俺・・・誰も呼んでねぇけど・・・?
仕方ねーから連れてってやるよ
それが今生での三蔵と悟空の出会いだった。
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パシィィンンッッッ!!!! 「い・・・っ痛ーーっ!!!」 背後からハリセンで叩かれ飛び上がったのは寺院の本殿に供えられている ご進物を食べていた悟空。 「何すんだよっ!さんぞうっ!!」 「それはこっちのセリフだっ!!てめーはいったい何回それを食うなといったら わかるんだっ!!このバカ猿がっ!!」 「・・・だ・・・っだって・・・っ!!」 うるうるうる。 金色の瞳に涙をにじませ、三蔵を見上げる悟空。 その様は凶悪なほど可愛かったが三蔵は容赦しない。 「だってもくそもねーっ!!これが何回目かわかってんのかっ!!あぁっ?! 仏の顔も3度までどころじゃねーぞっっ!!」 そう、悟空が三蔵にこうして盗み食いの咎でハリセンで叩かれるのも通算30回 目になる。 悟空が三蔵に連れられ、この寺院にやって来て1ヶ月。 ・・・・・・・・・・・・つまり、一日に一回はこうして三蔵に叩かれているわけだ。 さすがに、元々気が長いほうではない三蔵。 いい加減、堪忍袋の緒が切れた。 「・・・・・け」 「・・・・え?」 「・・・出て行けっ!!」 「さん・・・・ぞ、う・・・」 雷の如く振り下ろされた言葉に悟空が呆然として三蔵の名を呼んだ。 だが、三蔵は聞こえなかったようにそれを無視して悟空に背を向けると、 本殿から静かに出て行った。 「よろしゅうございました。あの子供は寺院から出て行きました」 書類を手に持った年若い僧の一人が執務室で仕事中の三蔵にそんな声を かけた。 悟空の存在を苦々しく思っていた僧の一人だったらしい。 「・・・・・・・」 三蔵はそれを無視して手の書類を受け取る。 (さんぞー・・・) あの子供が出て行ったことなどわかっている。 (さんぞー・・・) うるさいほどに自分を呼ぶ声がするのだから。 (・・・さびしい・・・) (ひとりは・・い、や・・・) (だ、れ・・・・か・・・・・・・・・・) 「・・・・・ちっ、うるせーんだよ・・・」 三蔵の不機嫌な声に傍にいた僧がびくりと身をすくませた。 傍に置いておけば騒ぎを起こし、捨ててもこうして三蔵を呼ぶ。 まったく始末に終えない。 (・・・・ん・・・・・こ・・・・ぜ・・・・・ん・・・・・) そして、時おり無意識に呼ばれる見知らぬ名。 ・・・・・・いらいらする。 お前はいったい誰を呼んでいる? 誰なんだ? だが、聞いても悟空にはわからない。 不思議そうな顔をするばかり。 それが益々三蔵の神経を刺激する。 見知らぬ者の名を・・・・・・自分以外の者の名を・・・・・・・・・ 「・・・呼ぶんじゃねーよ・・・・・」 わかっている。 これは愚かな独占欲だ。 あいつが呼ぶのは自分の名だけでいい。 他の誰でもなく自分にだけすがっていればいい。 あの子供は心の中で呼ぶばかりで、口に出して云わない。 三蔵の名も、欲求も、何もかも。 欲しいならば、与えられたいならば口に出せ。 それをせずして俺はお前には何も与えてやらない。 だから、呼べ。 心の中、だけでなく。 その、『声』で。 そうすれば叶えてやろう、お前の『願い』を。 (さん・・・・・・・・・) 「・・・・?!」 ぷつりと途切れた呼び声。 仏頂面の三蔵の顔に狼狽の色が浮かんだ。 「さ、三蔵様っ何処へっ?!」 突然に立ち上がって出て行こうとする三蔵に僧が驚いて声をかける。 「・・・・・ヤボ用だ」 (・・・呼べよ) (今さっきまでのように呼んでみろっ!!) だが、声は聞こえてこない。 いったい奴に何が起きた? (悟空っっ!!) (・・・・・・・・・・・・・ぞう) かすかに、だが聞こえてきた悟空の声。 近い。 「・・・・悟空っ!!」 だが返事はかえらない。 「何処にいるっ!!」 「・・・さん・・・ぞう・・・・・・・?」 「悟空っ?!」 目をやったそこには打ち伏し倒れた、幼い姿。 「さん、ぞう・・・?どう、し・・・て・・・」 抱き上げればうっすらと開かれた瞼から黄金が覗く。 「馬鹿猿がっ!!呼べと云っただろうっ!!」 「・・・さん、ぞ・・」 「必要のないときばかり、声にしやがって・・・・何故肝心なときに頼ろうとしない! お前は俺が拾った俺のものだ。・・・・・何をためらう?」 「だ・・って・・・・オレ・・・・・さんぞうに、メイワクばっかりかけてるって・・・・・だから ジャマするな・・て・・・・・」 「誰が言った、そんなこと?」 悟空は首を振る。 「ふぅ、まったく・・・・・・馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、本当に底抜けの馬鹿だな お前は。お前は俺が拾ったものだ。俺の言うことだけ聞いてればいいんだよ」 「・・・・・さんぞう、出てけ・・・て言った・・・」 「ああ、食うなって言ってるのに聞かないからな」 「・・・・・・・・・・・・ごめん、なさい」 「何故、食べる?」 「・・・おなか、空いたから・・・」 「だったら言えばいいだろう」 「・・・・・・・・」 こいつは変なところで遠慮する。 遠慮するほうが被害が甚大だというのに。 「今度から、言え。何かが欲しければ・・・・・俺に言え。その口でな」 「・・・・・言っても、いい・・・?」 「いいと言ってるだろう」 三蔵に抱かれる悟空の顔がぱぁと輝いた。 「ったく、手間かけさせやがって・・・ほら、帰るぞ。お前のせいでまた仕事が 溜まってやがる」 三蔵の腰あたりの身長の悟空が法衣の裾を持って追いかける。 「・・・さんぞう」 「・・・何だ?」 「へへ・・・・・腹減った!!」 「ったく、帰ったら夕飯だ、それまで我慢しろ!」 「我慢できないっ!!腹減った!!」 減ったー減ったー腹減ったー、と繰り返す悟空に三蔵のこめかみがひきつる。 「うるせぇっ!!この馬鹿猿がっ!!」 スパァァンンッッ!!! 「痛ーーーっ!!さんぞうのばかーっ!!」 「三蔵」 「何だ?」 「オレが呼ぶのは三蔵だけだからな」 「・・・・・・・・・・・・・ばかが」 いいよ。 許してやるさ。 今のお前には俺だけなんだからな。 |
★あとがき★
はうぅ、難しかったです・・・・・。
三蔵と悟空の出会い編のあたりはどのサイト様でも書かれてるので
自分が書くときには違った感じのものにしようと思っていたので。
でも、出来上がってみると・・・・・どんなものでしょうね?
少しでも楽しんでいただければ幸いです♪
では、ご拝読ありがとうございましたm(__)m