-悟浄Birth-








 忌々しい・・・鬱陶しい。

 そんな風にしか感じられなかった己の誕生日。
 それを嬉しいと・・・楽しいと感じたのはあいつと会ってから。















「おはよーっ!」
 そんな声と共に扉が元気よく跳ね開けられる音がベッドの中の俺の耳に届いた。
 聞き覚えのありすぎる声。
 おそらく八戒が応対していることだろう・・・・・・・寝かせてくれ。

「・・・・・っごふ!」
 だが眠りの淵に沈みつつあった俺に強烈な衝撃が襲う。
 眠るどころか昇天してしまいそうになるほどに。
「起きろよっ!」
「・・・・・・・・てめ・・・・・・・悟空っ!!」
 重みをはねのけ、伸ばした手は寸前でするりとかわされた。
「へへーんだっ!」
「ったく!俺はつい今さっき帰ってきたの、お子ちゃまと違ってな!だから邪魔すんな」
 いつもならばそう言っても構わずにじゃれてくる。
 だが、今日は。
「ふーん、じゃ。そのまま起きてくんなよな!」
「・・・・・は?」
 予想外の悟空の言葉に眠気が飛んだ。
「絶対に出てくんなよ!」
 念を押すしまつ。
 そう言われると天邪鬼な性分の自分は嫌でも出て行きたくなってくる。
「んじゃ、起きるかな〜」
「起きるなっ!」
「お前が最初に起きろって言ったんだろ?」
「でもダメ!」
 ・・・・・気になる。
「いったい何を隠してんだ?仔猿ちゃん」
「サルじゃねぇっ!とにかく出てきたら・・」
「出てきたら?」
「八戒が『すっげぇ目にあわせてやる』・・・だって」
「・・・・・・・・・。・・・・・・・・」
 八戒まで加担しているのか・・・・・・・・しかもあいつの『すっげぇ目』・・・て(汗)
「・・・・・・寝てるわ」
 命は惜しい。寝てろというのなら寝ておこう。

「絶対にぜーーったいに出てきたらダメだからな!」
 悟空は最後まで念を押して扉から出て行った。





 いったい何を二人で計画しているのやら。
 八戒が居るだけに・・・・恐ろしい。
 悟空の前では「いいお兄さん」を崩さない八戒だが、はっきり言ってその内面ときたら
 悟浄なんか足元にも及ばないくらい極悪だ。
 確か去年も・・・・・・・・・・


 そこまできてはっと思い出した。
 今日は俺の誕生日じゃねぇか!・・・・忘れてたぜ。
 去年は散々なめにあった・・・いや、まぁ嬉しくなかったとは言わないが・・・・・
 死にかけたからなぁ・・・・ったくあいつらときたら悟空のこととなると見境が無いん
 だからなっ!
 でもよ。
 ということは。
 ということは、だ!
 
 
 悟浄はにやりと口元をゆがめる。


 なるほど〜。
「俺の誕生日祝いの用意してくれてるってわけか〜♪」
 途端に気分が上昇する。
 現金なものだ。

 今年も悟空がケーキを作ってくれるんだろうか?
 八戒が手伝っているというのならその可能性は大だ。
 今年こそ・・・・思う存分味わいたい。

 ・・・・・・柄にも無く待ち遠しい。
 ったく俺も人のこと言えねぇな〜。




































 ・・・・・・・・・て、呼びに来ねぇじゃねぇかっ!!
 いつまで待たせりゃ気がすむんだ!あぁ?
 明日になるだろうがっ!

 とうとう我慢できなくなって扉からそろりと覗いてみる。
 もちろん八戒の『すげぇ目』を警戒しているからだ。

 ・・・・・・が。

「・・・・・・おい、何寝てんだ!てめぇは!!」
 自分のためにいそいそとエプロンかけて(←悟浄の想像)料理を作ってくれていると
 思っていた悟空は食堂のテーブルで涎をたらして寝ている。
 そりゃぁねーだろ!おいっ!

「起きろっ!悟空!」
「んぁ・・・悟浄?」
 『悟浄?』じゃねーだろっ!
「てめーこんなとこで何してんだよっ!俺のためにケーキ作ってたんじゃ無いのか!?」
「ケーキ?悟浄のため??」
 一体全体何のことだ・・・と言わんばかりの悟空の様子に本気で落ち込んでくる。
「俺の誕生日だろうが、今日はよ!」
「誕生日・・・・悟浄・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁっ!」
 悟空はぽんと頷く。
「そっか」
 それで終りかよっ!
 何やらこの世の無情を感じるぜ・・・・。














「・・・・・・っぷ」
 ぷ?
 うな垂れた顔をあげれば悟空が顔を真っ赤にして噴出しそうになるのを我慢している。
 ・・・・・・・・・・・おい、まさか。

「いや〜・・・ここまで見事に騙されてくれるといっそ清清しいですね♪」
 背後を慌てて振り向けば八戒がにこやかに立っている。
「ぷははははははっっほ・・・・本気で騙されて・・んのっ!!!」
 そこで悟空の笑いが爆発した。


 ・・・・・騙されたのかっっ!?


「やはり河童だな」
 振り向いた戸口には三蔵がバカにしたような顔で建っている。
「てめーもか!」

「八戒が面白い見物があるからと呼びやがったんだ」
「だって八戒が普通じゃ面白くないからって」
「一度落胆すると喜びもひとしおでしょう?」
「・・・・・・・・・・・・・」
 ・・・・・俺ってもしかしてすげぇ不幸なんじゃ・・・・・・・・?


「それでは料理を運びましょうか、悟空」
「うんっ!せっかく作ったんだもんな!・・・とその前に」
 力なく椅子に座る悟浄に悟空が駆け寄る。





「誕生日、おめでとう!悟浄」
 
 ちゅっ・・・と頬にキス。

「・・・・・悟空」
「へへっ」
 あー・・・俺ってはマジ幸せかも・・・・・・・・・・・・・





「・・・っておいっ!待てっ!!お前、何だその包丁は!?三蔵も銃を向けるんじゃねぇ!」























 地獄だったり天国だったり・・・
 そんな騒々しい誕生日。
 だが。
 



 ありがとうよ。









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+あとがき+

悟浄、誕生日おめでとうっ!
とまず言わせていただきましょう(笑)
幸せなのか不幸なのか・・よくわからない悟浄の誕生日ですが(笑)
まぁ・・・ほんのちびっとはいい思いをしたので
良しとしましょう!(・・ということで/笑)


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