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 スレイヤーズ・ユニバーシティ・・・通称SUは、国内外を問わずあらゆる分野の
超一流頭脳が集まる大学&研究機関である。
 毎年必ずノーベル賞受賞者をを輩出し、各国のトップクラスには最低でも3割は
ここの卒業者が占めると言われている。


 今年。
 そのSUのLawCollage(ロー・カレッジ/法学部)にこれまでのSUの歴史にも稀に
みる異色の人材が集まった。
 頭脳は言うまでもなく超一流・・・・・・・そして個性も超一流だった。
 
 まず、世界の平和と正義(強調!!)を守るため弁護士を目指す熱血迷惑少女
アメリア。セイルーン国の皇女でもある。・・・・つまり変わり者。
 そして、無口で無表情、何を考えて入学してきたのか全く不明な超絶怪しい青年
ゼルガディス。・・・・身元も不明。
 そのゼルガディスと逆にいつも笑顔を絶やさない、表面上は人当たりが良く、
言葉遣いも丁寧な青年、ゼロス。・・・・・ただし瞼の奥に隠された暗紫色の瞳には
冷酷非常な光がともる・・・・との噂あり。
 そして・・・・・・・
 最も注目されている新入生、リナ。
 耳のあたりで切られた黒髪。強い光を秘めたルビーの瞳。
 並み居る人間を押しのけ首席入学を果たした天才少年
 黙って立っていれば文句なしの美少年・・・・・しかしその性格は滅茶苦茶。
 入学初日に「ちび」と馬鹿にした相手を病院送り全治半年の傷を負わせたとか。
 食堂の全メニューを一日で制覇したとか・・・・・。
 ねちねち嫌味を言う教授を・・・ストレス性の神経性胃炎で辞めさせたとか。
 ・・・・・噂ではなく真実なところが怖い。

 そんな最強(最恐?)メンバーがこれまた恐ろしいことに同じゼミをとることと
なった。指導教授はルナ=インバース。
 リナの姉でもあり、SUの卒業生でもあった。



「リナさん、僕と組みませんか?」
「・・・・・・」
 リナはゼロスの言葉を無視して次の講義の教室に歩きつづける。
「リナさん、たら〜」
「・・・ゼロス、あんたも大概しつこいぞ!俺は一人でいいって言ってるだろ!!」
 リナは華奢な外見のとおり男にしては高い声でゼロスに怒りの声を向ける。
「でも僕はリナさんとやりたいんです」
「俺はやりたくないのっ!!」
「どうしてですかっ!?」
「どうしてもっ!!」
「理由を仰っていただけないのなら諦めるわけにはいきません」
「・・・・・・・しつこいっ!!」
 側でそれを見ている観衆たちは・・・「またか・・・」といった風に出来るだけ二人と
目を合わせないようにその場を立ち去っていく。
 美少年と名高いリナと女なら誰でも惹かれるゼロスの秀麗な美貌は見ている人間
に否応なく快感をともなわせるが、何しろふたりの普通とはとても言えない性格から
巻き込まれると大変なことになる。
 いくら目に良いコンビといえど命は大切にしなければならない。
 
 
 さて、その2人がいったい何のことでもめているのか?
 
「あ・・じゃない・・・俺は一人でやるほうがいいんだっ!!」
「でも2人でやったほうがより良いものが出来ると思いませんか?確かにリナさん
お一人でも発表は完璧に出来ることはわかっています、でもそのさらに上を目指す
ためにも僕と一緒に組んだほうがよろしいと思うんです」

 そう・・・リナたちのいるゼミでは毎回各々でテーマを組んで発表をしなければなら
いのだ。ただし、一人でやってもグループでやっても構わない。
 皆、これには死に物狂いで取り組む。
 何しろプロフェッサー(ルナ=インバースはゼミ生にそう呼ばせている)はありきた
りのテーマでは納得しないし、内容も面白くないものは途中でも止めさせられる。
 人前で恥をかくことをよしとしないゼミ生たちは、それゆえに必死でやることになる
わけなのである。

