忘年会が終われば、新年会。
 人は何かと理由をつけては騒ぎたくなる生き物らしい。


 というわけで。
 本日、木の葉の隠れ里高級旅館『金瓶梅』では上忍&特別上忍ご一行様が日頃の
 任務のうさばらし・・・いやいや、慰安のために飲んだくれ・・・いやいや、親睦を深める
 新年会が催されていた。


「毎年毎年・・めんどくさいよね〜」
 強制参加のこの新年会、誰であろうとさぼることは許されない。
 カカシもしぶしぶながら参加して、馴染みのアスマや紅、他もろもろと酒を酌み交わして
 いるのだった。
「そう言うな。金は俺たちが出すんじゃねぇんだからよ」
 反対にアスマは上機嫌だ。
 もっとも表情は髭があるためわかりにくいのだが。
「あはは、クマは飲めたらいいのよね〜飲めたら〜」
「「・・・・・・」」
 すでに出来上がってんのか、と突っ込みたくなるほどハイな紅に男性陣が一歩引く。
 このくの一は酒癖が悪いことで評判だ。
「強制参加なのに、ナルトは来てないしさ〜」
 カカシが不機嫌なのはそれが一番の理由らしい。
「去年は変化して紛れこんでいたよな。任務でも入ったんじゃないのか?」
 新年早々依頼してくる人間などそう多くは無いが、居ることはいる。
「それこそ貧乏くじね。可哀想・・・」
 と言いながら紅は一本空にする。全く真実味が無い。
「すんじゃった。もらってくるわ」
「ナルト〜先生はさみしいよ〜」
「・・・そんなだから鬱陶しがられるんだろうが」


 ざわざわっ。

「いやぁ、あれでナルトは恥ずかしがってるだけだと思うね〜」
「・・・・おめでたい奴だな・・」
 カカシに呆れた視線を向けたアスマは場のざわめきに、何気なく入り口へと視線を
 向けた。

「・・・・・?・・・・・っ!?」
 いぶかしげに目を細めたアスマは、はっと次には目を見開いた。
「お、おいっ・・カカシ・・・」
「何〜クマ」
「クマ言うな。それより・・・あれ、あれ見ろ!」
「んあ・・・?」
 クマ・・・でなく、アスマに言われてカカシは胡乱な眼差しをその方向へ向ける。
 その瞬間。
 だれていた体にぴーんと針金が突き刺さった。

「あ・・・・・あぁ!?」
 間抜けな声をあげる。




「この旅は当旅館をご利用いただきまことにありがとうございます。私は当旅館の若女将
 ”胡蝶”と申します。今夜はどうぞごゆっくりお過ごし下さいませ」
 入り口で三つ指をつき、並み居る上忍たちに臆することなく艶やかな声で挨拶をした
 若女将は下げていた頭をあげ、にっこりと笑顔を浮かべた。

 その笑顔に再び場が騒然となる。

 ”胡蝶”と名乗った若女将は信じられないほどに美人だった。

 雪のように白い肌に、宝玉のごとく青い瞳。
 紅をひいた唇はみずみずしく、食べるととても甘そうで・・・・・。
 黒髪を頭の後ろで大きめの鼈甲の櫛でとめているため、露になった白いうなじが
 艶かしい。
 
 ごくり、と誰かが喉をならした。
 それを機に各所から女将を呼ぶ声がかかる。

 だが、カカシとアスマが驚いたのはそれが理由では無い。

「あれ・・・まさか・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・ナルト・・・・・・・・・?」
 呆然とする二人に、若女将がちらりと視線を流した。
 口の端に一瞬浮かんだ、笑み。

「・・・・間違いない」
「ナルトだ〜」
 まさか旅館の人間として現れるとは予想だにしなかった。
「なになになんで?な〜んでナルトがここに居るわけ??しかもあんな格好で??」
「俺に聞くな、俺に」
 若女将・・・おそらく変化したナルトは各席を挨拶しながらまわっている。
 挨拶された上忍のどの顔もほけ〜とだらしなくしまりが無いことといったら。
「・・・・気に入らない」
 カカシから殺気がオーラのように放たれる。
 多感気温が5度ほど下がる。傍で飲んでいる人間にはいい迷惑だ。
 そんな不機嫌なカカシとアスマのもとにもナルトが挨拶にやって来た。

