疾風怒濤
番外編リクエスト
【注: 最遊記コンテンツの長編『疾風怒濤』 挿話1を先に読まれることをお勧めします】
VV 溺 愛 VV
| 騒がしい春が終わり、そろそろ夏がやって来るかな〜と思わせるそんな気候の中、 焔の頭の中は今まさに春爛漫だった。 「ではな」 いつも愛想がいいとは言えない焔は本当に愛想の無い短い挨拶を友人である紫鴛と 是音にすると講義もそこそこにそそくさと大学を後にした。 構内では、冷たさを感じさせる美貌で女性たちを騒がしている焔だが今その顔は だらしなく歪み、女性たちの憧れを一気に打ち砕かんばかりに・・・にやついていた。 その頭の中にある単語はただ一つ。 『悟空』 ただ、それだけを焔は頭の中でリフレインさせ、そろそろ頭の回線がショートし始めた頃、 焔がたどり着いたのは自宅に近い幼稚園だった。 その幼稚園は少々小さいながらも歴史があり、清潔感あふれるオフホワイトの壁面には 鮮やかな色のペンキで様々な動物が描かれ、園児たちを楽しませている。 ・・・が、焔にはそんなことはどうだっていい。 たとえ、その壁が真っ赤であろうと、描かれているのが近代芸術真っ青の意味不明絵画で あろうと彼は気にすることは無い。 この幼稚園にやってきた理由はいわずもがな。 ここには彼が誰よりも溺愛している悟空が通っているのだった。 いつもならば、悟空の母親が迎えにやって来るのだが彼ら夫婦は今朝より遠い空の 彼方へみずいらずで旅行に出かけている。 両親とも小さな悟空を置いていくことは最期まで渋っていたが、焔のそつのない自信に 溢れた『悟空のことはまかせて下さい』という笑顔に騙され・・・いやいや、納得して悟空 のことは焔にまかせて旅立ったのだった。 「悟空・・」 今日から悟空と二人きりの生活・・・・・・・何を想像しているのか、思わず頭に血が上って きたらしい焔は慌てて、首の後ろをとんとんと叩いた。 こんなところで鼻血ブ〜、なんて焔の矜持が許さない。 ・・・まぁ、本人すでに道行く人々に遠巻きにされていることには気づいてないらしいが。 とにかく、焔は心に気合をいれ、悟空が待つ幼稚園の敷地へと足を踏み入れた。 さて、愛しの悟空はどこに・・・? 焔の悟空探知機がぴこんぴこんと反応を返す。 『右前方斜め45度。距離50メートル』 ・・とそこまで正確に知らせたかどうかは知らないが、焔は砂場で戯れる青いスモッグ姿の 悟空を見事に発見した。 「悟空っ!」 焔の呼ぶ声に悟空が手を止め、こちらを向く。 「おにいちゃんっ!!」 子供ながらのたどたどしい声は、焔の耳に天使のさえずりとなって響いた。 悟空の顔に浮かべられた満面の笑顔に崩れ落ちそうになるのを何とか耐え、焔は 兄らしく、駆けてきた悟空を受け止める。 小さく柔らかい体を軽々と抱き上げた焔は勢い余って、悟空の頬にキスを落とす。 悟空はそれにはにかみながら、焔の頬に同じようにキスを返した。 「悟空、迎えに来た」 「あ、しょうか。ママ、きょうからおでかけなんだ」 どうして焔が向かえに来たのだろうと不思議に思っていたらしい悟空は前日にいい含め られていたことを思い出す。 『ちゃんといい子にしてたら、おいし〜〜〜い、お土産をたっくさん買ってきてあげます からね!お兄ちゃんを困らせないようにね?』 「・・・おみやげ〜〜」 だが、悟空の頭に残っていたのは『おいし〜〜いお土産』という部分だけのようだ。 「明後日には帰ってくるさ。さ、悟空用意は出来ているのか?」 「うんっ!かばんもったーっ!」 「では、先生に挨拶を」 「はい!せんせー、さようなら〜〜」 焔の腕の中からぶんぶんと手を振る。 「はい、さようなら。悟空君。今日のお迎えはお兄さんなのね。良かったわね〜」 「うん!おにいちゃんなのっ!」 ああ、何て可愛い悟空。 焔はぎゅーと抱きしめそうになる衝動を何とか抑えるとよそいきの笑顔を浮かべて 見送る保母さんたちに頭を下げた。 