「プロフェッサーをうならせるとびきりのテーマがあるんです」
「・・・・・・・・・・・・・・何だよ?」
 実はまだテーマを考えついていなかったリナはそんなゼロスの言葉にちょっと
(あくまでほんのちょっと)耳を傾ける。
「それは・・・・・リナさんが僕と組んでくださるのでなければ言えません」
「むぅ・・・・・」
 そんなゼロスをリナは上目遣いで睨みつける。
(可愛い・・・・っ)
 怒りでいっそうきらきら輝く深紅の瞳・・・意識はしていないだろうにほのかに漂う
艶にゼロスはくらくらする。
(・・・・・・おかしいですね・・・僕は男には興味ないはずなんですが・・・・・・)
 だが、何故かリナは気になって仕方がない。
(・・・男という性を感じさせないせいでしょうか・・・・まだ未成熟なそれに惹かれるん
でしょうか・・・・・・・・)
 ゼロスはにこにこ仮面の下でそんなことを思い悩む。
「・・・・・・・教えてくれたら、あんたと組んでもいい、かな」
「本当ですかっ?!」
「う゛・・・」
 ゼロスのあまりの喜びように、ちょっと前言を後悔するリナ。
「リナさん・・・男に二言はありませんよね」
「も・・・もちろんだっ!!」
 ・・・と言いつつリナの目が泳いでいる。
「では・・・・耳を貸してください」
「な・・・何で?!」
「他の方に聞かれてはマズイですから」
「わ、わかった・・・・」
 リナはしぶしぶとゼロスに耳を向ける。
 ・・・小ぶりの形いい耳がゼロスに悪戯心を起こさせた。

 かぷり。

「ひ・・・・きゃぁぁぁっっっ!!!!!」
 リナは噛まれた耳をかばってずざざざざっっっとゼロスから飛びのいた。
 きっと正式な記録をとっていたら世界新を記録していた速さだったに違いない。
「な、何するんだっ!!!」
「いえ、美味しそうだなぁと思いまして♪」
「俺の耳は食いもんじゃないっっっ!!!」
 顔どころか耳まで真っ赤にしてリナは怒っている。
(やっぱり・・・・・可愛いですよねぇ・・・・・)
 リナの口から次々と放たれる悪態を耳から耳へと素通りさせ、ゼロスはそんな
不埒なことを考える。
 ゼロスがリナに近寄ってその手をとると、びくっと震えて振りほどこうとする。
 ・・・・・・・がゼロスの力に対してリナはあまりに非力だった。
 涙のにじむ深紅の瞳にゼロスにしては奇跡のごとく、わずかな罪悪感が生じた。
「すみません、リナさん・・・そんなに驚かれるとは思わなくて・・・」
「・・・して・・・」
「はい?」
「いいから・・・・っ放せっ!!!」
 ・・・・・どうやら本気で怒らせてしまったようだ。
「・・・講義に遅れるから・・・・っ」
 リナはゆるんだゼロスの隙を逃さず駆け出した。
(・・・・・僕としたことが、失敗しましたね・・・・・・)
 その華奢な後ろ姿を眺めながら反省するゼロスであった。
(次回はもっと上手く立ち回りましょう)
 ・・・・・・だが懲りてはいなかった。





 
「リナさん、こっちですぅ〜〜っ!」
 最前列の席からアメリアがリナの姿を見つけて手を振った。
 リナもそれに気づいて、アメリアに駆け寄る。
「遅かったですね」
「ああ・・・・途中でゼロスに捕まって・・・」
「また、ですか?」
「そう・・・・・・」
 リナがうんざりとした顔も隠さずその隣に腰掛ける。
「ゼロスさんもいい加減しつこいですね」
「・・・・そういうレベル超えてるよ・・・・・」
 本当に何故あれほど自分にちょっかいをかけてくるのか。
 まさか・・・・・・・・・・・・・・・・・・いやいや・・・・・・・そんなはずは・・・・・・・・・。
「・・・・さん・・・・・・・リナさんっ!!」
「あ・・・何、アメリア?」
「もう、聞いてなかったんですかっ!」
「あ、ごめんごめん」
「だからリナさんはもうテーマ決まったんですか?」
「・・・・・・・・・・・まだ。どれも今一で・・・」
「そうですか。私・・・・実は今回ゼルガディスさんと組むことになったんです」
 きゃっ、と照れて両手を握る。
 アメリアはゼルガディスに憧れているのだ。
 アメリアはしょっちゅうリナと一緒にいるので、2人は付き合っているのかと勘違い
されることが多いが、リナとアメリアの間には純粋に「友情」しか存在しない。
 あくまでリナとアメリアは友人同士なのである。
「そっか、良かったじゃないか」
「はいっ!」
 ほんのりと頬を染める様子は本当に可愛らしい。
 ・・・・・・・・はぁ。
「リナさん・・・・・」
「何?」
「あれ、ゼロスさんですよ」
「は?!」
 確かゼロスはこの講義はとってなかったと・・・・・・・・・・・・。
「こっちに来ますよ」
 おいおい゛・・・・。
「ここ、いいですか?」
「・・・・・・・・・他に席はあいてるけど?」
 リナの言葉を無視してゼロスは隣に腰掛けた。
「先ほどの続きなんですけど・・・」
「・・・・・・・・いい加減にしてくれないかな?」
「それだけリナさんと一緒にしたいんです、僕は♪」
「・・・・ゼロスさんっ!!」
 2人の様子を伺っていたアメリアが突然立ち上がった。
「あなた実はホモですねっ!!!!!!」
 教室中に響き渡る大声で問題発言をかましてくれた。

