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「三蔵、俺、八戒のところに遊びに行ってくる」 「・・・ああ」 仕事の手を止めずさんぞうはおざなりに頷く。 「明日には帰るから」 「ああ・・・・。・・・・・・・・・・・・・あぁっ!?」 悟空のセリフが漸く脳内の奥深いところへ到達したときにはすでに遅く、悟空の姿は どこにも無かった。 悟空は足取りも軽く、森の奥にある八戒の家へと歩いていく。 木々もそんな悟空の邪魔をしないようにと枝を避け、道を開く。 「八戒居るかな〜」 事前に連絡の一つでもしておけばよかったのだが、悟空は直接言いにいくという 方法しか持たず、仕方なく今日まで来てしまった。 「・・・ま、いいか」 だが、いつまでも細かいことに悩まないのが悟空だった。 「こんにちわ〜っ!」 力いっぱいドアを開け放った悟空は、返事がかえってくるのをしばし待つ・・・・・・が。 室内はしーんとして物音一つしない。 「・・・居ないのか・・・よしっ!んじゃ、準備しよう〜♪」 留守宅に上がりこんだ悟空は腕まくりをするといつも八戒が悟空のために大量の お菓子などを作ってくれる台所へと足を向けた。 「えーと、何がいるんだっけ・・・?」 ごそごそと首から下げているポーチの中を探り、悟空は一枚の紙を取り出す。 「たまご・・と、小麦粉・・・生クリーム・・・砂糖・・・」 紙に書かれている材料をぶつぶつと唱えつつ、悟空は備え付けの冷蔵庫をあさり、 棚をのぞいたりしながら、首を傾げつつもテーブルの上に材料をのせていく。 「・・・・あとは、混ぜるだけだよ・・・な?」 不安を抱かせる悟空の言葉だった。 「全く、悟浄が余計な首を挟まなければこんなに遅くならなかったんですよ」 「・・・反省してます」 「言葉だけで終わらなければいいんですが・・・」 八戒の言葉にひきつり笑いを浮かべた悟浄はこれ以上言われないうちにと鍵を 取り出す。 二人とも、鍵をかけてもかけなくとも、そう盗まれて困るようなものは置いていないの だが、鍵を変えていればどちらも留守だということが相手にわかる。 「・・・おや、開いてますよ」 「何?俺は確かに出る前に・・・」 悟浄は扉の鍵を確かめる。 「・・・・・。・・・・鍵が吹っ飛んでやがる」 無残にも床に落ちた鍵の残骸を悟浄は拾い集めた。 「・・・・・。」 「・・・・・。」 二人は顔を見合わせる。 「・・・悟空ですね」 「悟空だな」 そして意見は一致した。 「でもおかしいですね、感のいい悟空なら僕たちが帰ってきたことにすぐに気がつく でしょうに・・・・」 「・・・遊び疲れて寝てんじゃねぇのか?家破壊されてねぇだろうな・・・」 「悟空はいい子ですから、そんなことしませんよ」 「・・・・・・・・」 すでに扉を破壊されているのにそのセリフは説得力の欠片も無い。 「でもどうしたんでしょうね・・・・悟空?」 声をかけつつ八戒は奥へ入っていく。 ついでに買出しの荷物はそっくりそのままに悟浄に預けている。 ガシャンッドタッゴトゥッ! 「・・・何か凄い音がしてんですけど・・・」 「台所のほうみたいですね・・・悟空、居るんですか?」 ダンッ! 台所へと続く扉が勢いよく開かれる。 「は・・八戒!おかえりっ!」 扉を背にして悟空が現れる。 「ただいま戻りました。遊びに来ていたんですか?そのエプロンとっても可愛いですよ」 「え・・・あ゛・・・・う、うんっ!」 どうやら今まで自分がエプロンなるものをつけていたことなどすっかり失念していた らしい・・・。 「・・・で、今さっきの音は何よ?」 後ろから悟浄がひょっこり顔を出す。 「な・・・何でもないって!」 手をぶんぶん目の前で振って懸命に否定する悟空の姿は『何かあります』と言っている も同然である。 「悟空・・・何か白いものがついてますよ?」 「え?」 八戒の指が悟空の頬を撫でる。 「・・・生クリームですかね?」 「う゛・・・」 「また盗み喰いでもしてたんじゃねーだろうな。飼い主さんはどうしたよ?」 「・・・飼い主?」 「三蔵はどうしたんですか?」 「仕事だよ。朝からこ〜んな顔して座ってる」 悟空は指でにゅ〜と目をつりあげてみせる。 「あははっ!それ見に行きてぇな」 「・・悟浄、あなた時々命が惜しくなくなりますよね・・・」 八戒が感心して頷く。 「それで今日はどうしたですか?」 茶々をいれる悟浄は放っておいて悟空に向き直る。 