作: Miki 様









神様、今が最後の瞬間(とき)ならば俺の願いは、ただ一つだけです。
愛する人の、淫らな唇で俺の欲望を受け止めてほしい。
それが、叶うのならば俺は笑って死んでいけるでしょう。
だから、神様…お願いです。
愛する人の、心を一瞬だけ俺に下さい。























「……だめ、だめだ…よ」
「……………」
「だめ…だったら…」
「こんな状態でよく言えたもんだな。ほめてやるよ」
窓から月明かりが覗く宿の一室。
二つあるベッドのうちの一つで、少年が身もだえながら甘い抗議の声を漏らす。
その傍らではそんな少年に目をくれながら、口だけで笑う男。
「ど…してなの…?」
少年がゆっくりと息を吐き出しながら、男に向かって聞く。
「…どうしてかって?んなの、決まってんじゃん」
「……ん…?」
「お前を犯るためだよ」
「!」
食事中、男―――――――悟浄はこっそり悟空だけに媚薬を盛ったのである。
食べることに集中してた、悟空はそれを気づかなかった。
八戒と三蔵は偶然一緒に席を立ったため、悟浄にとっては好都合だった。
だってあの二人がいたら、絶対この『作戦』は成功しなかったから。
悟浄は肩を震わせながら荒く息をつく悟空を冷ややかに見下ろす。
愛しい人が乱れゆく様はこれ以上ないほどの、悟浄に楽しみを与える。
本人は媚薬を盛った奴を睨んでるつもりらしいが、その顔は頬は紅潮し、唇はチェリーピンク、金の瞳は潤んでシャツの襟元から覗く首筋は薄く朱に染まっている。
自分の両肩を抱きしめるようにベッドにうつぶせになる悟空。
ズボンと下着は悟浄がさっさと脱がしてしまったので今着ているものはシャツだけだ。
「悟空、そろそろ限界なんじゃないの?」
「…な…にが…だよ!…」
「下。触ってほしいんでしょ?入れてほしいんでしょ?」
「う…るさい!」
強がってもどんどん躰は熱くなるばかり。
どうしたら、いい?
助けて…
悟空は涙が出そうになった。
悟浄が悪いのだが、自分が惨めに思えてきた。
なぜ………?
なぜ、悟浄は自分にこんなことを……?
だけど、その問いには先ほどと同じ答えしか返ってこない。
自分を見下ろしてる悟浄の表情はどことなく、悲しげに見えるのは気のせいだろうか。
確かに笑っているのに、目元は泣いてるように見える。
まるでこの行為を謝ってるかのように。
「…ご…じょうはさ、おれのこと…きらいなの?…」
悟空が悟浄に問う。
一瞬だけ、悟浄の顔に変化があった。
悟空はその変化を見逃さなかった。
「おれには、ごじょうが…泣いてるように見えるんだ」
「せめて、なんでこんなことするのか理由ぐらい…おしえて」
「………俺は、別にお前のこと嫌いなわけじゃない」
「じゃあ、どうして?」
「わかんねぇ。俺もなんでこんなことしてんのか自分でもよくわからねぇんだよ」
「……ごじょうはさ…心では泣いてるんだよね…」
「………」
「わかるんだ。なんでだか…」
悟空はまっすぐ、悟浄の瞳をとらえて言う。
「……もっと、ひどくしてくれてもいいんだよ?」
「!?」
「…なんでこんな、やさしいの?」
「やさしいだって!?お前、薬の所為でホントに頭、どうかしちまったのか!?」
「ううん」
「じゃあ、これのどこがやさしいってんだよ!俺は、お前に薬を盛ってお前を犯そうとしてるんだぞ!?」
「そうだね」
「…そうだねって……」
「でもさ、悟浄の目。謝ってるもん。ごめんって」
突然、何を言い出すんだろう。この子供は。
心を見透かされそうな、強い瞳で相手を射抜く。
だけど、その顔は穏やかな笑みで。
もう、参ったなぁ。
ククッ
「悟浄?」
「なんなんだよ。お前、普段は鈍いくせにこういうときは、鋭くて」
「…………」
「お前、苦手だ…」
「そう?」
「…でも、…好き…なんだよなぁ」
悟浄が、目元を手で隠しながら悟空に告げる。
「…何度も、好きだって言おうとしたけど……だめだった。失敗する夜にに胸が苦しくてたまんなかった。…俺の気持ち気づかないみたいだから、お前は、毎朝『おはよう』って言うんだよ。その度に、俺は罪悪感に襲われたんだ。俺はお前にこんな汚い気持ちを持ってるのに、お前は純粋に俺を仲間だと言う…」
「…だったら、こんな気持ちにケリつけようとね。…お前や三蔵、八戒達に、責められて、同情の哀れみで見られようが、狡いが、俺はこの旅を終わりにするつもりで、したんだ。…つらかった」
悟浄も悟空も自分たちの頬に、涙が流れていたが、気づかなかった。
「…ごじょう…俺は、お前にあやまらなきゃいけない」
「…………」
「俺は、お前の気持ち、知ってたよ」
「!?」
「知ってたのに、気づかない振りしてた。あの頃の、俺にはお前の言葉は受け止められそうに、なかったから。逃げてたんだ。…ずるいのは、悟浄じゃなくて、俺だよ」
「ご…くう?」
「…ごめん…悟浄…」
………………
「でも、な、今はお前のこと素直に受け入れられそうな気がするんだ」
「え?」
「今更だと、思うかも知れないけど…。こんな、俺だと知っても、まだ好きだと言ってくれるのなら、…抱きしめてほしい。……今まで好きだった『悟空』と、違うと思ったら、今すぐ、この部屋から出ていってくれ。……じゃないと、俺がもっと惨めになるだろ?」
悟空は体を半分、ベッドに沈め、静かに悟浄に問う。
悟浄は、とまどっていた。
悟空の口から、聞くこともないと思っていた言葉が洩れたから。
だが、悟浄の気持ちは最初から決まっていた。
「…悟空、お前が惨めになることなんかないんだ」
悟浄が愛したのは、すべてを含めた悟空であって、夢に見るような自分だけの想像の悟空じゃない。
答えは、悟空のそばにいること。

「悟空、愛してる。ずっと、お前のそばにいたい。いいか?」
「バカ。聞くまでもないだろ?俺も、お前に側にいてほしい。俺も、お前の側にいたいから。いつでも、俺を腕に抱きしめててほしい」











I could save the world
Since the night your love saved me
Maybe I can't save the world
But as long as you believe
Maybe I could save the world




■あとがき■

タイトルは、Bon Joviの、曲からなんですが・・・。
最後の、英語の文。
あれは、Bon JoviはBon Joviでも、「Save the world」って曲からなんです。
「CRUSH」っていう、アルバムを聴いて書いてたのですが・・・・。
最初はタイトルも「Save the world」にしようかと思ってたのですが、なんとなく神
様サンキューっていう気分になりまして。



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