「うそ・・・」
「やっぱり・・・・」
「前から・・・・」
「ショック・・・・」

 講義室にいて2人の様子をこっそりと聞いていた学生たちが小声で騒ぎだす。
「あ、アメリアっっあんた・・・・っ何を・・・っ!!!」
 困ったのはリナである。
 これが他人ならリナも面白がって成り行きを見守るがことに自分が話題の中心で
あれば、そうもいかない。
 自分までホモ扱いにされてはたまらない。
「いや〜〜〜、僕は女の子が好きですけど・・・・リナさんは特別ですね♪」
 はっはっは・・・と焦る様子もなくいつものにこにこ顔でそうのたまうゼロス。
「な・・・っ?!」
 アメリアの発言を否定するどころか肯定するような発言をしたゼロスにリナは
立ち上がって拳を握ったまま固まった。

「あ〜〜・・・・オホンッ!」

 突然に割り込んだジジくさい声にゼロスとリナに注目していた学生たちが教壇を
見ると、教授が気まずい表情で立っていた。
 ・・・・・・・どうやら様々な悪評を持つリナとゼロスを直接注意をするのは憚られた
らしい。
「・・・・・・ゼロスっ、後で覚えておけっ!」
 小声でそう告げるとリナは席に腰掛けた。
「はい、お待ちしてますね♪」
 それに嬉しげに答えたゼロスだった。





 ここはSUの誇る総合図書館である。
 古今東西全ての分野の書籍を網羅し、膨大な量の蔵書数を誇る。
 まさに、『SUの図書館になければこの世のどこにもそれは存在しない』とまで
言わしめたほどである(誰が言ったんだ?)。

 その図書館にリナとゼロスはいた。
 正確には、図書館で昼寝をしていたリナをゼロスが見つけたのだ。
 机にふせてリナはぐっすりと眠っている。
 腕の間からのぞく横顔が・・・・目が閉じられているせいか、ゼロスにはとてもはか
なく感じられた。
「リナさん・・・・・・」
 そっと名前を呼んでいるが思いのほか深い眠りにあるのかリナは目覚めない。
 流れる黒髪にそっと触れる。
 リナにはもっと薄い色のほうが似合うと思うのだが・・・・。
 
 ずり。

「・・・・え゛?!」
 滅多なことでは崩れないゼロスの表情が、見事なほどに鳩が豆鉄砲をくらった
ような顔になった。
 触っていたリナの髪が・・・・・・・・・・・・ずれたのだ。
(まさか・・・・・・・・・・・この年で・・・・・・・・・・・かつら?)
 ゼロスはひきつった顔でそっとずれた髪をとる。
 その下からは・・・・・・・・・・・・ハゲ・・・・・・・・・・ではなく。
 栗色の艶々した長髪が現れた。
(これはいったいっ?!)
 いや、リナにはその色は大変似合ってはいるが・・・・。
「・・・・・・・ん」
 はっ!!
 リナの口から漏れた声にゼロスは本棚の影に慌てて隠れた。

「・・・・・・ふにゃ?」
 リナは机から顔をあげて、まだ寝ぼけているのか目をぱちぱちする。
 そっと自分の髪に手をのばし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一気に蒼褪めた。
「・・・・・・っ!!!」
 ばばばっと自分の髪に両手をあてて確かめると、慌てて回りに目を走らせる。
 幸い、リナのいる席は他の人間からは影になっていた。
 きょろきょろと視線を巡らせると・・・ゼロスのはずした黒髪のかつらをがしっと
掴み、再びかぶった。

(これは・・・・・・・・・・どういうことなんでしょうねぇ・・・・・)
 その様子をリナにバレないようにしっかり見ていたゼロスは考える。
 何故、あんなに見事な髪なのにかつらなどで隠すのか?
 

