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孫家の新年のはじまりは・・・・・・いつもの如く騒々しかった。 「うわーっ!!!」 「何事ですかっ!?」 「何だぁっ!」 「うるせぇぞっ!」 2階の悟空の部屋から発せられた悲鳴に天蓬、倦簾、金蝉が駆けつける。 部屋に入った3人の視線の先には・・・・焔に頭を撫でてもらっている悟空の姿があった。 「よしよし、もう大丈夫だぞ。悟空」 何が大丈夫なのか?何故焔がここに居るのか? 3人の頭にはぐるぐると疑問が巡る。 「ふぇーん・・・っ」 そんな3人に構うことなく、焔の腕の中、悟空はぴーぴーと子供のように泣いている。 20を裕に超えた人間にそんなことをされでもしたら問答無用に殴り飛ばしたくなるのは 世の常だが・・・未だ映画館を高校生料金で入ることのできる悟空では、どうしたのかと 心配にもなってくる。 「・・いったいどうしたんですか?」 いち早く我を取り戻した天蓬がさりげなく、焔の腕の中から悟空を奪いつつ、今は涙で 滲んでしまっている悟空の金色の瞳を覗きこんだ。 「・・て、天ちゃん・・っく・・っ」 ひくひく、としゃくりあげる様は・・可哀想そうだが、ひたすら可愛かった。 「ったく、新年早々どうしちまったんだ、仔猿ちゃんは?」 倦簾も近寄り、頭を小突く。 「倦・・兄ちゃん・・っ」 げいんっ! 「・・・・・っいったーいっ!!」 そこへ容赦なく金蝉の拳骨が悟空の頭を襲来した。 「正月からうるせーんだよ!何なんだ!?理由を言え、理由を!」 一番キレやすく、しかし外面に出ないだけで一番悟空のことを心配している金蝉は ひとまず悟空の涙を痛みで止めた。 「金蝉・・・だって・・・」 「「「「だって?」」」」 4人が悟空に迫る。 「・・・金蝉が今年はおせち抜きだって言ったーーっ!!」 「・・・・・・。」 「・・・・・。」 「・・・・・。」 「・・・・・・。・・・・・・・・。」 しばし沈黙した後、3対の瞳が金蝉に向かう。 その視線は冷え冷えと、殺気さえ感じさせる。 「・・俺は、そんなことを言った覚えはない」 苦虫を潰した顔で金蝉は無実を訴えた。 「本当ですか?」 「こんなことに嘘をついても仕方がないだろうが」 「まぁ、そうだな。おせち作るのは天蓬の仕事だしな〜」 「悟空、いったいいつ、そんなことを言われたんだ?」 焔が悟空に優しく問うた。 「えーと・・・・」 悟空は視線を天井に上げ・・・・・考えることしばし、ぽんっと手を打った。 「夢の中!」 げしっっ!! 再び、金蝉の怒りの鉄拳が悟空の脳天に炸裂した。 「ったく、いい加減にしろ!」 漸く、全員が食堂に集まりおせちを囲んだ。 金蝉だけは未だに不機嫌な面持ちを崩さないでいたが・・後は甲斐甲斐しく悟空の世話を している。 「おもちは何枚いりますか?」 「うーんと・・10枚!」 「悟空、髪が跳ねているぞ。直してやろう」 「ありがとっ!」 「・・・・・・。・・・・・・」 金蝉はひっきりなしに襲う頭痛に眉根をしかめる。 「どうしたんだ、金蝉?」 その頭痛の元凶である悟空が無邪気に金蝉の顔を覗き込んだ。 「・・・。・・・まだ、挨拶が済んでねーだろうが」 「・・・あっ!」 金蝉の言葉に悟空は椅子から降りて、気をつけ!の姿勢で居住まいを直した。 「金蝉、焔、天ちゃん、倦兄ちゃん。 あけましておめでとうございますっ!!」 「・・・おめでとう」 「おめでとう、悟空」 「おめでとさん」 「おめでとうございます、悟空」 親しき仲にも礼儀あり。 漸く、孫家にはなごやかな雰囲気がもどってきた。 「さてっと!」 「おや、悟空どこかにお出かけですか?」 朝食の片付けをしていた天蓬が出かける用意をしている悟空に問い掛けた。 「うんっ!年始まわり!」 「・・・・元旦からですか?」 「うんっ!三蔵のとこ行ってくる!」 「校長先生のところですか?・・・居ますかねぇ、お正月は本業のお寺のほうが忙しくて 家のほうには戻って来られないと伺ってますが・・・」 「だって光明が遊びにいらっしゃい、て言ってたぞ」 「そうですか?だったら居るのかもしれませんね。外は寒いですから、暖かくしていって 下さいね。夕食までには帰ってくるでしょ?」 「うんっ!」 「ごちそう作って待ってますからね♪」 「はーいっ!」 元気よく返事をした悟空は、天蓬に渡されたマフラーと手袋をはめて外に飛び出した。 