空は青く青く澄み渡り、 太陽は金色の光を惜しみなく大地に降り注ぐ。 気温は30度を越しただろうか・・・・? ぼんやりとする頭を抱えて日吉は思う。 時折ぱしゃぱしゃと聞こえる水音が憎らしい。 ・・・手を伸ばせばすぐ傍に小川が流れる。 けれど。 今の日吉はその水に触れることを許されていない。 (ああ・・・何ゆえに殿様は『てめーは入るんじゃねーっ!』などというお言葉をくれたのか) 今すぐ”馬鹿ヤローーっ!!やってられっか!!”と逃げ出したいところだが、そんなこと すれば後が怖い・・・本当に。 そして、日吉の腕には殿様の衣服がある。 (ああ・・・何ゆえに皆のように木にかけてくださらないのか・・・・・・暑い。投げ出して しまいたいほど・・・暑い) 「よしっ!そろそろ上がるぞ!!」 さんざん遊び倒した信長は上機嫌で凱旋を宣言している。 (ああ・・・水さん・・・・しばしの別れだ・・・しくしく) 日吉は信長に衣服を差出しながら涙をのんだ。 「おい、お前ら先に帰っててくれ」 てっきり一緒に帰るものと思っていた信長の言葉に一益は不思議そうな顔をする。 「は・・ですが・・・」 「いいから、いいから」 「わかりました」 どんな理由があるのか知らないが言い出したら聞かない信長である。 一益は心の中でため息をつきながら、しぶしぶ了承した。 「おいっ!てめーは帰らなくてもいいんだよ、サル!」 「は?」 一益たちに続いてその場を後にしようとした日吉は意外な信長の言葉に目を丸くする。 そして、振り向き見上げた信長の邪悪な笑い顔に泣きそうになった。 「おらっ!!さっさと入ってこーいっ!!」 問答無用で信長に裸に剥かれた日吉は小川に向かって蹴り飛ばされた。 「はうぁぁぁ〜〜っっ!!???」 乱暴な扱いに日吉が叫ぶ。 ざっぱ〜んっ! 勢いよく飛沫があがった。 「ぷはっ!!と・・殿〜〜っ!!何するんですかぁっっっ!!」 顔から小川に突っ込んだ日吉はもがきつつ水面に顔を出し、こんな目にあわせた張本人で ある信長に抗議した。 「ふふん、どうだ気持ちがいいだろう?」 「・・・・確かに気持ちはいいですけど・・って・・・・・どうせなら先ほど入れてくれれば・・・」 「うるさいっ!!・・・誰がそんなもったいないことをするか」 「・・・・・・・。・・・は?」 意味不明な信長の言葉に日吉は首を傾げた。 もったいない?何が? 水・・・・なわけは無いだろう、いくらでもあるのだから。 では・・・・・??? 「サルの裸なんぞみすぼらしくて人前になどさらせぬわ!」 「みすぼらしくってすみませんねっ!!何で殿にそんなこと言われなくちゃいけないんですか!」 どこまでも鈍い日吉には信長の本音・・・『お前の裸を他人に見せるのは嫌だ』という複雑な ”男心”はわからない。 「うるさいっ!!鈍いサルにはこうしてやるっ!」 信長は着物を身に纏ったままばしゃばしゃと水をかきわけ、日吉の傍まで来ると・・・ 『ぐげぼごごごごぉくぅおうがごっっっ!!!!』 日吉を水の中へ沈めた。 (死ぬっっ!!!俺はここで死ぬぅぅぅぅっっっ!!!) 絶体絶命のピーンチ!! (こんなところで溺れ死ぬなんて嫌だぁぁぁぁっっっ!!!!) 日吉は無我夢中で己を沈める張本人の信長の手を掴んだ。 (・・・・んぐっ!!???) その途端、日吉は更に水中に沈む。 酸欠で朦朧とする中、日吉は目の前ににやりと笑う信長を見た。 近づく顔。 突然送り込まれた酸素に本能ですがりつく。 「ん・・っ!!は・・ぁっ」 水から引き上げられた日吉は全身から水をしたたらせながら信長と・・・・・・・・・・・ ディープキスをかましていた。 「ふわふへうへはうふほうへふっっ!!!!(何してんですかっっ殿っ!!!!)」 日吉は信長から必死に逃れようとするがかっちり固められた腕はびくともしない。 それでも何とかなる両足をじたばた動かしていると唐突に解放され、ばしゃんっと水の 中に再び落ちた。 「てめーはムードもへったくれもねぇのかっっ!!!」 どげしっっと蹴りが落ちてくる。 痛い。 かなり痛い、死ぬほど痛い。 「知りませんよっ!!そんなことっ!!!殿が勝手に・・・・きっ・・・・あ、・・いや・・・・・・」 信長とキスしていた・・・ということを自覚した日吉の頬が火照る。 「・・・・『き』・・・・なんだよ?」 信長がにやりと日吉に迫る。 「な・・ななななななな・・・・何でもないですぅぅぅつっっっ!!!!」 小川に腰のあたりまで沈めながら日吉はじりじりと信長から離れていく。 そして信長も獲物を追い詰める肉食獣のように、ゆっくりと犬歯をのぞかせ近づいていく。 万事休す。 「ちょっとターイムッ!」 救いの神ならぬ五右衛門登場である。 「・・他人の濡れ場をのぞくとは良い趣味をしている」 「いやぁ・・・それほどでも・・・」 ぽりぽりと笑う五右衛門に信長がキレた。 「ぶち殺すっ!!!!」 信長は腰にさしていた刀を抜き放つと五右衛門に斬りかかった。 「うぉっと・・・危ねぇぜ♪」 「死ねっ!!」 「嫌だね〜」 あれよあれよという間に二人は騒音を立てながら森の中へと姿を消した。 ピ〜〜〜ヒョロロロロロォォォ〜〜〜・・・・・ 青い空に鳶の鳴き声が木霊する。 取り残された日吉は一人、呆然と小川に佇むのだった。 |
■ あとがき ■
ジパングを初めて呼んで4日目。
すでに一本書き終えてしまった自分て・・・・(苦笑)
日吉(藤吉)もそうですが、ジパングは今まで御華門が抱いていた
『戦国時代』の武将のイメージを悉く打ち砕いてくれました(笑)
史実とは微妙に違う諸々がやけに御華門の心を直撃v(何だそれは/笑)
それにしても御華門が好きなるキャラは何故いつも『サル』なんだろう・・・・(笑)