−ムツイビト−
空には太陽が昇るが、天には月が昇る。 「では・・・・」 久しぶりの宿で戦場のような食事を終えた一同。 八戒が立ち上がり、見回した。 「やる気満々てやつ?」 「今日は勝たせていただきます」 「・・・馬鹿どもが」 遅れて三蔵と悟浄も立ち上がる。 悟空だけはそんな3人を座ったままで傍観している。 それがいつもの光景だった。 悟空と同室の権利をかけて3人が戦う。 悟空は3人が甲乙つけがたく好きなので口出しはしない。 今日は誰になるんだろう・・・? そんなことを思いつつ、ふと視線を逸らした悟空は窓の外に・・・知った顔を見た 気がした。 「悟空っ!どこに行くんですか!?」 席を立ち食堂を出ていく悟空に八戒の声が追う。 「トイレっ!すぐに帰るから!」 悟空は答えて外へと駆け出した。 「居るんだろっ!出て来いよ!!」 何かに導かれるようにやって来た街外れの墓地。 独特の匂いは・・・・・死臭だろうか? 「出てこないんだったら帰るからな!」 「それは困るな」 「・・・・・っ!?」 突然、背後に現れた気配に構えて振り向けば・・・やはり居た。 「焔」 「久しいな、孫悟空」 「何しに来たんだよっ!」 「お前に会いに・・・」 「ふざけ・・・」 「と言えば、俺のことを少しは見てくれるか?」 焔が一歩近づけば、悟空が一歩退く。 「・・・・本当の用はそんなことじゃないだろ!三蔵の経文は渡さないからな!」 「かなりの本音だったんだがな?それともこちらの問いのほうが良かったか?」 「・・・・・?」 悟空は油断せずに焔と距離をとる。 「いつまで騙し続けるつもりだ?あの三人を」 「・・・・・・何のことだよ」 焔が笑う。絶対的な自信で。 「戻っているのだろう?記憶が」 「・・・・・記憶?」 「前世、あの3人を手にかけた記憶が」 「・・・・・っわ・・訳わかんないこと言うな!」 けれど焔は依然として・・・・・くっと笑い続ける。 「何も知らない。何も覚えていない。ただの子供。そんな姿を装うのは疲れるだろう?」 「だから、わかんねぇって言ってるだろ!」 「心配はいらない。ここは俺の結界で覆い、天界の奴らも覗き見することは出来ない からな。・・・観世音菩薩も他のどの神でもだ」 焔から離れようと動きつづけていた悟空の動きが止まった。 うつむき。 再び焔を見た顔は・・・・普段の悟空を知る者ならば驚くほどに大人びていた。 「・・・・・・バカ焔」 「酷いいい様だな?」 楽しそうだ。 「オレの記憶なんてお前には関係ないだろ。ほっとけよ」 「大いに関係ある。言わなかったか?俺はお前が欲しいのだと」 「・・・・オレの力が、だろ」 「間違えるな。お前の力『も』だ」 「嫌だって言った」 「諦めるとは言わなかったぞ」 お互いに見つめあい、引かない。 決して交わらない平行線の道。 それを無理に交えようとすれば必ず・・・何かを壊さなければならない。 「オレは・・・・三蔵と・・・八戒と悟浄と・・・別れるつもりなんてない」 「罪滅ぼしのつもりか?」 「違うっ!オレが三人と一緒に居たいだけだ!」 「人間と妖怪は決して一緒に暮らすことは出来ない。ましてや、孫悟空。お前は天地と 生命を共にする者だ。永遠にあいつらと居ることは不可能だ」 「・・・・そんなこと」 焔を見上げる悟空の目に涙が滲む。 「・・そんなことお前に言われなくたってわかってるっ!」 悔しくて。 悲しくて。 腹が立つ。 泣き喚いて誰かにこの思いをぶつけたい。 「俺ならば、お前の思いを受け止めることが出来る。共に生きることも。傍に居ることも。 いくらでも願うことをかなえてやろう」 「・・・・・・・・・・。・・・・・・」 悟空は無言のまま拳を握る。 「俺の元に来い、孫悟空」 「・・・・・。だから・・・焔はバカなんだ」 「?」 「オレは誰かに何かをしてもらおうなんてちっとも考えてない。ずっとずっと・・・皆と 一緒に居たい、ずっと笑っていたい。それが出来ないからって焔についていったら 同じことじゃないか。昔のことなんて知らない。オレにとっては今が一番大切なんだ から・・・・だから・・・・邪魔するな!」 悟空の手に如意棒が現れる。 そして縦横無尽に振り回した。 パキィィィィィーーーーンッ・・・・・・・ 何も無いはずの空間に何かが壊れる音が響いた。 「「「悟空っ!!!」」」 街のほうから3人が駆けてくるのが見える。 「今、が大事か・・・」 「それが今、たった一つだけオレにわかることだから」 焔と悟空は静かに対峙した。 「悟空っ!」 「大丈夫ですかっ!?」 「バカサルっ!」 「あれが今のオレの全て」 そう言って笑った悟空の顔が慈愛さえ感じさせた。 「・・・なるほど。だが、俺は諦めが悪い。一瞬でも後悔したら・・・その時は孫悟空。 必ずお前を手に入れてみせる」 「・・・・出来るもんならやってみろよっ!」 いつもの調子にもどった悟空に焔は不敵に笑うと、駆け寄る三人に見せつける ように悟空を抱きしめ・・・・額に口づけを落とした。 「・・・・・っ!?」 「約束の証だ」 「・・・ふざけんなっ!」 ガウンッ! バキィっ! ドゴォッ! 殺気混じりの攻撃が焔に届く。 それをあっさりかわして焔は姿を消した。 「悟空っ!」 真っ先に悟空に近寄った八戒が持っていたハンカチで悟空の額を一生懸命に 鬼気迫る様子で拭きまくる。 「ちょ・・・っ痛・・・っ」 「あんな奴に好きにされてんじゃねーよ」 悟浄に後ろからどつかれた。 「・・・コロス。絶対コロス」 三蔵は焔が居た場所に銃を連射した。 くすっ。 「悟空?」 「・・・笑ってんじゃねぇよ」 「明日の朝はメシ抜きだ」 「えーーーーっ!!!」 三人の自分への思いが嬉しくて・・・知らずに漏れた笑い。 それで朝食が抜きにされるなんて酷すぎる。 「大丈夫ですよvちゃんと差し入れしてあげますから♪」 「おいっ!」 「ったく甘ーんだからよ」 三人に囲まれた騒々しい今。 この今がいい。 先のことなんて・・・・・・・・・・・・・・・・・ 『考える必要無いじゃん』 悟空は夜明けの空を見上げ、これから昇る太陽のような笑顔を浮かべた。 |
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>>あとがき<<
漸くお届け出来ました・・・お待たせして申し訳ありません!
完全にリクエストにお答えできたかはわかりませんが
お楽しみいただければ幸いですm(__)m