「えーと、あの・・ほら・・・・」 「誕生日おめでとうっ!」 「・・・・・・」 八戒の目が大きく見開かれ、嬉しそうに笑った。 「ありがとうございます、悟空。悟空に祝ってもらえるのが一番嬉しいですよ」 「へへっ・・本当は一番に言いたかったんだけど・・・三蔵機嫌悪そうで遊びに出られ なかったから・・・」 「大丈夫ですよ、悟空が一番最初に言ってくれましたから」 「ホントっ!?」 「はい」 素直に嬉しがる悟空と、何よりも一番に祝いたかったというその気持ちが八戒には 何よりも嬉しく、愛しかった。 「あー。俺も一応言おうとはしたんだけどな・・・」 言おうとしたら何か理由をつけてはぐらかされていたような気がする。 ・・・なるほど、このためだったかと今さら納得の悟浄。 「とりあえず、おめでとさん」 「ありがとうございます」 「八戒!八戒・・俺、誕生日プレゼント用意したんだ!」 「それは楽しみですね♪何を用意してくれたんですか?」 「・・・じゃ、そこの椅子に座って。すぐに持ってくるから!」 八戒が椅子に座ったのを確認すると悟空は再び台所へと舞い戻る。 「・・・まぁ、無邪気なもんで」 「羨ましいですか?」 「・・・・。・・・・・」 幸せいっぱい、という八戒の笑顔に悟浄は負けた。 今の八戒には嫌味は通じない。 「よいしょっと!」 扉を蹴り開けた悟空は体で扉が閉まらないようにしながら、手に大きなお盆を持って 出てくる。 その上には・・・・真っ赤なイチゴがたくさん乗ったショートケーキが。 「はいっどうぞ!」 「・・・もしかして、悟空が作ってくれたんですか?」 「うん!・・・前に悟浄にケーキ作ってやったときに八戒も欲しいって言ってただろ? ・・・練習したからあれより上手くなったと思うんだ」 確かに、前回の悟浄の時には形もいびつでかろうじて、ケーキだろうとわかる程度の ものだったが、今八戒の目の前にあるケーキは形もしっかりと、イチゴも綺麗に並べ られている。 「・・・練習までして・・・覚えていてくれたんですね・・・」 「・・・どう?」 「・・・もう、嬉しくて言葉もありません。悟空・・・本当にありがとうございます」 「じゃ、さっそく食わせてもらおうかな・・・」 シュッ!ザシュッ! 「・・悟浄、ひとのものに勝手に手を出さないでくれますか?」 悟浄の手元ぎりぎりにナイフが突き刺さる。 「・・・すみません」 俺の時には欠片ほどしか食わせてもらえなかったのに、という不平は心の中へ仕舞う。 「では、いただきますね。悟空」 「あっ、ちょっと待って!」 「・・・・?」 悟空は八戒の手を押さえると、自分がフォークを握る。 何をするつもりなのか、と眺めていた悟浄は次の悟空の行動に目を丸くして 言葉をなくした。 「・・・はい、あ〜〜んv」 八戒も驚いたのだろう、差し出された悟空の手を見て固まっている。 だが、そこは一筋縄ではいかない八戒のこと、にっこり笑うと・・・口を開けた。 「ん・・・美味しいですよ、悟空」 「ホントっ!?良かった〜〜v」 「もっといただけますか?」 「うんっ!あ〜〜ん」 「あーん」 そんなやりとりが延々と繰り返される。 「・・・・・・・・・。・・・・・・・・・すげぇ、むなしいんですけど・・・」 まるで存在を忘れ去られた悟浄は二人を視界に入れるのも馬鹿らしいとそっぽを 向くが・・声は聞こえるわけで。 「ところで今日は帰らないといけないんですか?」 「ううん、三蔵に言ったら泊まってもいいって」 「マジかよっ!?」 「・・・三蔵らしからぬ寛容さですね・・忙しいというのは本当なんですか・・・」 「泊まっていってもいい?」 「もちろん、歓迎しますよ?僕の部屋でいいですよね?」 「うんっ!八戒がいい。だって悟浄ってうるさいし」 「うるさいのはお前だ、お前!」 言い返すが、悟浄としても悟空が泊まっていくというのは嬉しいのだろう、何げに 口元が笑っている。 「それでは、買出しもしてきましたし、ご馳走を作りましょうか」 「やった〜っ!俺も手伝うな!」 「お願いしますね」 まるで家族団欒の風景である。 悟浄も何となくほのぼのとしてくる。 だが、それもキレた三蔵が乱入してくるまでだったのだが・・・・。 |
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八戒誕生日おめでとうございまーすっ!
祝って一番素直に喜ばれそうですよね(笑)
ん、微笑ましい(・・・?)