「・・・・・・リナさん」
 ゼロスは思い切って声をかけてみた。
 案の定、リナは飛び上がるほどに驚いた。
「ゼ、ゼロス!!あ、あんたいつからそこに・・・・・・・っ?!」
「たった今ですけど?」
 取りあえずそう言っておく。
 そのゼロスの言葉にリナは面白いほど安心した表情を浮かべた。
(これは・・・・使えますね)
 ゼロスの笑みが深くなる。
 まさに本領発揮。
「何をそんなに驚かれてるんです?」
「べ、別に、何でもないっ!あんたが急に現れるから少し驚いただけだ」
 くすくすくす・・・。
「な、何がおかしいんだよっ!!」
「いえ・・・・リナさん・・・綺麗な髪ですね」
「・・・・・・・は?」
「触らせていただいてもいいですか?」
「な・・・・・・・い、嫌に決まってる・・・・・・だろっ!!」
「どうしてですか?」
「ど、どうして、て・・・・っい、嫌だから、嫌なんだ・・・・っ!」
 リナはゼロスから守るように自分の髪を両手で押さえた。
「もしかして・・・・・かつら、何てことないですよねぇ?」
 リナの顔がぎくり、と固まる。
(くっくっく・・・・リナさん・・・・・ちょっと素直すぎますよ・・・・)
 内心おかしさを隠しきれないゼロスだがそれを顔には出さない。
「そ、・・・な、・・・何で・・・・あた・・・じゃない・・・俺がかつらなんてかぶらないといけ
ないんだよっ!!」
「でしたら、触らせていただいても良いですよね?」
「ぐっ・・・・・・」
 リナ、絶対絶命のピンチ。
 もしここでゼロスに触らせなければ、ゼロスには「かつら」であると思われることは
確実である。・・・・・・・いくら本当でもそれは回避しなければならない。
(・・・・・どうしよう・・・どうしたらいいの・・・・)
 迷うリナにゼロスは一つの提案をした。
「リナさん、こういうのはどうでしょう?髪を触らせて下さるか、それとも僕と組んで
ゼミのレポートを仕上げるか・・・・どちらかを選ぶというのは?」
「・・・・・・・・・・・・卑怯」
「そうですか?」
 すっとぼけるゼロスをリナは苦々しげに睨み付ける。
「・・・・・・・・・・・わかった、ゼロスと一緒にレポート仕上げる。これでいいだろ?」
「はい。リナさん一緒に頑張りましょうね
 にこやかに差し出された手をリナはぱしっと振り払う。
「一緒にするとは言ったけど、馴れ合うつもりはない」
「おやおや・・・・」
 だがそんなリナの様子にも精一杯の強がりだと見抜いているゼロスには何とも
ない。・・・・どころかますますその興をのせるだけだった。
(リナさんといると・・・・本当に退屈しませんね。どこまでこの方は楽しませて下さる
んでしょう・・・・・それに色々と秘密もあるようですし・・・)
「何?」
 その不穏なゼロスの思いを見抜いたのでもないだろうがリナがくいっと眉をあげて
睨みつけてくる。
「いえ、何でもありませんよ」

(何か・・・・凄腕の詐欺師にひっかかった気分・・・・)
 リナの感想は当たらずも遠からずといったところだった。




 つづく・・・(2へ)
 



★中書き★
 すみませんっっ!!リクエストなんですけど・・・・続きますっ!!!
 予想外に長くなってしまって・・・・(T_T)
 どんどんリクエストと遠くなっているような気がするんですが・・・男装の
 リナちゃんなんですけど・・・・読んでるかぎり・・・普通ですね・・・(T_T)
 次で何とか・・・・終らせるように・・・・たぶん・・・・頑張りますので今回は
 ここで終らせて下さいませっっ!!
 では、続きにて・・・・・・失礼しますっ!!




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