界バージョンで書くとどうしてもしんみりした雰囲気が
漂ってしまいますので、もうこの際思い切って最終奥義!
『全て無かったことにしよう!』
攻撃を繰り出してしまいました(笑)
よくわからないお話ですが(おいっ)
適当に笑っていただければ幸いです(^^ゞ