気が狂うほどに
お前が欲しい



孫悟空



俺はお前に餓えている
























『孫悟空』
  『孫悟空』
    『孫悟空』
      『孫悟空』





 時には甘く
 時には悲しく
 時には切なく
 時には激しく


 自分の名前が脳裏に響く。
 ”誰か”が呼んでいる。

 

 ”三蔵”では無い、”誰か”の声。

 あまりに激しく触れる感情に胸が掻き毟られる。


「誰、だよ・・・・オレを、呼ぶな・・・・・」
 自分を呼ぶのは一人だけでいい。
 自分が呼ぶのも一人だけでいい。

 それなのに。
 その声よりも強く己に響く”声”。



『孫悟空』


 声が悟空の体に纏いつく。
 心を侵し、脳を侵し、体中を侵していく。
































「孫悟空」
 初めてまみえた自分と同じ金リ眼を持つ相手が名を呼んだ。
 
 ああ・・・・・これは”あの声”。
 オレを狂おしいほどに求めていた激情の声。

 視線が悟空を絡め取る。


「・・・・ようやくお前に会えた」
 相手は笑う。
 でも悟空は・・・・・・・・。



「・・・・だよ・・・・・・お前、誰だよっ!!お前なんか要らないのにっ!!お前の声なんか
 聞きたくないのにっ・・・・・・どうして呼ぶんだよっ!!」

 相手は自分のことを知っているのに、自分は相手のことを何一つ知らない。
 それが悟空は例えようもなく悔しかった。


「・・・・・・声が?」
 だが、相手は不審な表情を浮かべるだけ。
「とぼけんなよっ!!オレのこと呼んでたくせにっ!!!」
 オレを苦しめたくせにっ!!


「俺の声が・・・・聞こえたのか?」
「・・・・・そうだよっ!!」
 信じられないと目を見開いた相手は悟空の言葉に破顔した。

「そうか・・・聞こえていたのか・・・。それでお前は気にしてくれていたのか?孫悟空」
「気になるに決まってんだろっ!!すっげー・・・・・」
 ”オレが欲しい”て聞こえたから。


「知りたいか?」
「・・・何が?」
「俺の名前を知りたいのだろう?」
「・・・・っ!!」


「『焔』だ。孫悟空」


 その名を聞いた途端、悟空の中で何かがすとーんと落ちていった。

 『焔』
 それがオレを呼んでいた声の名。


「・・・・・・・・」
「呼んではくれないのか?」
「・・・・・・・・」
「孫悟空」



「・・・ぶ・・・・んか・・・・・・・誰がお前の名前なんか呼ぶもんかっ!!」
 それは悟空の精一杯の強がり。
 何故なら、悟空はすでに呼んでしまっていたから。

 心の中で。
 『焔』という、その名を。
 呼んではならない、その名を。

 相手もそのことがわかっているのか。
 依然、顔に浮かぶのは”笑顔”。

 




「待っている」
 焔の言葉に悟空は俯けていた顔をはっとあげた。
「いつまでも待っているさ・・・・お前がオレの名を呼ぶのをな。それまで俺は・・・・」









「お前の名を呼びつづけよう、なぁ。孫悟空」





 










 囚われている。













† あとがき †
70000ヒットを踏んでいただいた神楽望さまリクエスト小説。
焔空で・・・ということだったんですが・・・いかがでしょう?
なんだか悟空が「嫌い嫌いも好きのうち」みたいになってますが(笑)
少しでも(爪の垢ほどでも)楽しんでいただけると幸いです。
では、ありがとうございました!








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