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西へと向かうジープの車上はいつになく・・・滅多にないほど静寂に満ちていた。 朝。 日の出からまだ数刻も経っていない時間に三蔵一行は宿を出た。 これからしばらく砂地が続くため・・『暑くならないうちに』というのが理由だ。 とにかく、出発してしばらくは、いつもの一行だった。 「悟浄っ!ちょっと眠いからってオレに寄りかかるなよなっ!」 と悟空が言えば・・・ 「お子様と違って俺は夜は色々忙しいのよ。ちょっとくらい肩貸せよ」 と言い返す。 「・・・エロ河童!!」 「チビ猿!」 そして、低レベルの言い争いに発展するのはいつものこと。 そして、三蔵の声がかかるのもいつものこと。 いつもいつも・・・こいつら・・・今日こそはきっちりシメる! ・・・・・・いや、待てよ・・・・ しかし。 「悟空」 確かに三蔵はいつものように声をかけた。 だが、その口調はいつものキレる寸前のような押し殺した声ではなく、『三蔵でもこんな口が きけるのか?』と思われるほど穏やかだった。 そして。 たまには俺の所有物だってことをわからせておかないとな・・・。 「こっちに来い」 命令口調で指示した場所は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・三蔵の膝の上。 「「・・・・・・・・は?」」 当然、いつものように銃が乱射されると身構えていた悟浄と悟空は、しばらく呆気にとられた後 同時に間抜けな声をあげた。 馬鹿どもが・・・まんまとハマッてやがる。 「あの・・・三蔵?」 悟空がおずおずと声をかける。 「何だ?さっさと来い」 どうやら聞き間違えでは無かったらしい。 しかし、ジープがけっこうなスピードで走行している最中、移れとは無茶を言う。 悟空が、どうすればいいかと迷う中、助手席からぬっと手が伸びてきた。 何をとろとろしてやがる! 来いって言ってんだから素直に来ればいいんだよっ! 「・・・・っ!」 三蔵は驚く悟空の体を捕らえると、迷うことなく自分の膝の上へ座らせた。 ・・・・案外、軽いな。 そして、冒頭にかえる。 それは不気味な静けさだった。 『たまには素直になったほうがいいぜ〜♪』とフザケまじりに言う悟浄も、顔をひきつらせたまま 三蔵の行動に頭を混乱させている。 運転席に座る八戒はいつもの笑顔を浮かべてはいるものの三蔵が口を開いて以来、1ミリたり ともその表情は動いていない。 ・・・相当の衝撃だったらしい。 こいつにまで効果があるとはな・・・・くくくく。 当の悟空はといえば。 恥ずかしさに顔を真っ赤にさせてうつむいていた。 三蔵に拾われたころならまだしも、いくら15,6に見えると言っても悟空は18になる。 それが『膝の上にだっこ』とはいくらなんでも恥ずかしすぎる。 背後から抱えられるために前方の景色がよく見える・・・ことだけがせめてもの救い。 「さ・・・三蔵・・・・っ」 「何だ?」 思い切って放してくれるようにお願いしようと口を開いた悟空は耳に響いた心地よい声に 一瞬、身を震わせた。 どうせ、放してくれとでも言うつもりだろうが・・・そんなことは聞いてやらねぇな。 「・・・ぁ・・・と、その・・・この格好は、ちょっと・・・・・」 嫌かも・・・と小声で訴えた。 「そうか。・・・・では、こうしよう」 解放してもらえるのか・・・・と安堵したのもつかの間。 悟空は更なる混乱へと叩き込まれた。 ・・・・ああ、いい案が思い浮んだ。 こうしてやろう。 三蔵は悟空の体を今度は自分の方へ向けて座り直させたのである。 キーーーッッキュルルゥゥッッ!!! ジープが走行スピードそのままで凄まじい蛇行運転になった。 八戒の同様の程がわかるというものだ。 「ぅわっ!!」 悟空も突然のことに体勢を崩し、反射的に三蔵の首に手をまわしてぎゅっと抱きついた。 ・・・ちっ。怪力でしがみついてんじゃねーよ! ・・・・・だが、まぁ悪くはねぇけどな。 「・・・・・・」 ただ一人後部座席で扉にしがみついていた悟浄はそんな二人の様子を目にして 羨ましいと思う、悲しい男のさが。 そして、次の街に着くまで・・・・悟空はその体勢のままだった。 悟空は俺が拾った、俺のものだ。 嫌がっても放してなどやらん。 他の奴に譲る気もない。 せいぜい、眺めて歯噛みしろ。 こいつは俺のものだ。 翌日のジープの上。 悟浄と悟空はほどよく騒がしく、また三蔵もいつものように銃を連射し、八戒は笑う。 『普通』だった。 三蔵さまご乱心。 あの日のことは悟浄、悟空、八戒・・・3人の心の奥深くにしまわれ、無かったことに されたらしい・・・・・・・・・。 愛している、悟空・・・・。 |
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◆あとがき◆
今までUPした小説の中で一番三蔵さまイイ思いしてるのでは・・・(笑)
やっぱり人は素直なのが一番いいということなのでしょうか・・(笑)
三蔵さまの心情が無いですか?
キーワードは『すべて選択』(ニヤリ☆)