『空』―目に見えぬ物―を悟る者、ですか。
では僕の心の中のこの気持ちも悟ってくれるのでしょうかね。
黒髪の白衣を着た男はそんなコトを考えて、微笑んだ。
作:サスケ様
このごろぼんやりしている時に頭に浮かんでくるのは茶色の柔らかい髪に金晴眼を 持つ、大地の申し子のコトばかり。 白衣の男―天逢の古くからの友人である、金蝉の許へ預けられている悟空という幼児。 悟空の笑顔が、頭から離れない。 悟空の持つその金晴眼は、吉凶の証。彼が、異端であることの証。 ―僕にはとても異端なんかには見えませんけどね。 そう。 この常春の、痛みさえ感じられない生ぬるい天界の中で。 悟空の存在は、太陽の様で。 彼のそばに居ると、暖かい気持ちになれる。悟空が其処にいるだけで。 ―彼の黄金の光に、包まれたくて。 「こんにちは、悟空」 その小さな背中に声をかければ。 「あっ!天ちゃんだぁ♪」 何時だって、にこやかな笑顔が返ってくる。 「何をしていたんですか?」 「んーとねぇ、金蝉の机に飾るお花を探してたの。」 ―金蝉、ですか。 悟空の思考回路は多分、金蝉を中心にして回っているのでしょうね。 そんなコトを天逢は思った。 悟空にとっての特別な存在。 自分にも、悟空は笑顔を見せてくれる。 でも。 金蝉にだけ向けられる悟空の笑顔は、とっても眩しくて。 悟空自身は気付いていないだろうけど。 ―悟空、貴方の心の中に少しだけ、ほんの少しでイイから、僕だけの場所を作っても らえませんか? そう思ってしまうこの気持ちは、独占欲というモノなのでしょうか― 「天ちゃん?」 心配そうに、大きな金晴眼が顔を覗き込んできた。 「大丈夫?・・・ねぇ!!」 その言葉でハッと我に帰る。 「大丈夫ですよ。ちょっと考え事をしていたものですから」 「よかっ・・・たっ」 急に悟空の目から大粒の涙が零れ落ちた。 「天ちゃん、ずっと・・・辛そうな顔してて・・・。このまま、死んじゃうのかとっ・・」 自分のコトをこんなにも心配してくれる、優しい心を持っていて。 自分のコトをこんなにも惹きつける、澄んだ眼を持っていて。 そんな愛しい存在を、置いて先に死ぬわけにはいかない。 「大丈夫です・・・、悟空。僕は此処に居ます。何時でも、貴方の傍に。」 「約束だからね?」 ―笑顔でうなずいた。 「はい、もちろん。」 僕の心の中の目に見えない気持ち、少しは貴方に伝わりましたか? ―すみません。貴方との約束、どうやら破ってしまうようです。 本当にすみません。 ずっと、傍にいるって約束したのに。 ―悟空、貴方と。 でも不思議ですね。なんだか、貴方とまた逢える様な気がするんです。 どうしてでしょうね? もしもまた貴方に逢えたなら。 そうしたら僕は、今度こそ貴方との約束を守りますから。 僕の、全てを賭けて。 ずっと、傍に・・・・・・ 視界が、紅く染まってゆく。 『ずっと傍にいます。約束ですよ?』 貴方に・・・伝わり・・・まし、た・・・か? 【END?】 |
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