雨が雨どいを伝い・・・・ ごぼごぼと、流れる音が・・・・地を打つ水音に混じる。 過去の心的外傷か、何かは知らないけれど・・・雨の日は不快指数が一気に 限界を超え、何をするにも鬱陶しく、億劫になる。 このまま闇に溶けてしまえたら・・・ 「・・・・・・・八戒?」 ふと、心細げに己の名が呼ばれた・・・・気がした。 うつろに、その・・・声がした方向を振り向けば、闇に黄金が輝いている。 「八戒?」 もう一度、その光が己の名を呼んだ。 「ああ・・・悟空です、か」 自身の声が遠い。 見れば、常と違う様子の自分に悟空が入り口でとまどっている。 「どうしたんですか、悟空?」 部屋は暗い。 口調は穏やかに出来るが、笑顔までは・・・・浮かべられないことを、悟空には 悟られないことを祈る。 「八戒・・・・痛いのか?」 「・・・え?」 「目が・・・痛いんじゃないのか?」 「・・・ああ」 思わず左手で義眼のはまる右目を押さえた。 「大丈夫、八戒?」 その僅かの間に近寄ってきた悟空が下から見上げてくる。 その眼差しはどこまで真っ直ぐで・・・・・・・ 「・・・・痛い」 「大丈夫か?どうすればいい?冷やす?」 思わず苦笑が漏れる。 義眼は別に痛みも何も感じはしていない。 勘違いした悟空は恐る恐る手を伸ばし、僕の左手に重ねた。 「痛いの痛いの、飛んでいけ!」 「・・・・・・・・・」 きっと、自分は恐ろしく間の抜けた顔をさらしていただろう。 闇夜であることが救いだった。 「痛いの飛んでいった?まだする?」 悟空はまるでふざけた様子なく、至極まじめに問いかける。 「・・・・・・・・・。・・・・・・・」 この子は・・・・悟空は・・・・どこまで純粋であるのだろう? 穢れを身のまとう者しか周りに居ないというのに、決してその穢れを受けず、 純粋で素直で真っ白い。 「痛いの痛いの〜」 返事をしない自分にまだ痛むのか、と同じ呪文を悟空は繰り返す。 その優しい手をとり、両手で包み込んだ。 「八戒・・・?」 「悟空・・・すみません、しばらくこのままで」 このままでいさせて欲しい。 その吐息と、肌のぬくもりを・・・・凍える身に与えて欲しい。 そのぬくもりが決して自分独りのものにはならないとしても。 「・・・うん、ずっとここに居る。八戒の傍に」 悟空の言葉に涙が一粒こぼれ落ちた。 雨は、涙に似ている。 |