「くすくす、見てくださいよ」
「あぁ?」
 八戒が笑いながら示した先には1本の大木がそびえたち、その根元にすやすやとそれは
 気持ち良さそうに眠る悟空の姿があった。
「悟空の寝顔は可愛いですよね」
「起きたらうるせぇけどな」
「何を言ってるんですか。起きた悟空はもっと可愛いですよ」
「・・・。・・・・」
 きぅとあれだ。
 よく言う”アバタもえくぼ”というやつだろう。
 そんなことを悟浄は思いつつも、悟空の顔を見ていると自然に顔がほころんでくる。
「今日は暖かくて天気もいいですからね。悟空が眠りたくなるのもわかります」
 
 春がやってくる兆し。
 今まで何も無かった木の枝に花の蕾がつきはじめている。
 大地や風・・ありとあらゆる自然が春の到来を祝福している。
 その喜びに包まれて大地の愛し児たる悟空も穏やかなのだろう。


 退屈は人を殺す・・・その精神を蝕む。
 しかし、殺伐とした日々に滅多に無い穏やかな時は健やかな精神を育むのだ。

 世界が輝いて見える。


「・・・悟空」

 八戒と悟浄は悟空を間に挟んで同じように木の根元に腰を下ろした。
 きれた煙草の買出しに行った保護者は、まだもう少ししなければ帰ってこない。
 それまでもうしばらくこのままで。





















「・・・・・・てめぇら、馬鹿だろう」
 帰ってきた悟空の保護者、三蔵サマは三人に呆れたような視線と言葉を投げかけた。
 ほんの少しのつもりが予想外に長時間になってしまった一眠り。
 まだまだ外でするには早すぎて。


 三人は揃って風邪を召していた。








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