ある日。 その部屋は奇妙な沈黙に包まれていた。 いつもならば”こんぜんっこんぜんっ!!”・・・と騒がしい子供が部屋の片隅で 小さくうずくまり無言で仕事をしている自分を見つめているのだ。 かきかきかき・・・さらさらさら〜、パラ。 じ〜〜〜〜っっ。 かきかきかき・・・さらさらさら〜、パラ。 じ〜〜〜〜〜〜〜ぃぃっっっ。 「・・・・・・・」 金蝉は心の中で嘆息した。 『仕事が済んだら遊んでやるから静かにしてろ!!うるさくしたら今日はメシ抜き だからなっ!!』 確かに悟空にそう言った。 遊ぼうと周囲をうろちょろされ、仕事が進まずいらついたのだ。 だが・・・・・・・・。 『いつ終るのっ?』『早く、遊ぼうっ!!』・・・という視線をがんがん浴びせられる ことがこれほど気になることだとは思わなかったのだ。 相手が普通の奴なら問答無用でしばき倒してやるところだが・・・・・・ 一応、約束をしてしまったのは、自分であるし・・・・・ 金蝉は書類に落していた視線をあげた。 途端に悟空がぱっと床から立ち上がる。 ・・・・・背後にぶんぶんと振られる尻尾が見えるような気がするのは目の錯覚 なのだろうか・・・・・? 「終ったのかっ?!」 ・・・・・・終っていない、ぜんぜん、まったく。 ・・・・・・ふぅ。 金蝉はもう一度、ため息をついた。 「・・・・・行くぞ」 金蝉の言葉に悟空の顔に笑顔が広がった。 ・・・・・たく、俺も甘くなったもんだ。 片腕にじゃれつく養い子の重みを感じながら金蝉は空を見上げた。 金蝉は花畑を縦横無尽に走り回る悟空を見ながら木陰に座っていた。 蝶を追いかけたり、追いかけられたりと栗色の髪がぴょんぴょんと元気よく 跳ね上がっている。 常世の春しか存在しない世界・・・・天上。 金蝉にとっては生温く、吐き気のするこの世界。 それが。 美しいと感じたのは。 心地よいと感じたのは。 ・・・・・・・・・あの幼子の浮かべる、曇りない笑顔のおかげ。 そんな自分の心境の著しい変化に戸惑うことも多い。 けれども。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嫌ではない。 むしろ。 「こーんぜんっ♪」 物思いにふけっていた金蝉の目の前に突然の悟空の笑顔のアップ。 ・・・・・・少々心臓に悪い。 「・・・・・何だ?」 「はい、これあげる♪」 花で編まれた小さな指輪・・・・・・・・・・・少々潰れてはいたが。 「・・・・・?」 疑問符を浮かべる金蝉に悟空は手をとり、右の薬指へとはめた。 「・・・・・・・?」 ますますよくわからない。 「天ちゃんがね!!一番好きな人に作ってはめてあげるんだって言ってた!! 俺の一番好きなのは金蝉だからあげるっ!!」 「・・・・・・・・・」 この子供はどうして赤面するようなセリフをこうも堂々と臆面なく吐いてくれるの だろうか・・・・こちらが照れる。 しかし、天蓬・・・・お前はいったい何をこいつに教えてやがるんだ? ちょっとこれから遊びに行かせることをやめようかと思う金蝉である。 そんなことを考えていたものだから金蝉の眉間に皺がよってただでさえ無愛想な 顔がさらに凶悪になっている。 それを見る悟空も、自分の指輪が気に入ってもらえなかったのかと、目に涙を 貯め始めた。 「・・・・・やっぱり、いらない・・・?金蝉・・・」 うるうる。 うるるるるるぅ。 ・・・・・・・・・・・・可愛すぎ(爆) 自分でどう思っていようと所詮、悟空に篭絡されている金蝉童子。 「・・・・ありがとう、悟空」 そっと壊さないように指にはめられた花輪に触れる。 途端に悟空の目からはするすると涙がひいていき、笑顔が現れた。 「こんぜん、だいすきっ!!」 「・・・・・・俺もだよ」 他の誰にもその気持ちを聞かせてやる気はさらさらないが。 お前にだけは。 この想いを伝えておこう。 太陽のような笑顔で笑いかける、悟空・・・お前だけには。 「ところで、悟空。どうして右手なんだ?」 「え?・・・左手じゃないの?」 「・・・・・・・」 「・・・?」 悟空は自分の手で示す。 「こっちが左手でしょ?」 ・・・・・・・向かいあう自分にとってはそれは右手である。 「・・・・・・・・・・・」 どうやら、まだまだ春は遠そうだ。 そう思った保護者、金蝉だった。 |
†あとがき†
ご拝読ありがとうございましたm(__)m
何となく出来上がってみると『青天〜』の天界バージョンのように
なってしまいました(^^ゞ
御華門、実は三蔵より金蝉のほうが好きだったりします。
・・・でも外伝は一回しか読んだこと無いんですが・・・(爆)
ということでかなり偽者と化してますが、えーそこはどうぞご容赦を!
では、失礼いたします!!!