「今宵は当旅館をご利用いただきありがとうございます」
 にこり、と花がほころぶように艶やかな笑顔つきとあれば呆けない男がおかしい。
「・・はじめて見る顔だよな?」
 アスマが探りを入れれば、あっさりと”雇われ女将”なのだと言葉がかえる。
 なるほど。
 さすがに上忍たちばかりが集う宴会場所に普通の女将ではヤバかったのか。
 依頼が入り、ナルトが受けることになったのだろう。
 しかし何故くの一でなく、ナルトなのか・・・?
 アスマは首をひねるが、上忍のくの一たちが新年早々任務なんかやってられるわけ
 ないでしょーっ!とボイコットしたからだというのは秘密だ。
 いつの世も男性より女性のほうが強い。

「ねぇねー、お姉さんお酌してよ〜ん」
 カカシがここぞとばかりにナルトに酌をねだる。
 いつもならそんなもの頼んだ瞬間半殺しの目にあうだろうが、ここは他の上忍たちも
 集まっているためナルトは笑顔のまま、銚子を傾ける。

 ・・・後でどんな目にあうとかは考えていないのだろうか・・・・
 アスマは恐ろしくて頼めない。

「そちらの方もいかがですか?」
 ・・・が、ナルト自ら笑顔で誘う。
 カカシが露骨に不機嫌な顔になった。
 アスマも言われて固辞するほどナルトに執着が無いわけではない。
「・・・すまん」
 それだけ言って猪口を差し出した。
「そうだ。とっておきの肴があるんです、お召しになります?」
「とっておきの・・・」
「肴・・・??」
「ええ、今朝とれたばかりのかつおなんですけど・・・」
「食べる、食べる〜v君が用意してくれたものなら何でも〜」
 調子にのったカカシがさりげなくナルトの手をとる。
 ナルトもそれをさりげなくはずして、では用意させますねとぽんぽんっと手を叩いた。
 するとそれを合図にかつおを乗せた大きな板を二人がかりでかついだ男たちが部屋に
 入って来、正面に置いた。
 二人はそのまま下がり、入れ違いに料理人らしく割烹着を着た人物が・・・・


「・・・・シカマルっ!?」
「はぁっ!?」
 何故こんなところにシカマルが居るのか。
 驚く上忍たちを前にシカマルは鮮やかな包丁さばきでかつおをさばいていく。
 均等にわかれていく様はまさに見事というしかない。
 ちょっとしたショーだ。
 シカマルが包丁を置くと満座から拍手があがった。
 仲居さんたちがそれを皿にのせ配るなか、アスマとカカシ、紅のもとにはシカマル
 本人がそれを持ってきた。

「ほらよ」
「おいおい、お前何やってんだ?」
「バイトだよ・・・・めんどくせー」
「ご苦労さま、シカマルさん」
 いつものように面倒くさそうな素振りを隠さないシカマルに若女将ナルトが笑顔で
 その労をねぎらう。
 途端に赤くなるシカマルの顔。
 シカマルはあたふたと立ち上がると逃げるように部屋を出て行く。
「あら、どうしたのかしら?」
「「・・・・・。・・・・・」」
 確信犯だろうに、ナルトはわからないと首を傾げる。
 ・・・遊ばれてやがる。
 アスマは少しだけシカマルに同情した。


 その後もナルトはいつもなら絶対に見せてくれないだろう笑顔でカカシを初めとした
 上忍たちにあれやこれやと料理をすすめ、酒をすすめ、今年の新年会はいつになく
 楽しかったと上機嫌で皆、帰途についた。

 ・・・・その夜は。
 が。


 しかし!





 上忍たちは数日後まわされてきた請求書に目を見開くことになる。
 そう、例年の新年会では誰も出てきたもの以外頼まなかったから知らなかったのだが
 実はそれらはコース料理で、今回ナルトにそそのかされて頼んだものはコース外に
 なるため別途料金が加算されるのだ。
 そんなこととは露知れず、人一倍頼みまくったカカシの請求書の金額は恐ろしいことに
 なっていたらしい。

「・・・・馬鹿だな」
「馬鹿よね」
 だが、カカシは誰にも同情されなかったらしい。

 そして、ナルトも影で笑っているのだった。







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彼方様、リクエスト
『スレナルでアスマとシカマルは絶対出演』
でした♪
お気に召していただけると幸いですv


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