「三蔵ーっ!光明ーっ!あけましておめでとうっ!!!」 三蔵の家にたどり着いた悟空は玄関先で叫んだ。 しばらくして、ぎーっと玄関の扉が開く。 そこには不機嫌な顔をした三蔵がいつもより眉間に深く皺を刻んで、袈裟姿を覗かせた。 「あっ、ハゲだ!」 「誰がハゲだっ!!」 「あ・・違った。坊主だった!」 悟空の頭の中では坊主=ハゲの公式が出来上がっていたらしい。 「その格好、何?三蔵」 「さっきまで寺に居たんだよ」 ったく、面倒くせー・・と愛用のマルボロをふかした。 「光明は?」 「お師様なら中にいらっしゃる。お前はうるさいから中には・・」 入るなよ・・と言おうとした三蔵の背後から明るい声がかかった。 「悟空!来てくれたんですね〜♪」 三蔵とは対照的ににこにこ顔で悟空を迎える光明。 「待っていたんですよ♪さ、中に入って下さい。ごちそうを用意してますからね♪」 「わーいっ!」 「・・・・・・。」 いつにも増して幼い様子の悟空に三蔵は・・・・呆れかえって反論するのも馬鹿らしく 二人の後に続いた。 「はい、お年玉です♪」 「ありがとう!光明♪」 「・・・・・おい」 「今年は教師2年目ですからね、ちょっとUPですよ〜」 「やったーっ!」 「おいっ!」 三蔵を無視してのやり取りに口を挟まずにはいられなかった。 「何、三蔵?」 「・・・もしかして去年も貰ったのか?」 「うんっ!」 「・・・・・・・・・・。・・・・・お前はそれでも教師かーーーーっっ!!!」 「何怒ってんだよ、三蔵。あ!三蔵もお年玉欲しい?」 「誰がいるかっ!」 「おやおや、可愛くありませんねー」 「ねー」 「・・・・・・・・・・・」 息がぴったりらしい光明と悟空。 この二人に組まれては三蔵に勝ち目は無い・・・・全くこれぽっちも。 「悟空、外は寒かったでしょ。甘酒飲みますか?」 「飲む!」 光明は悟空の言葉に頷くと、よくある水筒を取り出した。 「・・・・・お師さま、それはもしかして・・・・」 「ああ、お寺で配っていたのを貰って来たんですよ♪」 「・・・・・・。・・・・・」 どこの世界に無料で配っているものをポットごと貰ってくる人間が居るだろう・・・・。 三蔵は寺の光明にポットを差し出された坊主に哀れみを覚えた。 ・・・・きっとあの笑顔に断りきれなかったに違いない。 正月から三蔵の煙草の消費量は増えていくのだった。 「あはは、でねー三蔵!焔がねーっへへへへっ・・・あはは・・・っ」 5分後。 そこには甘酒で出来上がった悟空が三蔵の背中をばしばしと叩いていた。 体格は小柄でも力は並以上、馬鹿がつくほどの悟空の容赦ない平手打ちはおそらく 服ごしにでも三蔵の背中にくっきりと紅葉マークを作っているだろうことは間違いない。 「・・・・・・っ(怒)」 初めのうちこそ酔っ払いの相手など出来るものかと無視していた三蔵だが、いい加減 短い堪忍袋の緒が切れはじめる。 ・・・・今度何かしやがったら絶対に放り出す! 日本酒の入ったグラスを握り締め、三蔵は決意した。 「だからー、三蔵にも!」 何が自分にも、なのか全く不明だが・・・悟空の中では話が続いているらしい。 必死に我慢しろ!と己に言い聞かせている三蔵は・・・・一瞬動作が遅れた。 ぅちゅーっv 「・・・・・・・っっっ!?」 悟空が三蔵の頬にキスをした。 「へへ〜っ」 「・・・・・な・・・・」 驚きに目を見開いた三蔵の目の前で悟空はへらへらと笑いながら・・・・・・・・ バタンっ! 後ろへひっくり返った。 「・・おいっ!?」 慌てた三蔵が悟空を覗きこめば・・・・すーすーと寝息をたてている始末。 「・・・・・。・・・・・」 「儲けましたね、三蔵」 背後から光明が意味深な言葉を投げかけた。 いったい何がどうして『儲けた』なのか・・・・・。 「・・・・・。・・・・・」 聞かないほうが身のためだろう。 「・・・・ったく、馬鹿サルが・・・」 「・・んにゅ〜・・・へへ・・もう・・おなかいっぱーい・・・」 「・・・・・。・・・・」 夢の中まで食うことだけらしい悟空に、今度こそ三蔵は肩を盛大に落としたのだった。 新年から悟空の周りは慌しい。 きっと今年も騒がしく、楽しい一年となるだろう。 |
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++++あとがき++++
ようやくお正月小説UP!(汗)
今年もどうぞよろしくお願いいたします!!