愛しています ただ、それだけを伝えたくて俺は今、筆をとっています。 ああ・・・書き出しはどうしよう・・・。 あまり幸福ではない子供時代を送った俺がこんなにも人を愛することが出来るなんて 信じられなくて・・・ きちんと寺子屋で読み書きも手紙の記し方も習ったはずなのに。 何も浮かんでこない。 拝啓。 なんて、はじまる恋文なんて固すぎて、まるで仕事の文書。 それなら、前略? 何を略すというのだろうか・・・・。 全く意味不明。 そんな形式ばった言葉を並べるくらいなら・・・いっそ名前だけのほうがいい。 でも。 名前は宛先に書くのだし・・・自分が直接その人に手渡すのだからわざわざ 書く必要もない。 ・・・・困った。 そんな思考に、俺は筆に墨をつけては紙の前で固まり・・・乾いてしまった筆に 再び墨を染み込ませる。 そんな作業の繰り返し。 時折、その筆からぽてりと墨が落ち、丸い黒い半点を作ってしまう。 書き直し。 まだ何も書いてはいないというのに・・・・。 紙が屑篭に溜まっていく。 ああ・・・・・・・もったいない。 て、そんなこと考えてる場合じゃないし。 出会いは本当に衝撃的で、決していい印象ばかりでは無かった。 でも、気づけば隣で笑っているあなたがいて。 俺も笑っていた。 いつ気づいたのだろうか。 この自分の気持ちに。 これがただの感傷じゃなくて、本当にあなたのことを・・・・・・・・・・・・・・・・。 「愛している」のだと。 ふと、空を見上げれば青い空が広がっている。 白いふんわりとした雲が漂い、知らず疲れていた目をばしばしさせた。 こんなに穏やかに空を見上げることができるのもあなたのおかげ。 暗い俺の心に光を灯してくれたあなたのおかげ。 ああ・・・・・・・・・「愛しています」。 心の中で思うのは簡単なのに、いざ文章にしようと思うと・・書くはしから真実が ぽろぽろと零れ落ちていくようで。 嘘くさくていけない。 何か・・・何か無いだろうか。 あなたに俺の気持ちを伝える一番の言葉が。 ぽてり。 ・・・・・・あ、また墨を落としてしまった。 ぐしゃ。 ぽいっ。 そしてまた考える。 俺は詩人じゃないし、そういう教養は皆無だ。 そんなことわかってる。 だけど。 伝えたいんだ、何よりもあなただけに。 ただ、傍に在る・・・この幸せ。 うん。 やっぱり一つしかない。 ストレートで何の面白みも無い言葉だけれど。 これをあなたに伝えます。 俺から心よりあなたに。 愛しています ただ、それだけを文字にして。 |
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** あとがき **
さて、電脳世界を漫遊される皆様なら読み方は
おわかりですね?(笑)
御華門への問い合わせは不可。
相手はご自由に想像くださいませv