「う〜・・・っ」
「うむ〜〜ぅっ・・っ」
 夜の静寂に奇妙なうめき声が響く。




 
「あーづーぃーーーーっ!!」
 我慢ならんっ!とばかりに布団に伏していた悟空は起き上がった。
 その顔にはべったりと汗で髪がひっついている。
「あついっあついっあつーーーいいーーーっ!!」
 
 しかし、叫んでも暑さは一向に過ぎ去ることは無かった。











 西行きへの旅、運良く次の町に夜までに辿りついたものの、どこの宿もいっぱいで、
 ようやくとれたのは粗末な木賃宿だった。
 それでも野宿よりはマシだということでそこに泊まることになったものの。

 部屋に一つも窓が無いとは何事か?
 これが冬なら、隙間風が入らなくていいな、なんて暢気なことも言っていられるが、生憎
 今は夏。
 夏、真っ盛り、である。
 夜でも暑さが緩まるどころか不快指数は更に上昇している気がする。
 何とか己を騙して眠ってしまえばこっちのもの・・・と目をつむったが・・・いつになっても
 悟空に安眠は訪れなかった。

「もうダメっ!・・・・・八戒のとこ行こ・・・」
 そこで何故八戒なのか。
 理由は単純。
 八戒はいつだって悟空には甘いから。


 八戒の部屋は確か、自分のところから3つばかり離れたところだったと・・暑さで朦朧と
する頭で思い出しながらその部屋の前に立つ。
 そして・・・・

「・・・・・・・はっかい」
 外から声をかけてみると中で動く気配がした。
「・・・悟空ですか?」
「うん・・・」
 扉が開かれる。
 片眼鏡をはずした八戒が立っていた。
「どうしたんですか?」
 案の定、八戒は迷惑な顔一つせず悟空に問い掛ける。
「八戒・・・・あの、寝れる?」

「・・・・・は?」

 途中の過程を一気に飛ばした悟空の問いかけにさすがの八戒スマイルも固まった。
「いや、だから・・・その・・・暑くない?」
「・・ああ、なるほど」
 八戒はくすりと笑った。
「確かに今夜は暑いですからね。・・・眠れませんか?」
「うん。だって・・・・・窓も無いんだぜ、オレの部屋」
「窓が?・・・それは大変でしたね」
「八戒のところはあるんだ?」
「ええ、小さいですけどね。まぁ、無いよりは確かにマシでしょう」
「じゃあさっ!・・・・八戒のとこで寝て・・いい?」
 ちゃっかり自分の枕まで持ってきておいて、寝ていいも無いだろうが、悟空にとことん甘い
 八戒はこころよくどうぞ、と悟空を部屋に通してやった。

「あ、本当だ。窓がある」
 そんなことに感動されても困ってしまうが、悟空はその窓から入ってくる風に髪をさらした。
「まさか部屋割りの時に窓が無い部屋があるなんて思いませんでしたからねぇ・・」
「本当だよな!三蔵とかのところもやっぱあるのかなぁ?」
「さぁ、どうでしょう?」
「ま、いいか。んじゃ、オレ、ここで寝るから」
 そう言って板張りの少しばかり薄汚れた床に横になる。
「・・・・床で、ですか?」
「うん、だってベッドより床のほうが冷たくて気持ちいいんだもん」
 すでに床に転がってしまった悟空はどうあってもそこから動くつもりは無いらしい。
「・・・・仕方ありませんねぇ」
 苦笑した八戒は、自分のベッドからシーツを剥ぎ取ると、床に広げた。
「八戒?」
「そのままじゃ汚いですからね。これなら僕も一緒に寝れますし」
「・・うん♪」
 何やらご機嫌な悟空は、床をごろりごろりと転がって八戒のもとまでたどりつく。

「へへっ。さっきまですっげー嫌な気分だったけど・・・今は凄く嬉しい」
「僕もですよ」
 一緒に並んで寝転んで。

「さぁ、明日も早いですからもう寝ましょう。風邪をひいてはいけませんからタオルケットは
 かけておきましょうね」
 八戒はそう言うと悟空の上にタオルケットをかぶせる。
 もちろん、こんな宿にそんな上等なものなどあるはずは無いから八戒持参の品である。
「おやすみなさい、悟空」
「おやすみ、八戒」



 たまには暑い日もいいものですね。
 八戒は悟空の寝顔を眺めがら思うのだった。







*************************************
軽く八戒&悟空。
今日は・・・暑かったんです・・・(汗)

でもよく考えると・・・5月の最大のイベント、5月9日。
悟浄&悟空の日をすっかり忘れていた御華門・・ふ、不覚(涙)


BACK