作: Miki 様
「さんぞう!」 「あ?」 「愛してるからな!」 「………」 突然あいつの口から出た言葉に俺の思考は一瞬停止してしまった。 「さんぞう?」 悟空の呼びかけでやっと止まっていた思考を取り戻すと、 「……悟空、どうした?」 「え?別にどうもしないよ」 「………………」 「あのな、1番好きなヤツにはアイシテルっていうんだろ?」 少し頬を朱く染めて照れたように、でも満足そうな笑みを浮かべて悟空は言う。 「オレ、さんぞうが一番好きだから」 暗闇から日の光の届く場所に導いてくれた三蔵。 三蔵は悟空のそばにいるとき、悪態つきながらもやさしい表情をしていた。 愛しい幼子を見守るように。 自分が幼子に与える「愛情」は親が子に与える「愛情」ではない。 そのことは三蔵自身分かっていた。 「どうした、悟空?」 「え?」 「具合でも、悪いんじゃないのか?」 「……ひどい…俺は…三蔵が…好きだから…愛してるって言ったのに…」 悟空が泣きそうな顔をして、すがるように三蔵を見る。 「………………」 それでも、三蔵は悟空が望むことを言ってくれない。 「…もう…いいよ…。ごめんね…」 頬に涙を垂らしながら悟空は部屋を出ていった。 悟空が出ていったあとの、部屋は静かな無言の部屋だった。 シーンとした、さびしいぐらい静かな部屋。 「…畜生。あのバカ」 三蔵のつぶやきがやけに広く、部屋に響いた。 そして、1分後には放って置かれた書類の束が舞った。 「悟空?いったい、そんなところでどうしたんですか?」 部屋から出て、どうしようもなく外を悟空はうろうろしていた。 そんな悟空を八戒は悟浄と買い物中、偶然に見掛けた。 「八戒?…悟浄?…」 悟空は名前を呼ばれ振り返った。 「な〜に、やってんだ?小猿ちゃん」 悟浄がいつものように、からかうような素振りをみせる。 しかし悟空は、少し悟浄に目線を向けただけですぐに下を向いてしまった。 「悟空、三蔵はどうしたんですか?」 「三蔵は…部屋にいるよ…」 相変わらず首を下げたまま、小さくつぶやく。 「はは〜ん、さては三蔵様とケンカでもしたんだろ〜う?」 悟浄がにやにやしながら、悟空の顔を覗き込む。 彼にとっては軽い気持ちで言ったのだろう。しかし、今の言葉は悟空の地雷原踏んだも同じだった。 「ちがう!うるさい!!ほっといてよ!あっち行って〜!!!!」 今までぽつぽつとしか喋らなかった悟空が、顔を上げ我慢していたモノが切れたように、声を出して鳴き始めた。 時折、"三蔵!"と、いいながら。 「悟空、とりあえず家に来て下さい…」 まだ、すすり泣きながらも落ち着いてきた悟空に八戒がハンカチを差し出す。 悟空は小さく首を縦に振って、八戒と悟浄について行く。 「悟空、聞いてもいいですか?」 ホットミルクが入ったカップを八戒は悟空渡す。 両手でカップを受け取る、悟空。 悟空の真向かいに八戒が、少し離れたところに椅子を持っていき座っている悟浄。 「三蔵と、なにかあったんですか?」 「…俺、三蔵に好きだって…アイシテルって言ったんだ…でも、ね…」 言葉に詰まり、再び悟空は瞳に涙を潤ませた。 「悟空…………」 八戒は大体察しがついていた。知っていたから。 悟空が家族愛では片づけられないほどの恋愛感情を三蔵に持っていたことも。 三蔵がそれをしっていながらも、自分の気持ちをセーブしていることも…。 切ないほどの行き違い。 一度三蔵にどうして自分の気持ちを悟空に伝えないのか、聞こうとしたことがある。 しかし、できなかった。三蔵の悟空を見る瞳はこの上なく、やさしく穏やかな見守るものだったから。その表情にハッとさせられた。 悟空は泣き疲れたのか、頬に涙をしたたらせて眠ってしまった。 悟浄が悟空を抱き上げ、ベッドに寝かす。 「なんで、アイツは悟空の気持ちに応えてやることができないのかねぇ」 「いいえ。三蔵は悟空の気持ちに応えてますよ。不器用とか…そんなものじゃないんでしょうね…僕らにはわかりません…」 八戒がすーすーっと規則的な寝息をたてている、悟空の前髪を掬う。 ドンドン 夜中には相応しくないほどのノック。 「はい、どちらさ…………三蔵!」 寝る支度をしていた八戒がドアを開ける。そこには、 「…悟空、来てるか?」 肩で息をしながら三蔵は尋ねる。 「えぇ、来てますよ…上がって下さい」 三蔵が案内されて悟空が居る部屋のドアを開けると、寝ているはずの悟空が起きていた。 「………三蔵?…」 「悟空…悪かった…」 「………………」 「俺も、お前が好きだ」 「え?」 「愛してる…一緒に居てくれ」 「うそぉ…」 悟空が信じらんないといった顔で三蔵を見つめる。 「嘘じゃない」 三蔵ははっきりと悟空の目を見て告げる。 「だって、さっき…」 「…あのときは答えてやれなくて、悪かった。でも、今ならきちんと言える」 「お前が世界で一番大切だって」 「ありがとう、三蔵…なんか嬉しすぎて…」 「バカ」 「あのぉ〜、無事解決できたようですし。そろそろお帰りになったらどうですか?」 「うん。三蔵、帰ろう…」 「あぁ」 帰り道… 「ったく…探しまわらせやがって…」 いつもの三蔵らしくなく髪は乱れ、よっぽど走り回ったのかズボンの裾も少し汚れていた。 「お前の声が聞こえなかったかったから、片っ端からお前の行きそうなトコ行ったんだ」 「"声"?」 「いつもは煩いくせに呼ぶくせに、今日は一度も聞こえなかった。なんでか、な…」 「…う〜ん、なんでだろう」 「呼べよ。聞こえないよりはましだから、な?」 「うん!!」 三蔵達が帰ったあと、悟浄は八戒にヤラレ臨死体験をしたとかしないとか…………… どうやら、数日間は八戒に機嫌は最高潮に不気味だったとか… |
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