![]()
舞えよ、舞え 御手には風 眼には光 風光はそなたにつき従う いと楽しき姿なり |
「おーい、悟空」 「・・・ふみゃ・・??」 時刻は丑。 深夜2時過ぎ・・・。 もちろん悟空はすでに夢の中にいた。 けれど聞き覚えのある呼び声にぼんやりと意識を覚醒させる。 「起きろよ、いいところに連れて行ってやるからさ」 「ん〜〜〜」 目をごしごしと擦り、金色の眼を覗かせた悟空の前に居たのは、相変わらず 服装の趣味を疑わずにはいられない倦簾だった。 「??ケン兄ちゃん・・・??」 「金蝉は朝まで帰らねーから、今がチャンスなんだよ」 「ふ・・・・・・ん??」 倦簾の言葉は寝ぼけた悟空の頭では理解できない。 「・・・・・・はふぅ・・・」 「おいっ、寝るなって!」 再び夢へと戻りかけた悟空を、横たわる布団から抱き上げた。 「みゅ・・・っ!」 「ほら、行くぜ」 「・・・・どこ〜??」 「行ってからのお楽しみ〜てな♪」 「ほい、到着」 「あれ・・・ここ・・・??」 月光の下に満開の桜。 「そう、前に見に来ただろう、桜」 「ああ!うんっ!」 「それが散ってるのが見せたくてな」 倦簾の言葉とともに、悟空の目の前にひらひらと薄桃の花びらが舞い落ちた。 「うわぁ・・・」 その花びらへ手をのばす悟空を倦簾は地面におろした。 「あっ!あっちにも!・・・・そっちにも!!」 悟空はあちらへ、こちらへと花びらを求めて跳ね回る。 倦簾はその桜の根元に腰をおろし、常備しているとっくりを傾けた。 そして、そんな悟空を眺める。 月光は大地の愛し児と花びらを照らし、風は大地色の髪と花びらを揺らす。 (まるで踊り・・・・・いや、舞いみたいだな) 倦簾は桜の花びらを追いかける悟空の姿を見つめながらそう思う。 あれほど重い枷をつけながら、悟空の動きははそれを全く感じさせないほど 軽やかで・・・・・・繊細だ。 「綺麗だ、な・・・・・・・」 思わず漏れた感慨。 その声が聞こえたでも無いだろうに、花びらを追いかけていた悟空がくるりと 倦簾を振り返った。 金色の瞳が月光を反射してきらりと光る。 「ケン兄ちゃん」 「・・・・・・・・」 振り向いた悟空の笑顔があまりに華麗で。 思わず見惚れた倦簾は言葉をなくした。 「ケン兄ちゃん?」 気が付けばすぐ目の前に悟空が居て、何も口にしない珍しくも物静かな倦簾の 顔を覗き込んでいる。 「・・・・悟空」 倦簾は猪口を脇に置くと、そっと悟空の顔に触れた。 「綺麗だね!」 「ああ・・・」 お前がな、悟空・・・・。 「ありがとう♪」 「・・・・・ドウイタシマシテ」 天蓬なら言っただろう・・・”ミイラ取りがミイラになりましたね”と。 悟空を囚えるつもりが、反対に自分が囚われていれば世話はない。 どうやら、思っていた以上に自分はこの小さく愛しい生き物に嵌まっていたらしい。 心の中で倦簾は苦笑すると、不思議そうに自分を見つめる悟空の髪をくしゃりと かき混ぜた。 「好きだぜ、悟空」 「オレもケン兄ちゃん大好きだよっ!」 即座に返される嬉しい言葉。 けれどその”好き”はきっと飼い主には負けるだろう。 「ま、いーけどな」 この存在が傍に在るということだけで満足できる。 「そんじゃ、そろそろ帰るか」 「うん・・・眠い〜〜〜」 大きな目をばしばしさせる様子が大層可愛らしい。 「よしっ!」 「わっ!?」 倦簾は悟空を抱き上げた。 「寝てもいーぞ♪」 俺の腕の中でな。 「え〜〜〜寝れないよ〜」 そんなことを言っていた悟空も倦簾の歩くごとの適度なゆれに瞼が下がり、 宮に着いたころには夢の中の住人となっていた。 「今日は楽しかったな、悟空」 もちろん寝ている悟空は答えない。 それでも倦簾は満足だった。 たった一夜でも二人で過ごすことが出来たから。 「ほう・・・何が楽しかったんだ、そんなに?」 ぴきっと倦簾の体が固まった。 ぎぎぎ・・・と顔を向ければそこには、額に血管を浮き上がらせた保護者、金蝉が 腕を組んで睨んでいた。 「・・・金蝉」 「いったい何時だと思ってやがる」 「あー・・・いやぁ・・・・夜中」 ぽりぽりと額をかく倦簾の腕から金蝉は悟空を受け取る・・・というか奪いとる。 「てめぇは当分、立ち入り禁止だ!」 「お、おいっ!?」 慌てる倦簾の目の前で宮の扉はバタンッ!と凄まじい音をさせて無情にも閉め られた。 「・・・・・・・・・・・まぁ、機会はこれからもたくさんあるからな」 月を見上げてにやり、と笑った倦簾は、己も夢の中へ訪れるべく歩き出した。 願わくは夢の中でも会えることを・・・・・・・・・・・・。 |
† あとがき † 春に書く予定だった小説ですが思いのほか遅くなって まわりはもう新緑。 緑も綺麗ですが、やはり桜の薄桃の色は特別なんですよね☆ 本日は5月9日!! 悟空の日!!または悟浄&悟空の日!(笑) ということでどうしても今日UPしたかったんです♪ お楽しみいただけると幸いです(^・^) |