謹賀新年





ドドドドド・・・・・

 朝から廊下を容赦なく物音を立てて走る音。
 

「こーんぜーんっ!!おはようっ!!」
 ババーンッと満面の笑顔で執務室に飛び込んで来た物体は最近無理やりに預け
られた養い子。

「悟空、今日は『あけましておめでとう』だ」
「?どうして??」
「今日から新しい年だからな」
「ふーん・・」
 もともとそんなこと気にもしていない悟空は興味なさそうな声を漏らすが・・・・

「んじゃ、金蝉!あけましておめでとうっ!!」
 にこにこ〜っvvと笑顔で見上げられれば緩みそうになる顔を無理やりにひきしめて
「おめでとう」と素っ気無く挨拶してやる。
 それでも悟空は嬉しそうだった。



 今年は良い年になりそうだ・・・なんてことを心の片隅で思っていた金蝉はそれが
とんでもない勘違いであることに一瞬後、悟るのだった。


 よく知る気配に振り向くと、悟空があけたままの扉のところに人影が二人。
「あけましておめでとうございます、悟空。それから金蝉」
 自分はついでか?とツッコミたくなる金蝉であるが、相手は『そうです』と答えかね
ないのでやめておく。
「おめでとさん、悟空・・・・・と金蝉」

「天ちゃん!捲兄ちゃんっ!!」
 途端に悟空が振り返り、二人にとととっと駆け寄った。

「あけましておめでとう!!」
 そして金蝉に教えてもらったばかりの挨拶を嬉しそうに二人にかえすのだった。

「新年早々何の用だ?」
 金蝉はそんな3人の様子を苦々しげに見つめながら不機嫌な声を漏らす。
「用が無ければ来てはいけないんですか?薄情な友人ですねぇ、悟空」
「えー、はくじょう?金蝉は『はくじょう』なの??」
 意味はわからないまでも悟空に「はくじょう」を繰り返されて金蝉の気分のいいはず
もない。
 眉間の皺がだんだん増えてくる。
「せっかく新しい年を迎えたんですからごちそうを食べないとね」
 そして捲簾に持たせていた包みをテーブルに置いて悟空の目の前でほどく。
「うわぁ・・・☆」
 10段重ねの特大お重の中には色とりどりの美味しそうな食べ物。
 悟空の目がその上をさまよい、きらきらと目を輝かす。
「たくさん食べて下さいね」
「うんっ!!」
 さっそく手をつけようとした悟空はふと動きを止め、椅子に座ったままの金蝉を
見た。
「・・・・・金蝉は食べないの?」
「・・・・・・・・・・食べる」
 残る二人の面白がるような笑顔が気に入らないが、人が食べているのは傍で
見ているだけなんてのは遠慮したい。
 どうせこの面子が揃うのはいつものこと・・・・割り切る金蝉だった。

 が、まだまだ甘かった。



 コンコン、と扉から響いたノックの音に目を向ければ・・・・・・・・。

「焔っ!!」
 悟空の嬉しそうな顔とは反対に、金蝉・天蓬・捲簾の3人の顔にぴしっと稲妻が
走った。
 金蝉は露骨に不機嫌な顔になるし、天蓬は笑顔ながらその目は笑っていない。
 

「あけましておめでとう、孫悟空」
「あけましておめでとう、焔!!」
 そんな3人の様子を一人は無視して、一人は気づかず挨拶をかわす。

「・・・貴様、何をしに来た?」
「何を?と・・・悟空に会いに来たに決まっているだろう」
 あくまでも直截的な相手のセリフに金蝉の額には怒りマークが浮かんだ。
 いつもいつも金蝉の神経を逆撫でせずにはいられぬ相手に悟空が必要以上に
なついているのが腹立たしかった。
 そんな金蝉の胸中も知らぬげに悟空は焔の手の中の包みに目をやった。
 天蓬が持ってきたほどの大きさこそないが、なかなかに大きい。
「差し入れだ、味は保証する」
「食い物っ!?やった〜っ♪♪」
「・・・・・貴様が持ってきたものなど安心して食べられるか」
「そうですよ、悟空にはちゃんとここに用意してあるんですから」
「え?オレならいくらででも食えるよ?」
 あっけらかんと言う悟空に”このバカ猿・・・”と眩暈がしそうになる金蝉。
「お前の胃袋は底なしか?」
「うんっ!」
「そこで肯くなっ!!とにかく!誰が作ったのかわからないようなものを受け取るわけ
にはいかない」
「わかればいいのか?これは俺の部下の是音が作ったものだ」
 ぶぴゅっ!
 焔のそのセリフに飲んでいた酒を噴出したのは捲簾だった。
「・・・げほっこほっ・・・・・マジかよ・・・・・・」
 どう考えても是音が作るよりはもう一人のほうが手先が器用そうだし、イメージに
あわない。
「人は見かけによらぬ。是音はかなりな料理好きだぞ」
「うんっ!すっげー美味そうな匂いがするっ!!」
 くんくんと犬のような仕草で焔の手元をうかがう悟空はお持ち帰りしたいほどに
可愛らしかったが、場所が悪い。
 この連中が大人しくそれを許すとは思われなかった。
「では、俺はこれで失礼する」
 どうやら言葉どおり、本当に悟空に会いに来ただけらしい。
 ・・・・・・・・・・・・暇なのか?
「えっ!?焔は一緒に食べていかないのっ?」
 身を翻そうとした焔の服の裾を悟空が慌てて掴んだ。
 そんな悟空を焔は穏やかな眼差しで見下ろすと・・・・・
「・・・・・一緒に食べたいのか?」
「うんっ!」

 (「「「悟空!!!!」」」)

 即答された返事に3人はがびーんとショックを受けた。
 




「オレ、皆と一緒に食べたいっ!!」


 その言葉にとりあえず胸を撫で下ろした一同。

「ねぇ、焔ぁ?」
 甘えるように縋られて断れるわけがない。
「では、誘われることにしよう」
「やった♪」
 冗談ではない、のは3人である。
 お互いの牽制だけでも疲れるというのにこれ以上厄介なものは増やしたくない。

 ・・・・が、それを言えば必ず悟空の笑顔は消えてしまうだろう。

 それぞれが悟空に向ける気持ちの種類に微妙な差こそあれ、ここにいる者皆が
悟空の笑顔を望んでいるのだ。

 ・・・・・・・・・・・・その笑顔を守るためにならば何をしても構わないほど。


 『・・・・・・ここは一つ我慢をするか・・・・』

 それぞれの胸の中で呟かれたのはそんな諦めの言葉だったとか・・・・・。












「いっただきま〜すっvvv
 
 周りには大好きな人たち。
 そして目の前にはたくさんの美味しそうなごちそう。

 悟空は”新年ていいな♪毎日新年だったらいいのに♪”と一人、とてもご機嫌なの
だった。









† あとがき †

・・・・これが御華門の新世紀最初の小説になります・・・・あうっ。
あけましておめでとうございますm(__)m
今年も頑張りますので
どうぞよろしくお願いいたしますっ!!








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