「悟空、今日の夕食はハンバーグだ」 「ハンバーグ!?やったーっ!!」 リビングで積み木を相手に遊んでいた悟空はキッチンに立つ焔の足へタックルして 喜びを表してくれた。 あやうく壁面と仲良くなりそうになった焔は、何事もなかったように足にじゃれつく悟空と 視線を合わせる。 「焔特製ハンバーグだぞ」 「とくしぇーっ!」 わかっているのか、いないのか、悟空は喜ぶ。 だが、さすがの悟空も出来上がって目の前に並べられ物体に、信じられないことに手を 止めた・・・あの食べるということに関しては凄まじいほどの執着を示す悟空が。 「・・・はんばーぐ?とくしぇー??」 「・・・・まぁ、多少形は妙だが味は保証する」 どこまでも完璧を追求する焔ではあるが、さすがに料理まではまだマスター出来なかった らしい・・・額に光る汗はご愛嬌。 「ん・・・いただきますっ!」 焔の言ったことが理解できたのかどうかは不明だが、きゅるきゅるとなるお腹の無視に 我慢の限界がきていた悟空は専用のフォークでぐさりとその物体・・・焔言うところの ハンバーグに突き刺した。 口に運ぶ。 焔はそんな悟空の様子を手に汗握って見守っている。 「・・・・おいちっ!」 悟空の笑顔に焔はとりあえずほっと肩をなでおろした。 食事の後はお風呂である。 脱衣所で焔は悟空の服を脱がせると、当の悟空は片手にアヒル隊長を持って 駆けていく。 「悟空、走ると滑るぞ」 「だいじょーぶー」 何が大丈夫なのか、悟空が風呂場で滑った回数はゆうに手足の指に余る。 だが今日ばかりは言葉どおり無事に済んだらしい。 ざぶーんっという湯船に飛び込む音がした。 「悟空、体は洗ったのか?」 「まだー」 全く、と何とか怒ったような顔を作った焔はしぶしぶと湯船から出てきた悟空を 椅子に座らせるとあわ立てたスポンジで体を洗ってやる。 それはもう、細心の注意を払って柔らかですべすべの肌を傷つけないように。 「くしゅぐったーっ!」 悟空は無邪気に喜んでいる。 ああ、何て可愛い悟空・・もう、いっそこのまま・・・・・と4歳の子供に何をしでかすつもりか 知らないが焔のにやついた顔は湯煙がうまいこと隠している。 そのまま髪も一緒に洗い、頭からシャワーで流した悟空と焔は一緒に湯船につかる。 情景としては・・・『仲のいい兄弟』に見える。 ・・・・焔の頭の中さえ覗かなければ。 悟空の就寝時刻は8時である。 その頃になると元気に遊びまわっていた悟空もうとうとと船をこぎ始める。 「悟空、もう寝る時間だぞ」 「んにゅ〜」 すでに半分夢の世界に足を突っ込んでいる悟空の返事は言葉になっていない。 苦笑した焔は悟空を抱え、部屋のベッドまで運んでやる。 「おやすみ、悟空」 「ん〜おにぃ・・ちゃ・・・・・いっしょにねりゅの〜〜」 悟空は離れようとした焔の服の裾を掴んで放さない。 力だけはとても4歳とは思えぬほどに強い悟空の手を放すことは至難の技だろう。 もちろん、焔には願ったり叶ったりの状況である。 こういうのを棚から牡丹餅というのだろうか?(ちょっと違う) 「いつまでたっても甘えん坊だな、悟空は」 「ん〜〜ちがうも〜ん・・・」 ぴんぴんと跳ねる悟空の髪を優しく撫でてやると、気持ち良さそうに目をつむる。 焔はそんな悟空の隣に身をすべりこませると、小さな体を抱きしめた。 「悟空・・・」 いつまでもこの腕の中で守ってやりたい。 焔は誓うように悟空の額へキスを落とした。 明日は休日。 何をして遊ぼうか? |
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誰だよ・・こいつは(笑)
というわけで、30万を踏んでいただいた、しぐれ様への
捧げものでございますv
お気に召していただければ幸いですv
リクエストありがとうございました!