神に感謝を

その

愚かさに























 俺の近くには日だまりがある。

 『悟空』という名のその日だまりは・・・3年前、気まぐれに俺が拾ってきたもの。
 何年か前より、煩くて・・・自分を呼ぶ声があまりに煩くて。
 一発殴ってやろうと出向いた先で見つけた。


 悟空は呪符を何層にも張り巡らせて作り出された岩牢に閉じ込められていた。
 天界で大罪を犯した重罪人として何も口にすることも出来ない環境。
 そればかりか手足に身に余るほどの錘と鎖をつけられ、小さな身体をさらに小さく
 抱え込み、蹲る様は・・・・・・・・不快だった。
 
 考えていた通り、殴ってやろうと拳を握りしめた俺に、悟空が気配を感じたのか
 うつむいていた顔をあげた。

 
「・・・・・・・だれ?」
 まるで何も期待していないような、平坦で抑揚を欠いた声。
 金色の瞳は虚ろだった。
 
 あれほどに人を呼んでおきながら、その顔は何なのだ?と罵りたくなった。
 まるでお前なんか必要無い、そんな態度に更に不快感が増した。
 だから決めたのだ。
 こいつを連れて帰る、と。
 俺を呼んだからにはそれ相応の報いを受けさせてやる、と。


「何故、あんなところに居た?」
「?・・・さぁ、おぼえてない・・」
「・・・名前は?」
「孫悟空。それだけおぼえてる」
「それで十分だ」


 牢から出た当初、悟空は今では考えられないほどに静かだった。
 いや、『寝ぼけていた』というべきか。
 事実、その頃のことを悟空に聞いたところ、『ぼんやりしてよく覚えてない』なんて
 答えるほどだ。


 だが、寝ぼけていた悟空は、氷が溶けるようにゆっくりと、花が開くように鮮やかに
 感情を取り戻していく。
 静かに声無く微笑していた悟空は、喜びを身体全体で表し、大きな声で笑うように
 なり、我儘も言えば、涙も流し、怒って宿の壁をぶち壊したこともあった。
 もちろん、ぶっ叩いてやったが。


 そして。


『うるさい』
『黙れ』
『死ね』
 容赦ない言葉をかけた。
 気に入らなければ殴った。
 蹴ったこともある。
 
 それでも悟空は・・・・・・・・。
 何故か、俺の傍から離れようとはしなかった。
 まるで子供が親を慕うように、悟空の視線はいつでも俺に向いていた。

 『一途』に。


 他の奴なら鬱陶しいはずのその視線が・・思いの他、快いものだと自覚するのに
 そう時間はかからなかった。



 悟空の思いには邪気がない。
 下心がない。
 見返りを求めるわけでもない。
 ただ・・・『与える』だけ。



 ああ、笑えてくるな。
 自分は何も与えはしないというのに、相手には求める。
 自分はとことんまで『人間』だ。
 汚く、いやしく、強欲な。
 

 ・・・・反吐が出る。


 だから。
 そんな思いを抱かせる悟空を捨ててやろうと思った。
 気まぐれに拾ったものだ、気まぐれに捨てて何が悪い?































 ちっ。
 それが未だに捨てきれず、ここに在る。
 
「さんぞーっ!これ見て見て!」
 そんな悟空の声とともに、ひゅーっと白いものが目の前を過ぎる。

 白い・・・・・。



 蘇る、橙色の既視感。
 青空に映える・・その色。


 


「・・・・・・っの馬鹿サルーっ!てめぇ書類で遊ぶなといくら言ったらわかるんだ!」
「痛いっ!だって暇だった・・・って痛いって!」
 ばしばしと縦横無尽にハリセンで叩き、しゃがんでうらめしそうに見上げてくる
 悟空にもう一発、拳骨をくれてやった。


 そして唐突に、思った。





 ダメだな。

 俺は・・・・こいつを捨てられない、らしい。
 しかも、『捨てたくない』とくる。
 
 そう。
 捨てたくない。
 手放したくない。
 

 誰にも。
 



 渡したくない。
 





「三蔵?」
「・・・・・・・」
 この存在を、誰にも・・・・・渡さない。
 
「っ三蔵っ!?」
 力強く抱きしめた腕の中の小さな身体。


 こいつは俺のものだ。
 俺だけのものだ。
 
 この視線も。
 この身体も。
 この心も。

 全て、俺のものだ。






























感謝しよう
神に。

この存在を地上に堕とした天界に。

俺の手元に引き寄せた
その運命に。












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■あとがき■

いや、クリスマス色に染まる町を友人と歩いていたら
ふと思い浮んだネタでございますv
独占欲の塊の三蔵v御華門のツボです♪
しかし
一緒に歩いてた御華門の頭の中でそんな考えが生じていたとは
きっと友人は思いもしなかったことでしょう・・・フフフ。


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